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出歯亀出来ればいいから!5

 話しも終わり、私とお友達(・・・)になるには打算を考えない純粋な感情が必要という噂を広めておく、というリリス様に私達の友情には本当に打算はないんだよね? とちょっと不安になったのは内緒。

 いや、純粋な友情だからこそお友達の私を守ろうとしてくれているんだと思っておこう。

 精神衛生的にその方がいいから!

 帰るための馬車に乗り込む際、ヴァンスがいつも通り(・・・・・)エスコートの為に手を差し出してくれたんだけど、ほんの一瞬動揺してしまった。

 恋の始まりとか言われたから意識しちゃうじゃないのー!


「姫様?」

「なんでもない」


 平気な振りをしてヴァンスの手を借りて馬車の中に入ってソファーに座ると、いつも通りヴァンスが向かいに座る。

 ぴぃ、改めて顔面偏差値お化けの色気大魔神~!

 赤くなりそうな頬を手で覆ってさりげなく隠して窓の外に視線をやる。

 うわーん、ヴァンスは私の専属従者だからずっと一緒なんだよぉ!

 なんか妙に意識しちゃって気まずいじゃん!

 ……ん? まって、このイベント(・・・・)に覚えがある!

 『フルフル』で妹姫(ヒロイン)が攻略対象と二人きりになって意識しちゃって、恥ずかしさのあまりもじもじしちゃって甘酸っぱいやつ!

 いやいや、この馬車の中にはノーマとイオリもいるから二人きりじゃないし、馬車の外には護衛騎士もいるし、イベントと同じじゃないよね?


「姫様、どうかしましたか?」

「なんでもないし……」


 なんか妙なテレがあるせいでぶっきらぼうな口調になってしまった。

 うぅ、思春期の子供じゃあるまいしって私はまだ生まれて約三年、前世含めても人生経験はまだ子供と言ってもおかしくないんだった。

 あーもうっ! ロザリナ様が言ってただけで実際には恋とは限らないよね。

 ヴァンスが顔面偏差値お化けの色気大魔神なせいでそう勘違いしちゃってるだけで、恋とかそんな……少女漫画みたいなことが私に起きるとか!

 うきゃぁ! 考えただけで恥ずかしい!


「姫様、お顔が赤いようですが?」

「気にしないでっ」

「ですが」


 必死に目を合わせないようにしていたのにヴァンスが手を伸ばしてくるのが目の端に写って、思わずそっちを向いたらばっちり目が合ってしまった。


「ぴぃっ!」

「姫様?」


 身を乗り出したヴァンスの手が私の前髪をどけてそっとあてられた。


「熱はないようですね?」

「だ、大丈夫だから、うん」

「ですがお顔が赤いですし、屋敷に戻ったら医師を呼んだ方が?」

「いらないから!」

「ですが……」


 すぅっとヴァンスの手が動いて頬を撫でられる。

 ひぇぇぇん、心臓が、心臓がやばい!


「……姫様?」

「ぴぇっ」


 甘く蕩けるようなイケボで囁くように言われて変な声が出る。


「ヴァンス、死んだら労わりの言葉はかけておきますね」

「オレも、弔いには参加しておく」


 ノーマとイオリが呆れたように言うと、ヴァンスがクスクスと笑った。


「二人ともそこは協力すると言ってくれるところじゃありませんか?」

「「まだ死にたくないので(から)」」

「確かにわたしもまだ死にたくはありませんが、姫様はこんなにも愛らしいですし、思わず手が出てもしかたがないのではありませんか?」

「自殺願望があるとは知りませんでした」

「オレからは今の発言は報告しないでおく。でも多分、いや確実に筒抜けだから……」


 愛らしい! 愛らしいって言われた!

 いや、割といつも言われてるな。

 落ち着け私、ヴァンスは色気大魔神だからちょっと色気が漏れてもそれが通常運転なんだよきっと。


「けれど専属従者に選ばれたのですから希望はありますよね?」

「昔に居たとかいう勇者に例えるなら小ボスと中ボスの後にラスボスが控えてるっていう感じじゃないか?」

「勇者とかわたし達の世代じゃないでしょう」


 勇者ってオルクスが即位したころとか、前魔王の時代に人間が用意したっていう生贄だよね?

 何かあるとすぐ魔族のせいって国民煽って政治を安定させてた時代があったって歴史で習ったわ。

 ラスボスがオルクスって事よね?

 ……え?


「しかし、姫様に愛を告白するためには陛下のご許可を頂かなくてはいけませんから、ラスボスと言っても間違ってはいませんね」

「ぴぁ!?」


 愛の告白!?


