白と黒は混ざり合う。
短めの百合小説です。それでも良ければ、どうぞ楽しんでいってください。
『青春もポップに弾けよう! 新発売、サウジー!』
建物の壁に貼られた巨大なモニターから、楽し気に炭酸飲料を持って笑う演技をしている女性が映った。
その映像を離れた場所に建っている建物の屋上から、水樹が手すりに寄りかかりながら眺めていた。
「私~ああいうCM見る度に疑問に思うんですよ~。なんで学生ばっかり使うんだろうな~って。」
頬杖をつきながら水樹はそう言うと、紙パックの苺牛乳をストローで飲んだ。しかし、既に飲み干していた為、底に僅かに残ったのを吸いだそうとして、ズズズという音が出る。
すると、隣で手すりにもたれかかっていた遥が、自分が飲んでいた苺牛乳を水樹の目の前に差し出し、差し出された遥の苺牛乳を水樹は遠慮なく飲んだ。
「炭酸飲料は子供の飲み物だからでしょ・・・。」
「・・・んく。そうかな? 苺牛乳とかの方が子供っぽいけどね~。」
「苺牛乳は大人の嗜みよ。あなたも歳を重ねれば、分かるわ。」
「子供みたいな見た目の遥さんが言っても意味無いでしょ~。」
「あなたは成長し過ぎ。最初の頃、同い年だと思ったんだから。」
「嫌ですね~、私はまだ15ですよ~。遥さんは30でしょ~?」
「28よ。まだ28よ。」
一通り話し終えると、空を飛ぶ鳥の鳴き声が響き渡る程、二人は無言になった。そこから少しの時間、おおよそ10秒の時間が流れ、今度は遥が話をし始めた。
「そういえばこの前、あなたの部屋に四人の女の人が入っていったけど、何を話していたの?」
「ええ~、盗み聞きですか~?」
「外まで聞こえる程だったのよ? 嫌でも聞こえるわよ。」
「学校の同級生ですよ~。学校の先輩から預かっていた手紙を渡しに来たんですよ~。」
「手紙?」
「そそ。ラブレターって奴ですよ~。」
「・・・そう。」
遥は水樹によって飲み干された苺牛乳のストローを咥え、水樹の口に触れていた部分を歯で噛んでいく。友達が誰かに褒められた時や、友達が他の人と仲良くしているのを見ていた時、決まって何かを噛んでおり、昔からの癖だった。
「・・・どんな人なの? その、先輩ってのは。」
「知りませ~ん。」
「知らないって・・・。」
「だって、私は一度も学校に行ってないんですも~ん。」
「・・・そうだったわね・・・あれ、それじゃあ先輩さんはどうやってあなたを知ったのかしら?」
「友達が見せたんですよ~。どういう経緯かは知りませんし、知りたくもないんですが、そうらしいですよ~。」
「そうらしいって・・・あなた、嫌だったでしょ? 勝手に自分を知られて。」
「・・・嫌に決まってるじゃないですか。」
さっきまでのおっとりとしていた水樹の雰囲気が変わった。持っていた空の苺牛乳のパックを握りつぶし、グシャグシャになったパックを大きく見開いた目で睨みつける。
「勝手に人の顔を見せて・・・よく知りもしないくせに私を好きだと軽はずみに書いたり・・・みんな軽すぎるんですよ、何でもかんでも・・・!」
抑え込んでいた怒りを吐き出す水樹。その様子はとても危うく感じ、触れれば目玉をくり抜かれかねない様子だった。
そんな狂気じみた彼女を見た遥は、恐れるとも嫌気がさすのでもなく、ニッコリと笑った。
「・・・ふふ。やっといつもの水樹ちゃんに戻ったね。」
さっきまでの退屈そうな雰囲気から一変し、遥は酷く興奮した様子で、未だ怒りが収まらぬ水樹を背中から抱きしめた。
遥の優しく包み込むような抱擁に、水樹は途端に表情が柔らかくなり、自分の胸やお腹に回している遥の腕を掴んだ。
「中々打ち明けてくれなくて、私心配しちゃった。水樹ちゃんに嫌われちゃったんじゃないかってね。」
「嫌いになんか、ならないです・・・だって、遥さんだけですもん。私を知っているのも、私を見てくれるのも。」
「良かった~。それじゃあ、どうして今の今まで私以外の人と話すような猫かぶりしてたの?」
