20…オストの迷い
その時、今まで固く閉ざされていた各家の扉が次々と開いていった。それは歓迎をするためのものではない。蹂躙するためのものだ。
誰を?
オスト、アルベルトの竜殺者たちだ。
「うおおおおおおおおおお! 死ねえええ!」
鎌を持った男が1人突出してオストに襲いかかってきた。他の人々もこれに続く。女子供、老人まで、この城の殺意が全てオストらに向いている。
当然ながらこの男の訓練されていない素人の動きはオストに簡単み見切られ、峰打ちで倒れた。それでも人々は恐れをなしもせず、ただただ襲いかかってきた。
オストは刀を抜かず、ただ峰打ちに徹していた。
一方のアルベルトはと云うと、
「【豪華絢爛】」
紋章を展開し、その華を管のように操り、片っ端から自分に敵対の意思を持っていると考えられる者を殺していた。
「っ! おい、アルベルト!」
オストはそんなアルベルトに激昂し、自分に襲いかかってくる民を交わしながらアルベルトに近づいていき刀を抜いた。その様子に民は攻撃の手を止め、グレンジャーは
「おいおい、マジかよ。今頃に仲間割れかよ。面白えなあ!」
と言って下衆な表情で薄らと笑みを浮かべた。
「なんだ? オストよ。何故僕に刃を向ける? 君の敵は僕ではなく民の筈だが」
アルベルトはオストの方を向きもせず、ただ冷静に華を操り続けている。そんなアルベルトに更に激昂したオストは持っていた刀を振り下ろした。
瞬間、アルベルトは眼にも止まらぬ速さでオストの背後に周り、思い切りオストを殴った。
そのまま吹き飛ばされたオストは刀を捨てるわけでなく、再び握り直した。
「解せぬ」
アルベルトはなんの悪気もなさそうな顔で、素直に頭にはてなマークを浮かべた。
「ふざけるな! 民を平然と殺しておいて! 僕たちは竜殺者だろう。殺すべきは民じゃなく、竜だ!」
「その道を塞ぐものを殺しても、別に文句はなかろう」
「………!」
「我々の道を塞ぐ限り、この民草どもは敵だ。フェルニゲシュの手下だ。殺しても問題ない」
「そうだな。俺らはフェルニゲシュ様の手下でテメーらの敵だ。だから貴様ら竜殺者を殺す」
グレンジャーはアルベルトの意見を肯定した。周辺からも「そうだ」「そうだ」という声が口々に放たれた。
「おい、誰が手を止めて良いと言った? フェルニゲシュの民ども。殺せ!」
グレンジャーは続けて民に再指令を掛けた。アルベルトはすぐに戦闘態勢に戻ったが、オストは気が乗らないのか刀を下ろしたままだ。
オストは無防備だ。だが、そこらの人間に殺されるほどヤワじゃない。のだが、1人の6歳ほどの女児に包丁で刺された。
「………がはっ」
オストは血痰を吐いた。
「オスト!」
アルベルトはオストが刺されたのを見た途端、オストの方へと駆け寄り、彼を庇った。
「わかったか。抵抗する民を殺さねば、我々はフェルニゲシュと戦うことすらできないのだぞ!」
「…………」
「……いいだろう。君が民を殺す覚悟が出来るまで、僕がこの場所を受け持とう。君は、ここでもう死ぬには、あまりにも惜しい命だ」
「なんだよ。オストは何もしないのか。まあいいぜ。アルベルトさんよぉ! 俺が相手してやらあ!」
残念そうな顔のグレンジャーが高台から飛び降り、剣でアルベルトに攻撃した。アルベルトもこれに対応する。したがって、この戦闘に割って入れない民全ての矛先がオストに向いた。