「こんなに愛らしい姫様を前に惹かれない男などおりましょうか。わたしもその中の一人です」

「あ、ひぇっ」


 そんなに色気振りまきながらうっそりと囁かないでぇっ!

 パクパクと顔を真っ赤にしながら変な声を出したり声にならない悲鳴を上げていると、バシンとヴァンスの手をノーマが叩き落してくれた。

 もっと早く助けてくれても良かったのよ?


「ノーマ、手加減をして欲しいのですが?」

「何か言いましたか?」


 困ったように目じりを下げて言うヴァンスにノーマは満面の笑みで答える。

 確かにすっごい音がしたもんな。


「大丈夫? 痛くない?」

「心配してくださるんですか?」

「え? そりゃまあ」

「そうですね、愛らしい姫様がここにおまじないをしてくれたら痛みなどすぐに引きますよ」

「おまじない?」


 私は治癒魔法に関してはそこまで得意じゃないよ?


「姫様がここに口付けてくださればそれで」

「ぴぃ!?」


 それって『フルフル』で妹姫(ヒロイン)が攻略対象にするやつぅ!

 イベントでは冗談めかして言われて、揶揄われたと思って怒った妹姫(ヒロイン)が実際にやってどや顔して驚かせるやつでしょ!?

 私が体験してどうするの!


「姫様?」


 ニコニコと目の前に手を差し出してくるヴァンスに顔がさらに赤くなるのが分かる。


「い……」

「い?」


 咄嗟にヴァンスの手を掴んで僅かに赤くなった部分を撫でる。


「痛いの痛いの飛んでいけ~」


 そう言ってパッと手を離してノーマの腕にしがみついて真っ赤になった顔を隠した。

 馬鹿か私!

 異世界人のヴァンスに前世日本のおまじないが通じるわけ無いのに!

 あぅぅっ、もう何この動悸!


「ここでノーマにしがみつかれるのも、わたしとしては何と言うか、微妙な気持ちになるのですが」

「いや、今のはヴァンスが悪いだろう」

「そうですよ。純情な姫様を揶揄って。こんなに真っ赤になって……なんて可愛らしいのでしょう」


 ノーマが楽しそうに声を出して私の肩を撫でてくれる。

 やっぱり揶揄われてたのか!

 こんの顔面偏差値お化けの色気大魔神めっ!

 あのイベントで実際に手にキスした妹姫(ヒロイン)すごいな。

 流石は乙女ゲームのヒロインだわ、尊敬する。


「揶揄ってませんよ? 姫様におまじないをしてもらえばどんな痛みでも消し飛びます」

「ヴァンスの場合、本気で言ってそう」

「本気に決まっているでしょう、イオリ」

「だよなぁ、ネルガルさんのしごきになんだかんだで最後まで付いて行けるのってオレたちの中だとヴァンスだけだし」


 ……しごき? 訓練じゃなくてしごき? そんな虐待みたいな訓練してるの!?


「ネルガルの訓練って、専属護衛騎士にしている訓練でしょう? ヴァンスたちはメイドと従者なんだからそこまでしなくてもいいじゃない」


 あせって顔を上げて言うと、ヴァンスと目が合ってにっこりと微笑まれる。


「学院の中では護衛騎士は居ませんからね。傍に居るわたし共が護衛騎士の役割を果たすのは当然です。ですので訓練もそれに準ずるものになります」

「でもっしごきって」

「イオリが大げさなんですよ」


 その言葉にイオリを見ると肩をすくめられてしまったので、今度は張り付いたままのノーマを見たけど、にっこりと微笑まれるだけだった。

 これはネルガルに訓練内容を問い詰めないといけないかもしれないわね。

 いくらなんでも正式な護衛騎士じゃないのにそれと同じような訓練をするなんて、えっと、労働基準法だっけ? そう言うのに引っかかると思うのよ。

 この世界にそんな物はないけど!


「わたしは姫様のお傍に居ることが出来れば、どんなことだってしてみせますよ」

「ぴっ」


 色気をふんだんに含んだ声でうっそりと微笑まれて言われた私の心臓は今日一で爆発するんじゃないかと思った。

ライラの恋愛のお相手はヴァンスになりました!

頑張れヴァンス、オルクス(ラスボス)が意気揚々と待ってるぞ!

本来、妹姫(ヒロイン)がするはずだったイベントが今後リリスとライラ(とか)にぶち当たりそうです♪


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こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。

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