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嵐の図書塔3

※<>内の言葉は日本語です。


 カツカツと足音を立てて速足でリリス様たちの所に行くと、私はリリス様の手をガシっと掴んだ。


「どうなさいましたの、ライラ様? 先ほどは大きな声が聞こえて驚いてしまいましたわ」

「ジンジャー様、リリス様をお借りします!」


 そう言ってリリス様を強引に連れ出して皆から離れて本棚の影に隠れるように身を潜めた。


「えーっと?」


 リリス様は訳が分からないと言うように首を傾げるけれども、それどころじゃない。


<リリス様は前世での恋愛経験はありますか!?>

<それは、まあ……普通にありますわよ? お見合いでしたが結婚もしましたし、子供も二人おりましたもの>

<それなのにジンジャー様に言い寄られて恋する乙女になるんですか!?>

<確かに精神年齢は多少今に影響しているかもしれませんが、そもそも恋に年齢は関係ありませんわ。前世でもご年配のご婦人が若い俳優の熱狂的ファンになるという事はよくございましたでしょう?>

<そうなんですか!?>

<……ええっと、つまりライラ様はわたくしがジンジャー様との関係に、その……照れてしまっているので違和感を抱いていらっしゃいますの?>

<なんて言ったらいいのかわからないんです。だって私は前世で恋愛なんて空想の物語の中の物でしたし>

<恋愛は何歳になってもいつだって新鮮に感じる物ですわ>

<そうなんですか……>

<ロザリナ様がおっしゃったことを気になさっていますの?>

<気にすると言うか、そのですね……あの……つい先ほど、えーっとヴァンスに密着された時にドキドキしまして>


 思い出して顔を赤くしてしまう。

 リリス様は私の言葉で事情を察してくれたのか、「まあ」と言って笑みを浮かべた。


<それはつまり初めての異性との触れ合いに緊張なさったとかそういう事でしょうか?>

<あ、いえ父とは一緒に寝たりしますし、生まれてしばらくはお風呂も一緒でしたし、専属護衛騎士に抱きかかえられることもありますから異性との接触に関して今更緊張ということはないんですけど>

<……衝撃的な内容をお聞きしてしまいましたが、とにかく異性との接触で緊張なさったわけではありませんのね?>

<はい、イオリが同じように顔を近づけてもびっくりしてドキドキはしますけど、ヴァンスに感じるドキドキとは違う感じです>

<確かに、ヴァンス様は色気のある方ですので意識をなさるのも仕方がないかもしれませんわね>

<そうですよね!?>

<けれど、それを言うのでしたら『フルフル』の攻略対象である魔王陛下もネルガル様もかなりの色気がありますわ>

<うっ……>

<イオリ様だって色気というよりは母性本能がくすぐられる系のイケメンですわよね?>

<母性本能?>


 それに関してはちょっと専門外かもしれない。

 いや、小さい子を見て可愛いとは思うんだけど、私の省エネモードが幼児だしなぁ。

 私の様子を見て何かを思ったのか、リリス様は困ったように眉を寄せる。


<ヴァンス様にドキドキするのは、例えば密着される時だけですか?>

<そうですね、その見つめられるとか、こう……耳元で囁かれるとか、何よりあのイケボがもう、なんて言っていいのかわからないですけどゾワゾワってするんです!>

<腰に来るとか、そういう?>

<腰……? 背筋がゾクゾクはします>

<では胸がドキドキして、声を聴くとゾワゾワするだけなんですね?>

<えーっと、顔が熱くなるのも追加ですかね>


 言っててなんか恥ずかしいなっ!


<見ているだけで嬉しくなるとか、幸せな気分になるというのは?>

<いないとなんか物足りない感じはあります>

<ファン心理に似ていますが、ライラ様の場合はやはりロザリナ様がおっしゃったように恋愛感情だと思いますわ>

<……私には恋愛はまだ早いと言うか、その、まだお子様なので>

<初恋が幼稚園生なんてよくある話ですわ>

<そうなんですか!?>


 あ、いや……そういう少女漫画もあったな。

 私が? うそでしょ? 病院生活だったとはいえ前世で初恋もしたことがない私がヴァンスに?


<リリス様……>

<なんでしょうか?>

<こ、恋って……どうしたらいいんでしょうか?>


 顔を真っ赤にしてプルプルと震える手で必死にリリス様の制服を掴んで聞くと、リリス様はキョトンとした後に首を傾げてしまう。


<それこそ人それぞれですわ>

<私には乙女ゲームとか少女漫画の知識しかないんですっ>

<乙女ゲームはともかくとして、少女漫画を読んでいるのなら多少の心得はあるのではありませんの?>

<つまりデートですか? 二人でどっかに一緒にお出かけすればいいんですか!?>

<ま、まあそういう事もありますわね。ライラ様の立場で可能かは別ですけれども>

<他にも、二人で一緒にお昼ご飯をたべっ食べさせ合いっこをしたりとか!>

<いつの時代の……いえ、それもライラ様の立場で可能かと言う問題がありますわね>

<あとあとっ手を繋いだり二人で一緒に帰ったりするんですよね!?>

<二人きりという状況が可能かどうかはともかく、一緒に登下校はしていらっしゃいますわね。手は繋いで欲しいと言えばして下さるのではありませんの?>

<手を重ねられて握り締められるだけで心臓バクバクです!>

<初心ですわね>

<リリス様たちだって初心だってヴァンスが……あっ>


 つい覗き見してた事をバラしちゃうような事言っちゃった。

 チラっとリリス様を見ると呆れたような視線を向けられてる。


<えーっと、ごめんなさい?>

<ライラ様はイベントを見たいがために留学していらしたのでしたわね>

<はい……>


 咎める視線ではないけども、なんというか子供をたしなめるようなそんな視線に居たたまれない。


<ちなみに、何をご覧になりましたの?>

<ジンリリ確定イベントと、さっきの場面(イベント)を出歯亀しました>

<確定イベントは中庭のものですわよね? ライラ様はあの後授業に出たようですもの>

<はい。リリス様はあのあとジンジャー様とどこかに行ったみたいですけど、イチャイチャしたんですよね?>

<……そうですわね>


 そこでリリス様が顔を赤らめた。


<やっぱり! 二人きりの部屋でキスをしたり手を握ったりするんですよね?>

<え? え、ええ……そうですわね>

<きゃー! ジンリリ尊すぎです! 恋人ってやっぱりそういう感じにイチャイチャするんですね!>

<……ライラ様、ちなみに、念のためなのですが子供はコウノトリが運んでくるとか、キャベツ畑で生まれるとか思ってませんわよね?>

<当たり前じゃないですか。私がいくらほとんど学校に行っていなかったからって、病院生活は長かったんですよ。妊婦さんぐらい見かけました。女の人のお腹の中で成長するんですよね>

<ああ、そういった知識はちゃんとありますのね>

<夫婦が神様にお願いすると神様が赤ちゃんを女の人に授けてくれるって、すごい素敵ですよね>

<………………え?>

<漫画で読みました! 赤ちゃんが欲しいって旦那さんが言ったら、奥さんが「じゃあ、今度神様にお願いしに行かなくちゃ」って言ったんですよ!>

<……なるほど>


 私の言葉にリリス様が少しだけ遠い目をしたけど、すぐに気を持ち直したようににっこりと笑みを浮かべた。

 リリス様は私の手を包み込むように握り締める。

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こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。

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