「・・・だって・・・。」
「んん?」
「遥さんと、たまには普通の人のように普通の会話をしたかった、から・・・。」
「そんな気遣いしなくていいのに。水樹ちゃんの本心を見れるのは私だけだし、それが私の一番の楽しみなのにさ。」
「楽しみ・・・そっか。私、遥さんの楽しみになれてるんですね・・・!」
自分が遥の娯楽になれている事に、水樹は安堵した。それもただの娯楽ではなく、その中でも一際特別なものだと知り、思わず嬉しさが態度に表れてしまう。
そんな水樹の可愛らしさと子供らしさに、遥は恍惚とした表情を浮かべ、水樹の首筋を噛んだ。
「んぅ・・・!」
首から感じる痛みと快感に喘ぎ声を漏らしてしまい、恥ずかしさから水樹はすぐに手で口を塞ぐが、遥によって手をどかされてしまう。
見つめ合う二人。身長は低いが、大人の色気や妖しく笑う遥の口元に、水樹の心は滅茶苦茶になっていた。
すぐにでもキスをしたいと思っていた水樹。そんな水樹の想いを察して、背伸びをした遥が水樹の唇を奪った。
「「・・・・・・・・・・。」」
10秒。相手の匂いや唇の柔らかさ、密着した体から感じる躍動する鼓動、高まる劣情。それらが僅か10秒という短い時間の中で感じ取れた。
それらをもっと感じていたい水樹であったが、遥に体を押されて離されてしまい、そのまま尻もちをついてしまう。
「痛っ・・・遥、さん・・・?」
何故突き飛ばされたのか理解が追いつけずにいると、遥は手首に着けていたリストバンドに表示されている時間を水樹に見せた。リストバンドには0と表示されていた。水樹は自身のリストバンドも確認すると、0と表示されている。
空を見上げると、曇っていた空から陽が顔を出し始め、晴天になりかけようとしていた。
「残念だけど自由時間はおしまい。この先はまたの機会に、ね。」
最後にニッコリと笑顔を見せて、遥は先に屋上から出ていった。その後を追いかけようと、水樹が立ち上がった時、炭酸飲料のCMが流れていた建物の壁のモニターから、一件のニュースが流れた。
『今朝、○○中学の五人の生徒が行方不明になっている事件が起きました。警察はこの件を誘拐と見ており、捜索を続けています―――』
「・・・大人って凄いな。」
痛ましいニュースの内容を見て、水樹は満面の笑みを浮かべ、屋上から出ていった。
初めて見た時は恐怖を覚えていた水樹だったが、今ではもう身も心も遥に染まりきっていた。
【人物紹介】
三上水樹
・15歳 170cm 白髪の女性
・同年代よりも大人びた容姿から男子からは好かれ、女子からは嫉妬されている。
・アルビノを患っており、外に出れるのは陽が隠れている僅かな時間だけ。
・他人に本心を知られるのを嫌い、他人に本心を知ってほしいという矛盾を抱えている。
・好きな食べ物は遥がくれる物。 嫌いな物は椎茸とトマト。
相沢遥
・28歳 159cm 黒髪の女性
・身長は小さいが、美しい顔立ちや大人と言える体つきをしている。
・何らかの病気で入院しているが、何の病気かは不明である。
・水樹を可愛がっており、食べてしまいたいとも思っている。
・好きな食べ物は甘い物。 嫌いな食べ物は脂っこい物や炭酸飲料。
【炭酸飲料 サウジー】
・ショウガと大量の人工甘味料が隠し味のレモンサイダー。意外と美味しいとネットで書かれてから爆発に売れ始めた炭酸飲料。
しかし、CMで青春と言えばサウジーとアピールしたり、マスコットキャラであるサウジー君の不気味な見た目が不評である。
【作者から】
突発で思いついて書きました。誤字や間違った知識がありましたらすみません。
僕はどの作品でもそうですが、読んでくれた方に解釈をお任せしています。なので、この作品が純愛か純愛じゃないか、ハッピーエンドかバッドエンドかを決めるのは読者様でございます。
最後に、読んでくださりありがとうございます。感想を書いてくれると作者のやる気が上がります。宜しければ、お願いします。




