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24…反撃開始

「な?」


 フェルニゲシュは困惑した様子だった。無理もない。目の前にいるオストは何もしていないというのに、自分の翼が無くなっているからだ。そもそも翼が無くなったことによる痛みを感じない。


 約1秒間の出来事。


 しかし、時が経つことで次第に自分の置かれている状況に脳が追いついてきたフェルニゲシュは今更激痛を感じた。フェルニゲシュは体に爪を当てながら叫び、滅茶苦茶にブレスを繰り返して、辺りを荒野に変えた。

 そのブレスは民にも直撃し、城の民の約3分の1が亡くなった。


 オストも例外ではなく、ブレスを避けきれずに直撃し、体が燃え始めた。


「………ア、ア」


 オストの体は燃え始め、段々と頭上に向かって火が進み始めた。


 元々人の体は60%ほどが水分である。故に、完全に肉体が燃焼するまで多くの時間を要する。まるでじっくりとオーブントースターで焼かれていく感覚。オストは今まで何度か焼かれた時の訓練と称されてラテーノに何度か手を焼かれたことがあったが、今回はレベルが違う。


 全身だ。


(僕はもう少しで死ぬのだろうな)


 オストは諦めかけたその時だった。なんと、更に痛みが積み重なった。オストはそれを持ち上げ、力無くそれが何かを確認した。

 オストは、今思えばよくそんな余裕があったな、と振り返る。

 それは水筒だった。しかも少量の。大した意味がない。オストは水筒を投げ捨てようとした。

 

 ふとオストは思い出した。自らに宿る紋章について。


 【中原逐鹿】


 ポンコツの紋章。それが紋章が判明した瞬間にラテーノに言われた言葉だった。


 ♦︎♦︎♦︎


「ポンコツの紋章?」


 オストはラテーノが発したこの言葉をリピートした。「ポンコツ」まるで自分を否定されたかのような言葉だった。オストには親がいない。ラテーノに育てられたから。ラテーノはオストにとって親であり、兄のような存在だった。

 彼だけは自分の味方、オストはずっとそう信じていた。

 それなのにこの裏切り。オストはこれまで竜殺者になるために必要な紋章を得ようと、血をはく努力をしてきた。ラテーノにとってもそれは周知の事実であった。


「ああ。君の紋章はポンコツだ」


 ラテーノはオストに冷酷に告げる。そこからラテーノは事務的に淡々と、理由を説明していった。


「いいか。君の紋章は竜殺者に向いていない。


 ①【中原逐鹿】は武器の性能を高める紋章だが、人と竜の基礎的な能力差が大きいから大したアドバンテージにならない。

 ②由緒ある紋章ではないから碌に竜を殺す任務を任せてもらえない。

 ③単純に応用が効かない。


 という感じに理由なら幾らでもある。まあ、言ってみれば君の紋章は、人殺しには向いているが、竜殺しには向いていないということだ。オスト君には近衛騎士団が向いていると思うよ」


 崖に突き落とされたような気分だった。踏み躙られた。だが、不思議と悪い気はしなかった。自分が悪かったのだ、とオストはすぐに割り切った。割り切らなければやっていけなかった。


 それからオストは血の汗をかくほどの努力をし、ラテーノを頷かせるほどまでになった。


 ♦︎♦︎♦︎


 こんなところで死んでたまるか。
































「……死んだか。なかなかの敵だった。私が紋章を使わざるを得ない状況まで持ち込まれたのは封印解除後以来初めてだ。グロックスも紋章を使わずに入れたというのに」


 最後に、私は好敵手を失ったのかもな……、と最後に言い残し、自分の翼を抱えながらそこから立ち去ろうとした。


「待てよ」


 フェルニゲシュは聞き覚えのあるその声を聞いた瞬間、驚いたように振り返った。そこには全身が焼けたにも拘らず、全快とはいえずとも多少回復したオストの姿があった。


「………な、ぜ」


 オストは呆気に取られるフェルニゲシュの声を聞き、笑い返した。オストは種明かしを始めた。


「ククク、笑いを抑えきれずにはいられない。漸くフェルニゲシュ、お前の鼻をあかせた。


 なに、単純な話だ。この水筒、理由は知らないが傷薬が少量だけ入っていた。それを僕の【中原逐鹿】で性能を高め、それを自分自身にかけることで、ただの傷薬が完全回復薬に昇華したというわけだ」


「種明かしをどうもありがとう。で、これからどうするのだ? 私を殺すか?」


 暫くの間の沈黙。だというのに、周りの空気は重すぎず、軽すぎずもなくちょうど良い感じだった。


「ああ、殺すとも」


 オストのそのひと言で、場の空気が重くなった。オストが重くしたのだ。フェルニゲシュは身構えも何もしない。フェルニゲシュには馬の紋章があるからだと考えられる。


「ほう、そうか。では私は馬でも出すとする………ッ!?」


 フェルニゲシュは紋章の印を結び馬を出現させようとした。オストはこれに対し身構えた。だが、馬が出現することはなかった。よく見てみると、フェルニゲシュは胴体を貫かれていた。赤い鎖で。


「【豪華絢爛】」


 フェルニゲシュの方向から誇り高きあの貴族の声が聞こえてきた。オストは複雑な気持ちだったが、待ち望んでいたとばかりに刀を抜いた。


「おい、オスト。フェルニゲシュを殺す。援護しろ」


 その声の持ち主はアルベルトであった。アルベルトは片手を掲げ、背中の方から無数の赤い鎖を繰り出した。フェルニゲシュは眼を疑いながら、


「何故貴様がここに。グロックスは負けたのか?」


 と呟いた。アルベルトは、


「そこは想像にお任せしよう」


 とご機嫌よろしく言った。続いてアルベルトはオストのを見て、


「オスト! 君は前衛として全ての攻撃を受けろ、ボクがその隙にフェルニゲシュを貫く!」


 アルベルトの指示を聞いたオストはむずむずした様子で「ああ、ああ」と口ずさんでいた。


「「さあ、反撃開始だ!」」

♦︎作者から♦︎

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