貴族社会は面倒くさい
お父様の訪問から数日後、手紙が届いた。
近況を知らせる手紙だったのだがどうも王都ではややこしい事になっているらしい。
「どうして私の許しが必要なのかしら?」
手紙にはあの婚約破棄の場にいた貴族の令嬢令息から謝罪したい、という連絡が来ている、という。
「別に謝罪とか必要ないんだけど……」
「アレですよ、面子の問題では?」
「面子?」
「婚約破棄の場には多くの令嬢令息がいらっしゃったでしょう。でも誰もお嬢様の味方をしなかった」
「そうだったわね、ていうかさっさと退場しちゃったから」
「それが『公爵令嬢を助けなかった』という解釈になって令嬢令息達の立場を崖っぷちに立たされているんですよ」
「……関係無いのに?」
「関係ある無しの問題では無くて貴族としての評価の問題なんですよ」
……貴族社会って面倒くさいわね。
「それに国が『冤罪で断罪した』と正式に発表している訳ですから余計に各家での立場は危うい物だと思いますよ。公爵家に目をつけられるのはどの家も嫌ですから」
なるほど、そういう事か。
「まぁ、一筆書いておいた方がいいわね」
私は便箋を取り出し謝罪を受け入れる事をサラッと書いてお父様に各家に送って欲しい事を伝えた。
後日、何故か私に対する評価が爆上がりだ、とお父様から聞いた。
……何故に?