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第3話「お世辞じゃないの?」

「「いただきます」」


 あれから30分ほど経って、美味しそうなカレーが出来上がった。


「とても美味しそうです」

「そう?ありがと」


 あの後結局伊織君が一人で作り上げたカレーは、よだれが垂れてしまいそうなほどに美味しそうだ。


「ねぇ菜乃華、よだれ、垂れそう」

「ふぇっ!?」


 否、実際垂れそうだった。


(……‥恥ずかしい)


「へへ、そういう少しだらしない所も俺は可愛いと思うよ?」

「ふぁふぇっっ!?!?」


 めちゃめちゃ変な声が出てしまったのは全部伊織君のせいだ。私のせいじゃない。てか、伊織君距離の詰め方バグってません?


「や、あの……その、あんまりお世辞には言われ慣れて無いもので……」

「え?お世辞?なんのこと??」

「え?」

「え?」


 仕方ない、一旦この件は置いておくことにしよう。このままだと「え?」「え?」「え?」「え?」が永遠に続きそうな気がするから。


「と、とりあえず食べましょう、冷めてしまうとせっかくの出来立てがもったいないです」

「ま、それもそうだな」


 そう言って私は、恥ずかしさを少しでも紛らわせるために、すごく美味しいカレーを勢いよく頬張るのだった。


♢♢♢


 ご飯を食べ終わり、伊織君がお風呂に入った後、私たちはリビングの前でテレビを見つめていた。


「ねぇ、俺たちさ、友達になったんだし、お互いの事もっと知っておくべきじゃん?」


 伊織君が突然投げかけてきた質問に困惑しながらも少し頷いてみせる。


「だから、その…菜乃華のこと、もっと知りたいな」

「っ!」

「嫌…かな…?」

「い、嫌じゃありません!…で…でも、私のこと知っても何もいいことなんてありませんよ…」


 予想外のお願いだったので少し戸惑ったが、決して嫌なわけではない。ただ、私のことを知ってところで何も得なんてない。


「そんなことないよ、俺は…菜乃華を、知りたいんだ…」

「わた…しを……?」

「うん、君を知りたいんだ」


 生まれてこの方私のことを知りたい、なんて人はいなかった。




『君のことをもっと知りたいんだ』




 いや、遠い昔に1人、今の伊織君と同じようなことを言ってくれた人がいたかもしれない。

 でもそれ以上の情報は、記憶にモヤがかかり、思い出せない。

 でも、それでも、今の伊織君の言葉は私にとってほぼ初めてかけられた言葉だった。

 だからこそ、私にとってはとても嬉しい言葉だった。


「ありがとうございます……今までそんなこと聞かれたこと無かったから、その…嬉しいです」

「…?ほんとに聞かれたこと無かった?」

「はい。その、私ってすごく魅力が無くて、だからその、誰も私に興味がないので……」

「そうかな?少なくとも俺から見たら魅力的な女の子だよ」

「え?……そ…それって、どういう意味で……?」

「秘密っ」


(…流石にその笑顔は、反則だよ……)

 

 伊織君は、そう言って無邪気に笑って見せるのだった。

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