16…貴族
オストは竜殺者として、正式な、晴々しい初任務を迎えた。オストはこの日のためにどれだけの用意をしてきた事か。想像を絶するほどだ。
「初任務の地はダハミリ城、か」
オストは手渡された紙に書いてある目的地まで、徒歩で行った。魔法使いならば空中移動魔法でどうにかなるのがだ、オストは魔法使いではない。この時代、汽車などの画期的な乗り物は存在しない。
[ダハミリ城の周辺]
「? なんだコレは。 結界? しかもかなり高度な」
オストは道なき道を進んでいる最中、透明な壁にぶつかった。まるでゲームの世界に存在するような理不尽なあの壁だ。オストは刀を握り締め、【中原逐鹿】で思い切り斬りつけてみた。
結果、透明の壁は破れず、ただ下の砂が衝撃で舞っただけであった。
(……砂煙が舞っただけ、と考えると、中和しているのでは無く完全防御を実現しているな。非常に厄介だ)
オストは眉間にシワを寄せ、手を顎に当てて、考えているように見せた。思いつく策も全て試した。だが、透明の壁はびくともしない。万策尽きた、とはまさにこの事を云う。
「……誰だ? 君は」
そんなオストの背後に、金髪のナルシストが現れた。金髪はそのままオストの方へと歩き続けた。
そして急に紋章を展開し、自分の周りに華を舞わせた。
その華を長い管のように操り、透明の壁にぶつけた。当然管は弾かれる、筈だったのに……。
なんと透明の壁はガラスのように崩壊したのだった。
「!? なっ!」
オストは絶句し、金髪は得意げに笑った。
「あ、貴方は一体?」
オストは金髪に尋ねた。尋ねられた金髪は、
「我が名はアルベルト・フォン・ドストワール。帝国宰相の子息さ」




