ドルドアは魔国に避難したいらしい3
話の内容は何となく想像はしていたけれども、レヴァール国の後継者問題だった。
現在、レヴァール国には三人の王子と二人の王女が居る。
そのうち正妃の子供は第三王子と第一王女。
第一王子であるドルドアは第三側妃の子供で、第二王子と第二王女は第一側妃の子供だそうだ。
正妃はレヴァール国の公爵家の娘で、第三王子を次期国王にしようと実家共々動いているらしい。
とはいえ、第二側妃は他国から輿入れしてきた人で、その息子を蔑ろにする事は国際問題に発展する可能性もある。
第二側妃にも子供は居た。その子供が本来なら第一王子であったはずなのだが、幼い時に死亡したため、繰り上げでドルドアが第一王子になったらしい。
亡くなった王子の死因には不審な点も多く、王位を自分の子供に継がせたいと狙っている、正妃一派もしくは第二側妃一派の仕業ではないかと考えられている。
ドルドア自身も幼い頃から暗殺者を向けられたり、飲食物に毒物が混ぜられる事が何度もあるそうだ。
「第一王女は筆頭公爵家の跡取りになる者との婚約が決定しており、第二王女も公爵家の跡取りになる者との婚約が内定しています」
「三人の王子には婚約者は決まっていないのですか?」
「第三王子は正妃の実家である公爵家の娘、つまり従兄妹との婚約が内定しているし、第二王子も別の公爵家の娘との婚約を発表したばかりです」
第一王子であるドルドアの婚約者が決まっていないのは乙女ゲームの都合だよね。
「しかしながらドルドアは、能力に問題はないのですが第三側妃の身分が低く、後ろ盾が弱いために残っている公爵家の令嬢と婚約させようにも、年齢の釣り合う令嬢が居ないのです」
ドルドアのお母さんの話って『フルフル』でも、顔が似ているぐらいしか出てこなかったから身分とか知らないなぁ。
「それに、ドルドアが王位を継ぐことをよく思わない者が多いのも事実です」
レヴァール国王がそう言ってため息を吐き出してドルドアの頭を撫でた。
「この子の母親は、表向きは平民が伯爵家の養女になり俺に召し上げられたという事になっていますから」
「表向きという事は、実は違うんですか?」
「その子供の母親は魔族だからな。我が国との交渉役に派遣したところをその男が気に入ったというのが真相だ」
「へえ……」
そんな設定があるんだったら『フルフル』で出して欲しかった。
「魔族っていっぱい種族が居るけど、どの種族なの?」
外見的に人間だから、魔物っぽい見た目の種族じゃないとは思うけどね。
「精霊族だ」
「あ、私のお仲間?」
「精霊族と古代宝石精霊は全く違うぞ」
「だってどっちも精霊でしょ?」
「確かに古代宝石精霊が子供を成せば、その子供は精霊族になる事が殆どだ。しかし古代宝石精霊は一つの種族とされてはいるものの、子供に引き継がれるものではない」
「パパ、もうちょっとわかりやすく、尚且つ簡潔に説明してもらってもいい?」
「古代宝石精霊は魔王の力を得ているため魔王族に属するもの、精霊族は単独の種族だ」
「……………………えーっと、古代宝石精霊が肉体を得るには魔王の魔力が必要だから魔王族寄りの存在で、普通の精霊族とは違うっていうこと?」
「その解釈で合っているな」
初めからそう言って欲しかったなぁ。
それにしても、『フルフル』の世界観って魔族の定義が広いよね。
人間以外は全部魔族ってくくりだもん。
ん? つまり、ドルドアって魔族と人間のハーフっていう事?
あー、それは能力値高いはずだわ。
父親譲りの才能って言うのもあるんだろうけど、母親の血も影響してるのね。
「それで、相談というのはなんだ? その子供を魔国で引き取って欲しいとでもいうつもりか?」
「そのまさかです。ペオニアシ国の高等学院に留学するまでの間、こちらに身を寄せさせていただきたいのです」
まて、『フルフル』ではそんな設定も話もなかったぞ。
「そんな事をする義理はない。どうしてもと言うのなら精霊族の族長にでも頼むんだな」
「魔王陛下の承諾を得よと既に言われています」
「そうか、だったら好きにしろ。魔王ゆえに魔族を統括する立場ではあるが、各種族の諸事情にはさして興味はない」
本気で興味がなさそうに言うオルクスだけど、一国の王子を預かるんだよね?
それって普通に国賓になるんじゃない?
少なくともペオニアシ国での留学生は国賓扱いだったよ?
「ねえパパ。他国の王子様を預かるなら、お城に滞在させるものじゃないの?」
「外交官用の部屋は余っているが、他国の王族やらを預かって滞在させるための部屋ではない」
「じゃあ、何処に住むの?」
「それは精霊族の族長が適当に手配すればいい」
いや、ダメだろう。
「外交先の国の王子をそんな風に扱っちゃだめだと思うな」
「ライラ、一つの前例を作るとそこに付け込んでくる者が出てくるだけだ」
「どういうこと?」
「魔国が外交として取引をしているのはレヴァール国だけではない。その子供を国賓としてこの城への長期滞在を認めれば、自分の国もと言い出すところが出てくるという事だ」
「なるほど?」
首を傾げるとオルクスが頭を撫でてくる。
「魔国は他国に妥協をしなければいけない国ではない」
「うん、そうだね?」
『フルフル』でも魔国は世界最強の国で、他の国が協力して攻撃しても意味がないっていう設定だもんね。
「魔国と自分の国が他の国よりも親しくしている、そのアドバンテージを取りたがる国はいくらでもある」
「そうだろうね」
「しかも、今はライラという私の娘がいるからな」
「私?」
私が何の関係があるの?
「ライラを手懐ければ、私に優遇してもらえると思いあがる愚か者も出てくるだろう」
「あぁ、そういう事」
オルクスの私への溺愛ぶりはこの城の中では周知の事実だもんね。
私に気に入られて、オルクスに口利きをして欲しいとお願いしてくる人が出てもおかしくはないか。
「それにライラはその見た目だし、生後間もない。甘くみられる可能性が高い」
「否定は出来ないね」
「専属護衛騎士や専属メイドがミスを犯すとは思えないが、人間は馬鹿な事をするからな」
この部屋にその人間が居るのですが、目の前で馬鹿な事をするとか言う?
「そこの子供は半分魔族の血を引いているから、そこまで馬鹿な事はしないだろうが、愚かな人間ををライラに不用意に近づけるなど、看過できないな」
あ、なんか小難しいこといっぱい言ってるけど、これってただの親バカだわ。
簡潔にまとめると、私に不審な存在を近づけたくないだけだわ。
「精霊族はそれなりに広い領地に住んでいる。そこの子供を引き受ける事は造作もないだろう」
「確かに精霊って自然が好きなイメージがあるから、森とかに住んでそう」
「住む場所は様々だな。ライラの言うように森にすむ者もいれば山岳に住む者もいる。もちろん、王都に住んでいる精霊もいるし、精霊族の族長は王都に大きな屋敷を持っているな」
「そうなんだ」
実の所、私ってこの城から出たことが無いから、外がどうなっているか知らないんだよね。
城の中でも特定の場所以外に行ったことないし。
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