表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/47

29…フェルニゲシュの過去

「………話は大体分かりました。ですが、最後に一つだけ宜しいですか?」

「ああ」


 ファフニールは腕を組み、上半身を左右に揺らしながら訊いた。フェルニゲシュは応じる。長髪の男は黙ってその様子を見守る。


「何故、そのような大それた事をしようとするのです? そんな事をするなら1人でやった方が早いのでは」


 ファフニールは鋭い眼でフェルニゲシュを見つめる。フェルニゲシュは机に置いてあるグラスを手に取り、なかに入っていたワインを一口に飲み込んだ。グラスを机に再度置き、椅子に座った。


「……………長くなるぞ」


 フェルニゲシュはあらかじめ忠告した上で、話し始めた。ファフニールと長髪の男は、一言一句聞き逃さぬよう、息一つにも細心の注意を払った。ファフニールは長年のフェルニゲシュとの友好で培ったノウハウを基に。長髪の男はその超次元的な頭脳を生かし、その仕草も踏まえて話を纏めようとした。


 ♦︎♦︎♦︎


「我が配下となれ。黒竜よ」

「…………は?」


 1人の貴族と思われる人間が、生意気にも俺に声を掛けてきた。貴族は不遜にも格下を眺めるような目を己に向けてきた。

 俺は確かに黒竜である。そして並の有象無象ごときなど簡単に凌駕出来るほどの力を持つ。いわば厄災である。そんな俺に向かって、「配下になれ」だと? 腹立たしい。


 貴族の連れは2人。それも執事もどき1人に、護衛の兵士が1人。俺からしてみれば相手にならない。もし今俺の逆鱗に触れたら、そなたら全員死ぬというのに。なんたるメンタル精神。

 しかもあたりは下界とは完全に分離された深い森林。異変が起きたとしても、誰も助けに来て来てくれなければ、気づいてさえくれない。


「どうした。聞こえんだか。ならあえてもう一度言おう。我が配下となれ。黒竜よ」

「…………は?」

「聞こえんだか。それならもう一度言おう。我が…」

「いや、しっかり聞こえているし意味も理解している」

「なんだ、それでも無視するとは貴様、人としてどうかと思うぞ」

「………人ではない」

「比喩表現だ。空気を読め」


 ………なんだこの貴族。話が通じん。


「……話が通じんな」

「そうか。我は竜と会話ができる時点でかなり驚愕なのだがな」


 どうやらこの貴族。かなり竜族を下に見ているようだ。非常に不愉快だ。俺はそんな気持ちを懸命に抑えている間にも貴族の話は続く。


「少し戻すが、さて、何故我が配下となれ。と言ったかだったな」

「ああ」

「その事なんだが、言いすぎた。配下になって欲しい訳ではない。我に協力してほしい」

「協力?」

「その通り。実はな、我の治めているダハミリ城はな、周辺の帝都郊外の城との権力争いを繰り広げている」

「権力争い? 具体的にはどのような」

「帝都へとつながる重要経路をどこにするか争っている。帝国は比較的歴史が浅くてな。まだ路とかそこら辺は細かく困っていない」

「………現実的に最も人が通りそうな場所に路を通せば良いのでは?」

「そういう問題ではない。愚か者め」


 そんな下らぬ事で争う方がよほど愚かだ。普通に空を飛べばよいのでは? その様に言おうとした時、俺は重要な事に気づいた。人は空を飛べないことに。

 これがギャップ差というものか。と俺が妙に感心していたところに、


「それで、今一番の路の最有力候補はバーデリン城経由の路だ。だが、バーデリン城はいかんせん北側の城でな。帝国の都市部が集中している南側とは面していない」

「? 何故そのバーデリン城が最有力なのだ」

「そこが問題なのだ。バーデリン城には一人の強者が居ってな。その者がバーデリン城主に忠誠を誓っており、バーデリン城主の命令で我々に圧力を掛けているのだ。実際に何人かそれで死んだ」


 貴族はあっさり告げた。俺は「そうか」と返した。しかし、次の言葉が衝撃的なだった。


「だから我の下でバーデリン城の強者を正々堂々殺して欲しいのだ」

「ん?」


 何を言っているのだこの貴族は。頭の容量が軽すぎる。「殺せ」。別に良いだろう。殺してやろう。「正々堂々」。理解に苦しむ。


「………どうして俺なのだ。別に卑劣な手で殺してもいいだろう」


 俺は苦々しい声で訊ねた。貴族は、


「確かに、卑劣な手で殺しても良いかもしれない。唯、それでは、ダハミリ城が路となるには弱い」

「どういう事だ」

「何があっても、ダハミリ城に路を通さねば、ならないのだ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