嫌な思い出は燃やすに限る
新作です、暇つぶしにどうぞ。
(よく燃えるわねぇ〜)
薪を焚べパチパチと燃える炎を見ながら私は思った。
薪と共に炎の中に手紙を入れる。
手紙はすぐに炎の中へ消えていく。
それは私の心の中にあるあるモヤモヤした物を少しずつスッキリしていく。
「お嬢様、こちらにいらしたんですか」
「えぇ、今日は良い焚き火日和ねぇ。オマケにいらない物を処分するのにちょうどいいわ」
「あぁ〜……」
声をかけたメイドは納得したような表情をした。
「あれからもう一ヶ月経つんですねぇ」
「まだ一ヶ月しか経ってないのよ、この一ヶ月で激変しちゃったけど」
そう、一ヶ月前に私の人生は一変した。
私、エウレア・フィートエアは公爵令嬢でラグズ王国の王太子の元婚約者だ。
一ヶ月前に公の場で婚約破棄を一方的に宣言された。
いわゆる『真実の愛』という奴だ。
「まさか恋愛小説みたいな事が実際に起こるとは思わなかったわぁ」
「ですね、実際に起こるとかなり面倒くさい事になるのもわかりましたし」
そう、恋愛小説だったら悪役はやっつけられヒーローとヒロインが結ばれハッピーエンドで終わるが現実はそうはいかない。
そもそも私は王妃教育や生徒会の仕事で元婚約者とは一緒にいる時間がなかなか取れなかった、なので元婚約者が浮気していた事に気づかなかったし私の悪い噂が出回っていた事に気づかなかった、というか多分意図的に私の耳に入らないようにしていたんだろう。
だから卒業記念パーティーの場で初めて元婚約者が浮気していた事も悪い噂も知った。
つまり手も足も出ない状態で断罪された訳だ。
こういう悪知恵は元婚約者はよく働くものだ、と感心した。
私はアッサリと婚約破棄を了承してさっさと退場した。
こんな茶番に関わるのは時間の無駄なので両親に丸投げした。
話を聞いた父は『後は任せてお前は暫くゆっくりしなさい』と言いこの別荘へと送ってくれた。
母は『周囲の事は気にしなくて良いわ』と慰めてくれた。
本当、両親の愛を感じて嬉しい。
ただやり過ぎる可能性があるのがちょっとだけ不安だ。