嵐の図書塔4
※<>内の言葉は日本語です。
優しい笑みを浮かべるリリス様。
<確かに子宝神社があったり、神頼みなどという言葉もありますので、神様が子供を授けてくれるという考えも全く間違っているというわけではありませんわ>
<やっぱりそうですよね!>
<ですが、いくら神頼みをしても余程の奇跡が起きない限り基本的に人間はある事をしないと子供は出来ませんわ>
<ある事ですか?>
なんだろう? 結婚した人が仲良くしていると子供が出来るんだよね?
仲良くっていうぐらいだから、やっぱり手を繋いだりキスしたり?
いや、それでいくと恋人の段階で子供が出来ちゃうかも。
あっ! 授かり婚とかテレビで見た気がするからそう言う事もあるのかも!
じゃあリリス様はもう子供がいるかもしれないの!?
<リリス様はもう赤ちゃんがいるんですか!?>
<どうしてそうなりますの!?>
<だってジンジャー様とキスしてましたよね!>
<それは……しましたけれど>
リリス様は顔を赤くして視線を逸らす。
<じゃあやっぱり赤ちゃんがいるかもしれないですよね!>
<……具体的な明言は避けますが、キスだけでは子供は出来ませんわ>
<じゃあ、何をしたら子供が出来るんですか?>
<ですから、わたくしからの明言は避けさせていただきますわ>
いずれ教育を受けるでしょうというリリス様に、私はため息を吐き出した。
今教えてくれてもいいと思うんだけどな。
<とにかく話を戻しますけれど、ライラ様は他の誰でもないヴァンス様にだけドキドキなさいますのよね?>
<はい、他の人に感じるドキドキとは違うと思います>
<それならやはり恋愛感情を抱いていますわ>
<恋愛とか、漫画みたいなことが本当に起きちゃうんですね>
<わたくしだって、この精神年齢でジンジャー様に恋をするなんて思っていませんでしたわ。けれども、いくつになってもこういう感情は生まれるのだと改めて思い知りましたわ>
リリス様が「ほう」っとため息を吐き出すけど、なんだか色っぽい?
こういうのを精神年齢が大人ならではの色気って言うのかもしれない。
私も大人になったら色気が出てくるのかな?
<こういうのって初めてで、どうしたらいいんでしょう?>
<先ほども申しましたが、ライラ様の場合は環境的や立場的にヴァンス様と二人きりという状況が作りづらいので、おそらく前世の知識はあまりあてにならないと思いますわ>
<そんなっ!>
<乙女ゲームも、攻略対象を攻略するものであって、攻略されるものではなかったでしょうから、ヴァンス様からあからさまに好意を向けられているこの場合の参考にはなりそうにありませんわね>
<じゃあ、登下校に二人でデートするとか、カフェで二人きりでデートするとか、休日にお互いの家に行ってまったりすごすとか、なんだったら遊園地とかに二人でデートに行くとか、いろんな場所にデートに行くとか、二人で試験前にお勉強デートするとかもないっていうことですか!?>
<少女漫画に影響されすぎですわよ!?>
リリス様が驚いたように言うけど、私にとって恋人っていうのはそういうものなんだよね。
あと手を繋ぐとかキスするとか!
<はっ!>
<どうなさいましたの?>
<背後から抱きしめるように密着されて、耳元に囁かれるのは恋人っぽい行動ですか?>
<大分親密と言いますか、官能的な行為だとは思いますわ>
<かんのうってなんですか?>
<……主にとある事に特化した刺激とだけ言っておきますわね>
刺激……刺激か。
確かにヴァンスのしてくる行動は刺激的だよね。
なるほど、ああいうのを官能的って言うのか。
お色気大魔神で官能的なのね。
<前世では吸血鬼はなんともうしますか、淫魔のように色事に長けているイメージでしたが、こちらでもそうなのでしょうか?>
<いろごと? よくわからないですけど、吸血鬼族は淫魔族と同じように誘惑に長けているってヴァンスが言ってました>
<そうですのね。……恋愛初心者には重荷かもしれませんわね。いえ、ある意味ピッタリの相手なのでしょうか?>
リリス様が頭痛が痛いと言うように、握り締めていた手を放して片手を自分の額に当てた。
<ライラ様は魔王陛下の寵愛を受けておりますので、恋人を作るとなるとかなりのそれはもう想像を絶するほどの困難があると思いますわ>
<恋人ってやっぱり告白してなるんですよね?>
<大抵はそうですわね>
<……ヴァンスに愛していると言われたんですけど、この場合私が了承したら恋人になりますか?>
<一般的にはなりますわね>
その言葉に顔が真っ赤になる。
ヴァンスと私が恋人……。
手を繋いだりキスしちゃうの? 今まで以上に密着しちゃったりするの?
