6…熱風の正体
「ハア、ハア、ハア…………ッ!?」
少年は息を切らしながら熱風のする方へと走っていった。そこで少年はにわかには信じがたい光景を目にした。つい先程まで自分が居た屋敷が、燃えていたのだ。
もはや屋敷は全焼しているに等しく、人の気配がない。
そうか、母親は死んだのか。兄は死んだのか。
そう考えた途端、少年の目には溢れる涙が込み出してきた。
「………なんで」
「なんで僕は屋敷を飛び出したりしてしまったんだろう」
少年は後悔した。
もっと自覚すべきだった。この屋敷は自分が初めて入った家なのだ。我が家なのだ。どうしてこうも簡単に飛び出してしまったのだろうか。
どれだけ虐待されても死ぬわけではない。それに、少年には耐えれる事でもあった。耐えればよかった。
後悔の感情のあとに出てきた感情は憎悪だった。屋敷を壊した存在への憎悪。
殺してやる。
絶対に。
………あれか。
少年の眼の前には紅い竜がいた。ワイバーンと思われる。ワイバーンは自在に宙を飛びながら屋敷に向かって火を吐き続けていた。
少年の目は真っ赤に染まった。そして近くにあった屋敷の柱の一部であったと考えられる木の棒を手に取り、ワイバーン向けて駆け出したのだった。