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渡り鳥は環境を求める

土曜日の昼下がり。

ベッドで寝転ぶか、水を飲むか、トイレに行くくらいしかしていない。


夕方が近づき、掛時計の秒針の音が大きくなるほど、

無駄な時間を過ごしているという気持ちが胸を押し潰してくる。


半開きの目と口で壁を眺めながらふと思った。

ボランティアをしよう。


本棚の隙間に立てかけてあるノートパソコンを取り出した。

スタートボタンを押しても電源は付かない。

充電コードをコンセントに刺した。

立ち上がるまでの間、コップの内側の水滴を拝借したティッシュで画面とキーボードを掃除して待つことにした。


メールが立ち上がりゴミ箱マークを連打し、

ようやく調べものが出来る。


ボランティアについて。



探してもこれといったものが見つからない。

ボランティア市民活動団体のHPを見つけ、


次の日、直接出向くことにした。


最寄駅の駐輪所に自転車を止めた。

「盗難多発 鍵のかけ忘れ注意」の看板が目に入る。

なぜ盗む側ではなく盗まれる側への注意喚起なのか。

看板は黄色や赤色が目立ち、

ビックリマークや注意マーク、怒った顔のマークなど、不安を煽ってくる要素が散りばめられていて、怒られている気分になる。


駅に近づくと「路上喫煙禁止」の看板が目に入る。

続いて、「違反した場合は過料¥1,000-徴収されます。」と、書かれている。

1000円払えばここでタバコが吸っていいということか。


昔働いていたバイト先で遅刻すれば1000円罰金と伝えられ、

じゃあ1000円払うんで遅刻しますと言ったら険悪なムードになったことを思い出した。

あの時の瞳孔が開いたかのような、

同じ人間として扱うのをやめられたような見られ方は今思い出しても怖い。

あれを人は「見限る」というのだろう。


「立ち入り禁止は座りながら入ればOK」

のような、屁理屈やトンチを披露しているわけではないのだが、そう捉えられる。


相手からの反応を伺いながら、何人にも見限られながら判別をして来て今に至る。


気づけば電車に揺られていた。


快速電車が止まらない普段降りない駅で降りた。

無駄に広いロータリー、1台も待機していないタクシー乗り場、ポツンとあるコンビニを横目にネットで調べた目的地へと向かう。


道中、熱心に地蔵を拝む老人がいた。

地蔵と老人含めオブジェのようなフィット感。

時が経てば、「地蔵を拝む老人」という石像になりそうな拝みっぷりだ。

その石像を見た住民たちがご利益や良い行いを当てはめて名所にするポテンシャルのシルエットを持ち備えている。

老人はぶつぶつと何かを呟いている。

後ろを横切る際に少し聞こえた。

「…ますように。…ますように。」


何か願いごとをしているようだった。

地蔵を拝むよりするべきことがあるだろう。

願いは、願うのではなく実現化するために動かなければただの夢だ。

中学3年の受験シーズン、同級生に有名な神社に合格祈願に行こうと誘われたが、その時間を勉強に費やした方がいいと断った。


「見限り」を代償に得た今持っているデータと照らし合わせると、

あれも間違いだったのかと思う。



図書館を超えた先、目的の場所に到着した。

建物内に入るとパソコンや書類を見て集中している人が何人かいた。

1人がこちらに身体だけ振り向き横目で笑いながら「お伺いします」と言った。

「少、々、お、待、ち、く、だ、さ、い!」のリズムでキーボードをカタンと打ち、こちらに向かって来た。


ボランティアについての説明と登録をしたい旨を伝えると、

担当者を呼ぶのでお待ちくださいと、イスに座らされた。

各担当があるのなら今の人は何を担当しているのか考えていると、

奥からくたびれた女性が書類を片手にこちらに向かって来た。

「わざわざ来ていただきありがとうございます。」

感謝を述べられ満たされた気分になった。


そこから説明されたことはほとんど覚えていない。


登録を済ませ、サイトをスマホのホーム画面に追加したのでいつでも現在募集中のボランティアを見られるようになった。


しかし、

お寺で子供の面倒、畑仕事、イベントの手伝いなど、自分で調べた時と同じようなものしかなかった。


家に帰ってスマホを開いては新着情報がないかの確認を行った。

次の日も次の日も、自宅でいる時はずっと。

ベッドで寝転びながら、水を飲みながら、トイレをしながら、

「これだ!」と思えるようなものを待ち続けていた。


選り好みはしていない。

しかし、文化やお祭り、イベントの手伝いは気に入らない。

お金が動いているはずなのに下に回せないという魂胆が見えてしまう。

本当にお金が無かったとしてもやりくりを怠って来た結果であって、そんな歴史や風習に手を貸す気はない。

「何百年続いているから」や、「毎年しているから」は続ける理由にはならない。



1週間が経った。


最近雨が続く。

偏頭痛持ちなので地べたと一体化しながら指だけを動かしスマホを眺めていた。


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