それって、それって……!
<はっ恥ずかしいんですけどっ>
<恋人として魔王陛下が認めるかどうかが問題ですけれども……>
<知ってます! 道ならぬ恋というやつですね? 親に交際を反対されて困難に立ち向かって乗り越えて結ばれるっていうのも王道ですよね!>
<そうですわね、王道ですわね>
<私とヴァンスもそうなるという事ですか?>
<魔王陛下のお許しが無ければそうなると思いますわ>
<そうなんですね……って、これじゃあまるで私がヴァンスに付き合うって返事をするみたいじゃないですかっ>
<なさいませんの?>
<それは……>
<愛していると言われて嫌だったとか?>
<それはありません>
<お試しに付き合ってみるのもいいと思いますわ>
<恋人ってそんな気楽になっていい物なんですか?>
<相性というものもありますし、付き合ってみないとわからないこともあると思いますわ>
<うぅ……>
ヴァンスと今以上に仲良くするなんて、恥ずかしいっ!
<あのあのっ恋人になったらキスするんですよね?>
<それはまあ、そういう場合が殆どですわね>
<ヴァンスと……>
今でさえあんなイケボで囁かれるだけでドキドキしてゾクゾクするのに、キスなんてされたら心臓止まっちゃうんじゃないの?
<それで結局の所、ライラ様はヴァンス様が好きなのですか?>
私がヴァンスを好き?
それはもちろん好きだよね。
だって私の専属従者だし、他の人とは違う意味でドキドキするし、特別って言われたらオルクスとはまた別の意味で特別だよね。
こ、これってやっぱり恋愛対象として好きって事?
<私……ヴァンスと恋人になりたいって思ってるんでしょうか?>
<いえ、それをわたくしに聞かれましても困りますわ>
<私がヴァンスと付き合うって返事をしたら、ヴァンスは喜んでくれますか?>
<愛していると告白していらっしゃったのでしたら、普通は承諾のお返事を貰えたら喜ぶと思いますわ>
<そうなんですね>
そうだよね、少女漫画でもお互いに告白し合ってハッピーエンドで終わるものが多かったよね。
という事は、ヴァンスの告白に了承の返事をしたら私的ハッピーエンドを迎えるのかな?
でもリリス様はジンジャー様と婚約者になって恋人になっても人生は続いているし、そういうのはやっぱり漫画とは違うのか。
<け、結婚が人生ゴールですか?>
<人生のゴールを結婚にしてどうしますの。ましてや魔族の寿命は人間とは比べ物にならないほどに長いのですわよ>
<こ、子供を産むまでとか?>
<子育てもありますわ。人生はもっといろいろありますわよ>
<……おじいちゃんおばあちゃんになって天寿を全うするとか、お話の中だけですよね?>
<事故死や病死の他、この世界では他にも多数の死因がございますが、魔王の姫君であるライラ様と吸血鬼族のヴァンス様なら天寿を全うする事も可能だと思いますわ>
<そ、それって……夢みたいですね>
やばい、想像しただけで顔がにやけそう。
でも……。
<あの、リリス様>
<はい、なんでしょうか?>
<父は私がヴァンスと付き合うと言ったら、やっぱり反対すると思いますか?>
親バカな父親は娘の彼氏が「娘さんをください」とか、「娘さんと付き合ってます」とかいうと怒るのが定番だよね?
<そうですわね、魔王陛下はライラ様を寵愛なさっていますので、繰り返しになりますがお付き合いを認めるのは難しいかもしれませんわね>
その言葉に思ったよりもショックを受けた。
<わっ私は……やっぱり普通にスクールライフを送るとか、漫画みたいに恋愛するって無理なんでしょうか?>
自分で恋愛に関してはまだ早いとか言ってたくせに、いざ無理そうだって指摘されてショックを受けるとか、自分勝手すぎ。
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こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。




