鷹見先輩と観覧車
鷹見先輩の発言に戸惑うわたしをよそに、鷹見先輩がわたしに近寄ってきた。
「いいよね?」
と。
…
なぜわたし?てか…一回目は、っておっしゃいましたよね?
何回のるおつもりでしょうか?
そんなことを考えながらもわたしは、
「はぁ。いいです…けど」
と観覧車を見上げながらこたえた。
…まさか、またあなたのこと一日一緒にいて、やっぱりきらいって確信したとか言われませんよね⁇
…嫌われたなら、それは仕方ないか。
てか、すでに嫌われてるか。
そうこうしている間にも、順番がまわってきた。
「じゃあ、乗りましょうか」
「はい」
言われるがまま、観覧車に乗り込んだんだけど…
ふと、観覧車の窓から外をみると…理玖斗と伊吹先輩も、楽しそうに話しながら観覧車に乗っていた。
…あ、二人も乗るんだ?
まぁ、そうだよね。
せっかくフリーパスあるもんね。
ガコガコとうなりながら、少しずつ上がる観覧車。
え、待って…
こわ…
これって…風で落ちたりしないよね?
地震きたら…大丈夫なの?
一人脳内パニックに陥った。
そしたら鷹見先輩がいきなり、
「ふふ、高いところ苦手なんだ?」
って、からかうようにニヤニヤしてきた。
「べ、べつに…平気です」
「大丈夫だよ?ちゃんと点検してるし、頑丈にできてると思うよ?」
「…ですね」
平気なフリをしながら、理玖斗たちをみると、二人が楽しそうにこちらに手を振っていた。
理玖斗って、打ち解けるのとか早いよなー。そもそも伊吹先輩も懐っこいもんな。
そんなことを考えていたら、鷹見先輩がいきなり、
「ごめんね」
って謝ってきた。
「えっ?なんですか?やっぱり観覧車って安全じゃないってことですか⁉︎」
「違うよ、落ち着いて。わたしが謝ったのは、今までのこと。色々嫌がらせしてごめんなさい。それにあなた、氷河くんのこと好きなのよね?わたし、あなたにライバルを奪われるって思ったら、氷河くんを好きと勘違いしてさ…。成績上げるために必死にたたかう人って今までいなくてね…そんな人、初めてだったからさ。でも、今度は蒼一と仲良さげになるあなたたちをみたら…なんか、なんかね…胸騒ぎとまらないし、蒼一がもうあなたに夢中になってしまうんじゃないかって思ったの。ほら、あなたってかわいいし、優しくてさ、わたしにないものばかりあるでしょ。だから…」
…
「先輩は、美人だしすぐにごめんなさいが言えるんだから素敵な人じゃないですか。わたしこそ、前にきらいとか言ってしまってごめんなさい。今は…まぁ…きらいじゃないですよ。たぶん」
って言ったあと、ニヤっと笑ってみせた。
「たぶんってなに〜」
と、先輩も笑って二人で笑い合っていたら、あっという間に頂上を過ぎていた。
話に夢中で全然怖くなかった。
あと数メートルで到着する観覧車。
理玖斗たちは、相変わらず楽しそうに笑っていた。
「次は蒼一と観覧車乗るから、あなたは氷河くんにしがみついていたら、急進展するかもよ?」
と、いたずらに笑う先輩。
「わたしは…ただの幼馴染だし。」
「そうかなぁ?わたしからみたら二人は、いい感じに見えるけどな。よし、ついたわよ。わたしトイレ行ってくるから、氷河くんと観覧車五回くらい乗っててもいいよん♡」
って、またいたずら顔をして伊吹先輩と仲良く手を繋いで行ってしまった二人。
「冬芽大丈夫だった?怖いのも苦手だけど、高いのも苦手だよな?」
「あー…、うん。でも鷹見先輩と話してたら全然平気だった!もう一回理玖斗とも乗りたい。いい?」
理玖斗の表情を恐る恐るみると、理玖斗は笑顔で
「もちろん」
とかえしてくれた。
ホッとして、理玖斗とまた観覧車の列に並んだ。
さっきは、平気だったけど…でもやっぱり少し怖いなって、不安がっていたら、理玖斗がわたしを覗き込んで、
「ほんとは怖い?無理しなくていいよ?」
と、理玖斗が心配してくれた。
理玖斗は、やっぱり優しいなぁ。
そういうところが好きって改めて思っていたら、いきなり理玖斗がわたしの手を握ってきた。
「えっ⁉︎り、理玖斗?」
「安心するおまじない。てか、繋ぎたい…だけです」
と、恥ずかしそうに理玖斗がするから思わず笑ってしまった。
ふふ、おまじないか。
理玖斗の温もりを感じながら、観覧車に乗り込んだ。
で…
「な、なんで隣に座るのよ⁉︎理玖斗は、そっちに座らなきゃバランス崩れるっ!」
と、慌てふためいていると理玖斗が大丈夫だよって笑ってわたしをなだめた。
そして、いきなり真顔で
「隣にいないと手繋げないじゃん」
って。
え…
理玖斗?
それって…
続く。




