ドルドアは魔国に避難したいらしい2
モルモアのブランケットが貰えると思うと、面倒だと思っていた生誕半年の記念祝賀会も乗り越えられる!
そんな風に考えていると、おもむろにオルクスが私を膝の上に抱き上げた。
なんぞ?
「私もライラにはちゃんとプレゼントを用意している」
「ありがとう、パパ」
にっこりと笑って言うとオルクスは少しだけ満足そうに頷く。
これはあれか、愛娘が他の野郎に懐きそうなのが気に入らない父親の図か?
しかし、今回はなにをくれやがるつもりなんだろう?
一ヶ月目には自分についていた専属護衛騎士とメイドを譲り、二ヶ月目には専用のくっそ広い庭園。
三ヶ月目には専用の部屋にこれでもかと言うほどの高級魔道具の数々。
四ヶ月目にはさらに加えて数人の専属護衛騎士と専属メイドを数人ずつ。
五ヶ月目には私が古代宝石精霊だから、宝石と相性がいいだろうという理由で発見されたばかりのでかい鉱山。
正直、お金持ちの考えていることって、何度も言うけどわからない。
「ちなみに聞きたいのだけど、何をくれるの?」
「魔狐の子供だ」
「ほぅあ!?」
魔狐って凄まじく入手困難な魔物なんですけどぉ!?
HRどころかURの魔物なんだけど、その子供!?
「ど、どこから連れて来たの!?」
「ちょうど繁殖期で魔族の者が深淵の森に間引きに行ったからな。ライラに相応しい魔物の子供を見つけたら捕獲するように言ってあった」
「深淵の森!?」
魔物の平均レベルが500越えで、『フルフル』の攻略終盤になってもチャレンジするのはデスルーラー覚悟とか、ゾンビアタックとか、魔晶石に課金させるための場所とか言われてた、深淵の森!?
そこに間引きしに行く魔族の人ってレベルいくつなの!
「魔狐の中でも珍しい黒金の最上級だ。きっとライラのいい従魔になる」
「それはもはやLR魔物!」
オルクスの膝の上で思わず頭を抱えてしまう。
深淵の森での魔狐との遭遇率は0.4%、そのうち捕獲成功率はそこからさらに0.5%。
そして遭遇する魔狐の大半は白い毛に赤の模様が入ったもので、基礎能力値が跳ね上がっている黒金の魔狐はそのうち0.2%しか遭遇しない上に、捕獲成功率は0.03%と言われていた。
つまり、魔狐の黒金を入手する確率は0.0024%。
しかも繁殖期で子供を捕獲するとか、もう意味が分からないよ。
「私の娘の従魔なのだから、黒金の魔狐ぐらいでなければな」
「基準がおかしい」
いや、そういえばオルクスの従魔は古代龍だった。
オルクスの好感度が最大値で、さらに味方陣営に魔族が10人以上いて、妹姫のレベルが400以上、尚且つ味方陣営の領地レベルが350以上でやっと十戦で一回召喚できるチート技の従魔。
ちなみに、そのチート技を使用すると敵陣営は壊滅近くに陥り、領地レベルが200以上減る。
そんな従魔を持っているオルクスからしたら、魔狐は子供の私に持たせるには丁度いい魔物なのかもしれない。
古代龍は『フルフル』内で登場するのは、オルクスのチート技の時だけで、ユーザーが捕獲するとかそういうレベルの魔物じゃないもんね。
ゲーム内のオルクスの発言では、本気を出させればペオニアシ国自体が一晩もかからずに壊滅するらしい。
頭を抱えて、今回もまたとんでもないものをプレゼントしてきたと考えていると、ふと視線を感じてそちらを見たら、何とも言えない顔をしているレヴァール国王とドルドアが居た。
ごめん、オルクスの発言が衝撃的過ぎて居るのを忘れてたわ。
「パパ、お客様の前でお膝に抱っこは恥ずかしいわ」
「慣れれば問題ない。ライラはまだ生後半年。私の膝の上に居ておかしいことなど何もない」
年齢だけ見ればおかしくはないね! 外見年齢的にもおかしくないね!
でも、私は前世の記憶があるせいで精神年齢はもっと上!
「私は立派なレディになってペオニアシ国の高等学院に行くって決めたの。いつまでも子ども扱いは困るわ」
「教育も始まっていないのだから、気にする事は無い」
「いいえ、学ぶと決めた時から全ては始まるのよ」
前世では体が弱かったせいでろくに学校に通えなかったし、折角転生したからにはスクールライフを楽しみたい!
「ライラ姫はペオニアシ国の高等学院に入るつもりなのですか?」
ドルドアが聞いて来たのでそちらを向いて頷く。
「はい、今すぐには流石に知識もマナーも、あと外見年齢も不足しているので、三年後を目安に通えればと思っています」
「それは、ドルドアと時期が被りますね」
そうでしょうね。
『フルフル』のイベントをこの目で見るために通いたいから、入学時期を合わせるのは当然だよね。
「しかしながら、いくら古代宝石精霊とはいえ、三年でペオニアシ国の高等学院に通えるほどのマナーや知識を身に着け、外見年齢を操作できるようになるのは厳しいのでは?」
「問題ない。一流の教師を付けるし、私の娘であるライラに不可能などない」
わぁい、すごい買い被られてる。なにこの親バカ。
いや、間接的に自分が凄いって言っているのかしら?
レヴァール国王はオルクスの言葉に少し考えるように沈黙すると、ちらりとドルドアを見る。
ドルドアもその視線に気が付きつつも、何とも言えないような顔をしてすっと視線をそらした。
え、なに? もしかしてこの親子って仲悪いの?
『フルフル』では特にそんな話があるイベントはなかったと思うけど。
あー、でも兄弟姉妹の確執があって困っているとか言う話はあったな。
「魔王陛下、本日ドルドアを同伴したのは相談したいことがあるからなのです」
え、何いきなり。
「相談? 外交上の問題以外で相談があるという事か?」
「はい」
「今日はライラの生誕半年の記念祝賀会だ。下らない事を聞くつもりはない」
私の生後半年記念日を重要視しすぎじゃないですかね!?
「確かに、魔王陛下からすれば我が国の問題など下らないのかもしれませんね」
認めちゃだめだと思うな!
「魔国の魔晶石を輸出している大切な国なんだよね? だったらちゃんとお話を聞いた方がいいと思うな」
「レヴァール国とだけ取引をしているわけではないぞ」
「それでも取引相手の話を蔑ろにしちゃいけないと思うの」
私の言葉にオルクスは小さくため息を吐き出すと、聞く気になったのかレヴァール国王を見た。
その視線を受け、レヴァール国王は一度わたしを見て頭を下げると、オルクスを見て話し始める。
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