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プロローグ 『静かにキャンプがしたいだけ』

若くして伝説の傭兵と語り継がれる山田剛24歳


基本的に一人が好きで社会不適合者と自負している剛は、

高校を卒業してから大学にも行かず、一般企業への就職もする気はなく

自然が大好きで、サバイバル技術を身につけるために傭兵団に入ったのだった。


やる気はないがなんでもそつなくこなしてしまう剛は傭兵としてすぐに頭角を表し、戦地に放り込めば1人で1軍隊を潰すほどの実力に育ったのだが、大好きな自然の中にいても、殺伐とした任務や、命を狙われ続ける日々に嫌気がさした剛は、傭兵をやめて余生を大好きなキャンプをしながらほのぼの過ごすと心に決める。


退職届を出して最後の任務中に死に直面したかと思った矢先、目が覚めるとなんとそこは異世界で・・

『異世界だろうが静かにキャンプを楽しむ』というたった1つの誓いを胸に異世界を冒険していく

 

「いつも自分を偽っていたこの戦闘服や顔のペイントも明日からはしなくていいんだ」


 今日は傭兵団を辞める前の最後の任務だ。戦闘服を着て武器の準備を整え、仲間達と任務地の山奥へと向かった。今思えばサバイバルスキルを身に付けたくて入団しただけなのに、生き残ることに必死で気を緩めたことなんてなかった。普段の自分は温厚な性格だと思っているが、この服や顔のペイントをしている時はなんだか性格も変わってしまう気がする。だけどこの殺伐とした生活ももうすぐ終わり。


 仲間A「この先に敵の本拠地があるはずだ。」


 仲間B「フォーメーションは作戦通りだ。トーリ頼んだぞ。」


 トーリ「任せてください。最後の任務、しっかり遂行しますよ」


 仲間A「あの洞窟の中だな。トーリから合図があるまで俺らはここで待機だ」


 トーリ「了解」


 洞窟の前には敵の姿どころか気配すらない。さっさと潜入して片付けよう。

 そうそう。トーリというのは俺のコードネームだ。顔にペイントし戦闘服を着た時の俺は山田剛ではなくなる。フィンランド語で「炎」を意味する「トゥリ」という単語を少し変えて「トーリ」というコードネームで活動している。なんで「炎」を意味する名前にしかというと、俺はキャンプや焚き火が大好きだから。そしてフィンランド語なのは、キャンプといえば北欧だしいつか行ってみたい憧れの地だからだ。


 そういえばこないだのキャンプは最悪だった・・すぐ近くのキャンパーたちが夜中までどんちゃん騒ぎしていたが、注意出来なかったな。俺は傭兵として散々人を殺してきたし、もう罪悪感も生まれなくなってしまったけど、それはあくまでこのペイントをして自分を偽っている時だけだ。普段は内気で誰とも関わりたくない。これからは人がいないような場所にキャンプに行こうっと・・・


 洞窟の奥まで進むが相変わらず敵の気配がない。既に撤退したのか?いや・・そもそもここに人がいた痕跡もないんだよな。嘘の情報かもしれない。かと言って洞窟の周りにも怪しい雰囲気はなかったんだよな。


 トーリ)「洞窟の奥まで侵入したが敵の姿はなし。罠かもしれません。周囲に警戒してください。」


 その瞬間、洞窟内に爆音が鳴り響いた。連鎖的に爆発が起きて大きな地響きと共に天井が崩れ落ちてきて、逃げ場のない俺はあっという間に石に挟まれて身動きが取れなくなった。


 仲間A「ザザッ。トーリ、無事か?応答しろ。」


 先輩達が俺の心配をしてくれている。だけど身動きが取れず応答ができない。


 仲間B「応答がないな」


 仲間C「ということは・・任務完了ですね」


 任務完了・・?


 仲間B「死体を確認するまで気を抜くな」


 仲間A「おい、まだ繋がってるぞ」


 仲間C「さすがのトーリもこれは死にましたよー。どこに引き抜かれたのか知らないけど辞めるなんて言い出すから・・」


「プツッ・・」


 なるほど。俺は仲間にはめられたらしい。冷静に考えたら俺みたいに強くて使い勝手が良い傭兵を簡単に辞めさせてくれる訳ないか。段々と身体の感覚も無くなってきたし、流石にこれは死んだな。


「ボォォン!」


 二度目の爆発音と共に、俺の頭上に大きな石が降ってくる。

 ちくしょー。ひっそり静かにキャンプすると誓ったばかりなのに。欲を言えば・・極度な人見知りの俺だけど、騒がない程度のグループキャンプっていうのを少しはやってみたかったなぁ。


「ドンッ・・・」


 あー死んだ。でもなんだこれ天国?いや俺は地獄行きだよな。

 眩しいくらい真っ白な空間に円卓があり、そこで数人が話をしている。


 謎の声達

「初期スキルはどんなものを与える?」

「こやつ・・この前の野宿の時に火起こしにものすごい時間をかけておったぞ」

「じゃあ炎系の最強スキルをあげようよ」

「いや魔法系のスキルを与えたところで何の面白みもない」

「不便や手間を楽しんでいるようだった。だから何も与えないのはどうだ」

「それはすぐ死ぬでしょ」

「ではこいつ専用のオリジナルスキルを作ってやろう」

「どんな?」

「その名も不便益(unhandiness profit)」

「不便を経験することで通常ではあり得ない莫大な益を得られる」

「なにそれーよくわかんない」

「要するに、苦労すればするほど報われるってことだ」


「・・・」


 俺は夢でも見ているのか。ゆっくりと瞼が開くと、何やら周囲の様子がおかしい。

 見知らぬ草木が生い茂り、空には巨大な生物が飛び回り、遠くでは火山が噴火している。


「ん…俺死んだよね?」


 周囲の状況に圧倒され、理解するのに少し時間がかかったが、これは現実だ。

 状況を分析しながら、心の中で緊張と興奮が交錯する。


「これって…」


 俺は立ち上がり、周囲を見渡す。


「これまさか異世界転生?いや転移!!」


 最近は流行りの漫画を良く読んでいるせいかあまり驚いたりはしなかったが、

 こんな状況でも俺の心配はたった1つだ。


「異世界って、静かにキャンプできるのかな・・」


 俺の異世界での新たなキャンプ生活が幕を開けた。

伝説の傭兵だった主人公が異世界に転移して、自由気ままにキャンプを楽しむ物語。

邪魔をするものはたとえドラゴンだろうと魔王だろうと黙らせる。異世界×キャンプ×バトルの物語をご覧ください。

転生時に授かったスキルの秘密に気がつくのはもう少し先のお話・・

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