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42…アミラル

 オストは大樹の周りをウロウロしていた。特に理由はない。ただ、暇なだけ。確かに発展している。発展しているのだが、商店に売られているものは全て帝都の商店で昔売られていた物。アルベルトは里の人と何故か打ち解けられているが、オストには出来ない。何故アルベルトは里の人と打ち解けられているのだろうか。だって、『竜食族』は肉体の根本的な部分から、というか竜の毒をモノともせずに竜を食せる時点でおかしいのだ。アルベルトにはそこらへん、貴族として全てに平等にできる様に鍛えているのだろうか。

 自分にそんな事はできない、と諦めたオストは再び歩き始めた。

 歩き始めていたのだ。

 だというのに、俗に言うRPGゲームの定番モード。遭遇戦が勃発したのだ。まず、突如オスト目掛けて鎌が投げられ、オストがソレを回避。振り返るとそこにアミラルがいた、という展開だ。


(いきなり!?)


 オストの様な下っ端竜殺者には当然『三千世界』についての情報が共有されているわけがなく、意味もなく鎌を投げてくる狂気じみた少女がいると知らないオストは非常に混乱した。

 対照に、アミラルの思惑はオストとは違ったものだ。


(私のこの鎌の投擲を交わすの……。では、これは)


 次はオストに急接近し、下から鎌を振り上げた。その構えはモグルを一瞬にして葬ったソレであり、モグルより位が下に見えるオストには防ぎ様のないものだ、と踏んだアミラルにとってのトドメの一振りであった。だが、オストはそれを目を見開きながらだが交わした。


(竜殺者ギルドの隊長を葬るほどの私の鎌を一度どころか二度も交わした。もしかして……)


 この少年はモグルよりも潜在能力が高いのかもしれない、とアミラルは微かに思った。だがソレだけ。自分より強い訳ではない。とにかく、シグマの命令は竜殺者二人を殺すこと。この男はその一人なのだ。アミラルは一度命じられた事は、依頼主からの取り消し依頼がなければ必ずやり遂げる。だからオストを殺す。


「待ってくれ。君はどうして僕を殺そうとしているんだ?」


 オストが訊ねた。アミラルに答える義理はない。ただ、どうせすぐ殺す人間にわざわざ隠す必要ないと思ったのか、


「……そういう命令だから。特に恨みはないけれど命令だから。死んで」

「『特に』?」

「……ただの言い間違い。気にしなくていい」

「あ、そうなの……」


 オストはなにか言いたげだったが、アミラルはすぐさま、再びオストの喉笛を掻き切ろうと接近。体勢を整えたオストは、今度は交わすのではなく刀で防ぐ。


「【中原逐鹿】!」


 オストは紋章を使用する。それは『武器の性能を格段に上昇させる』紋章。竜との戦いにおいては、元の身体能力差が多すぎるが故にパッとしない紋章だが、対人戦においては基本的な身体能力は近いため、圧倒的な力を発揮する。筈なのだ。

 アミラルには全く効果がない。むしろ軽くいなされている。軽くいなされ、その次は、オストが防御する。しかし、正直今の攻防で二人の技量差は大人と子供ほどの差がある事が発覚し、オストの勝機は薄かった。


「お終いにしよう」


 アミラルはそう言って、鎌を大きく振る。それは綺麗な弧を描く様にオストの首へと接近した。オストはそれを目で追えなかった。気づいた時には、…………。


 オストの目には血液が回らなくなっており、真っ暗になった。

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