いきなりの登場
冬芽⁈
オレは、冬芽をみてびっくりした。
あの人だかりは、冬芽を取り囲んでいたんだ…。
てか冬芽、うちの学校の制服着てるし…髪も整えて、なんなら薄く化粧もしてて…
めっちゃかわいくね⁉︎
「おう、冬芽〜‼︎」
オレは思わず冬芽を抱きしめそうになってしまった。
しかし、冬芽ファンからの痛い視線を感じたので、とりあえずおにいさんぶって、校舎を案内することにした。
のですが、なぜか隣に鷹見さん。
「あの…鷹見さん?」
「なんですか?」
こっちが、なんですか?状態だったが…たぶん、オレたちといく方向が同じなのだろう。
「いや……あ、せっかくだし紹介するね。オレの隣にいるのは幼馴染の冬芽です。」
と、とりあえず紹介した。
ペコリとお辞儀する冬芽に鷹見さんは、
「あぁ、幼馴染ね。妹ちゃんかと思ったわ〜。よろしくね。わたしは、氷河くんのよき同士です♡」
と、冬芽に言い笑顔で去っていった。
同士?
ライバルの間違いじゃ?
って思ったけど、めんどくさいからそのまま訂正しなかった。
てか、今までにないくらいの笑顔だったな…。
なんか企んでるのか?
オレのことくん呼びとかしてたし…
いつもは、あなたとか言ってくるのに…
…
てかさ、笑顔…はじめてみたかもしれない。
よっぽど冬芽が気に入ったんか?
それとも…ただ機嫌が良かっただけだろうか?
⁇
「あの人…前にクラス写真で見せてもらった、わたしが美人って言った人だよね?火の属性って理玖斗が言ってた…」
「あー、うん。なんかすごい美人だけど…なんか圧がすごいだろ?」
「たしかに」
「てかさー冬芽さぁ、おんなじ高校来るなら言ってよね。オレずっと心配してたんだよ?」
「ふふ、ごめんなさい」
「いや、いいけどさ…それよりその制服も髪型も似合ってるね」
オレの言葉に冬芽は、嬉しそうに一周まわって微笑んだ。
うわ、これを他の生徒がみたら気絶するだろ…
だって、オレも一撃で脳死状態だぞ?
花属性の破壊力半端ねーって‼︎
オレは、花属性の冬芽を学校案内して一年生の教室へと送った。
入学式のあとは、軽い片付けをして下校だ。
花属性の冬芽は、たぶんオレなしでも大人気間違いなしだろうから、教室には迎えに行かずに帰宅することにした。
で…階段を降りていたら後ろから鷹見さんがやってきて、オレにちょっといいかしら?と、珍しく睨みなしで話しかけてきたじゃないか。
今朝からなんか…鷹見さんの様子がおかしい。
いつもの刺々しさは、どこへやら?
不思議に思いつつも、鷹見さんの言う通りについていくことにした。
どこに向かっているのだろう?
黙ってついていくと…購買の前で立ち止まる鷹見さん。
…お腹空いたのかな?
今日は、お昼がないから購買やってないけど…
「あの、鷹見さん?今日は、購買やってないけど?」
「知ってるわよ。ここなら誰もいないからと思って」
「ああ、そういうことか。」
「あのね、わたし……実は、はじめてだったの。」
「え?なにが?」
「だ、だから、あなたがはじめてだったの。それにわたし達って同じ気持ちよね?」
…
ん?
「えと…ん?」
「だからぁ…その…」
ハックション‼︎
ビクッ
オレと鷹見さんは、誰かのくしゃみに驚いて、くしゃみのした方に目を向けた。
「え?冬芽?」
…
気まずそうに冬芽は、あははと愛想笑いした。
「あの…ごめんなさい…。盗み聞きするつもりはなくて…。同級生の男の子が一緒に帰ろうってしつこくて…。だからここに隠れてたら大丈夫かなって……そしたら、二人が来て……」
…
「あなたは、氷河くんの幼馴染ちゃんよね?モテるって大変よね。わたし、いい提案があるわ。なんなら氷河くんが幼馴染ちゃんの彼氏役をしたらどうかしら?」
「「えっ?」」
オレと冬芽は、顔を見合わせた。
「そっちの方がいいじゃない。わたし達の関係も騒がれなくて済むし。それじゃ、また明日」
と、鷹見さんは手をフリフリして髪をなびかせながら、帰ってしまった。
…
?
鷹見さんがさっきからなにをおっしゃっているのか、さっぱりわからない…。
てかさ、購買にきた意味…
まぁ、鷹見さんが帰ってしまったらどうしようもない。
意味はわからないけど、でも冬芽はどうにかしないとだ。
「冬芽、オレが彼氏役とかイヤだよね…?」
オレの質問に冬芽は、一瞬考えて
「理玖斗は?イヤじゃないの?むしろ、さっきの先輩が言ったみたいに、そっちの方がいいの?」
と、かわいく覗き込む。
「オレは…」
「迷惑なら…わたしは、全然大丈夫…。自分でなんとかするし…」
…
「オレは、冬芽を守りたい。」
「え、じゃあ……甘えちゃっていいのかな…?」
「うん、いいよ。彼氏役よろしくお願いします」
「こ、こちらこそ」
と、改めてよろしくお願いしますを交わした。
幼馴染とのニセ交際だけど、なんだか少し照れくさかった。
続く。