砂上の楼閣
雲の端に手をかけて、ピラミッドの三段目に飛び移る。重心を後ろに傾けすぎたせいでバランスを崩して転倒しかけた。そういえば、ピラミッドの上下が逆さまなのは、棺の周りのよどんだ空気の仕業なのだろうか。修理が必須だ。とりあえずの応急処置を施さなくては。用意すべきは、かすかに吹き付ける生温かい潮風。頂上に雀の尾羽。土台の隅に銀色の釘。それも90度近く曲がったものを。とびっきりの釘がなかったら自前で用意するのだ。火事場に相応しいのは、頑丈なヘルメットと薄い紙の切れ端。溶鉱炉の熱が180km先のサンゴ礁を黒く焦がす前に仕上げなくてはならない。カンカンカン。金槌を右手に、火炎放射器を左手に。作り終わったらしばしの休息を。暇には、麦茶とヒヤシンス。椅子に腰を下ろしつつ、窓からスフィンクスと海を見る。沸き立ったやかんから甲高い音が鳴り響く。座っていては草が半分に割れないではないか。よもぎ餅もどうやらまっすぐ進む方法を忘れてしまったみたいだ。ぺろりと平らげると、作業に戻ろう。完成したら釘は砂漠に埋めてしまおう。後は杖を突いたおじいさんがなんとかしてくれる。たとえぐるぐる回ったとしてもオアシスは行方知らずの蜃気楼。後に残るは荒れた波、揺らめく竜巻、砂の大地。