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出歯亀出来ればいいから!3

※<>内の言葉は日本語です。


 はぁ、クラスメイトとお昼ご飯食べながら恋バナとか青春だわ。

 ビバ! スクールライフ!

 いつもよりも食事が美味しく感じるわ。


「ライラ様にご婚約者はいらっしゃいませんよね」

「そうですね。父も私には恋愛はまだ早いと言っていますし」

「まあそうですの? 従者の方と親密な関係だと思っておりましたわ」


 従者ってヴァンスとイオリだよね?

 親密っちゃー親密か? 専属従者だし。


「従者とはいえあんな至近距離でお話をするなんて、主従を超えた絆があるように見えましたわ」

「……はい?」

「え、違いますの?」


 どういうこと? とキョロっと視線を動かすとリリス様もクラリス様も驚いた顔で私を見ている。

 え? え?


「の、ノーマ?」


 唯一平然とした顔で食事を続けているノーマに助けを求めてみる。


「姫様のご期待に添いたいのは山々ですが、一応まだ死にたくはありませんのでご容赦ください」


 なんかそれちょっと前に聞いた気がするんだけど!?


「彼ならライラ様と並んでも見劣りしないどころか、一枚の絵画のようにお似合いだと思いますわ」

「そうですわね。美男美女と言っても足りないほどですわね」

「まったくです。色味もまるで一対のようで」


 いや、私の色味はオルクスとお揃いだからそれを言うとオルクスとも一対になるわけなんだけど?

 しかし色味が一対?


「私達にも紳士な対応を崩しませんが、主であることを除いてもライラ様への態度は何と申しますか、甘いですわよね」


 うっとりとロザリナ様がいうとリリス様とクラリス様が頷く。

 だが待って欲しい。

 従者ってどっちの事だ?


「姫様、私はちょっと彼が可哀想になりましたので、今日は優しく接してあげようと決意しました、多分」


 私にわかるように話そう!?

 皆で私をのけ者にして話を進めるのはやめよう!?

 いや、従者なんだからヴァンスかイオリのことなんだよね?

 そう思って隣のテーブルに座って食事をしている二人を見ると、ばっちりヴァンスと視線が合って心臓がキュウってなった。

 おっかしいなぁ、この体は健康体のはずなんだけど?


「姫様、お顔が赤いです」

「え? あ、いや、これはそのっ」

「あらあら、まあまあ! もしかして恋の目覚めの瞬間に私は立ち合えましたの? 素敵ですわ! 物語みたいですわね!」


 ぴぇっ、恋の目覚めとかなにその甘酸っぱい言葉。


「わ、私はそんなっ」


 あわあわと赤くなった頬を手で覆って隠そうとしてみたけど、なんかこの仕草って少女漫画でよく見るパターンなんじゃ?


「ふふ、ライラ様は初心でお可愛らしいですね」


 クラリス様のほうがピュアッピュアですからぁっ!


「羨ましいですわ。本当に私もちゃんとした恋がしてみたいですわ」


 ロザリナ様が手を胸の前で組んで目を輝かせると、そのタイミングでデザートが運ばれて来た。

 レモンシャーベットを食べていると、ふとロザリナ様が飾りに使われているレモンを見る。


「小説で読みましたけど、ファーストキスって本当にレモンの味がするのでしょうか? 興味がありますわ」

「っ!」


 その言葉にリリス様がむせそうになったのをこらえてから何食わぬ顔でスプーンを動かす。


「特に味はありませんでしたね」

「まあ! クラリス様はすでに体験がおありなんですのね!」

「婚約式の際にしてくださいました」


 僅かに頬を赤らめて言うクラリス様かわゆすっ!


「いいですわね。私はきっとそういう経験がないままに政治の駒になる運命なんですわ」


 いや、それはそれである意味物語の主人公っぽいけどね。

 でも王女様なんて政治の駒になることを覚悟で生きていくのが普通(・・)よね。


「でも、リリス様を見ていると希望が持てますわ」

「わたくしで希望ですの?」

「だって、ジンジャー様と相思相愛ではありませんか。私も婚約者が出来たら相思相愛になれるかもしれませんわ」

「そうですね、リリス様は王女として理想ですね」

「ふふ、そうかもしれませんわね」


 顔を赤らめて微笑むリリス様、美しいなっ!


「きっとジンジャー様はリリス様が婚約者をお持ちになっても、傍で支える覚悟を持って過ごしていらしたのですわ」


 いきなりどうしたロザリナ様。


「けれどもやはり婚約者の隣で微笑んでいるリリス様を見続けるのがつらくて留学をなさったのですわ。もちろん、外交的な意味合いでリリス様のお役に立つという目的もあったのでしょう」


 う、うん……概ね合ってるかもしれない?


「しかし耳に入る噂やリリス様からの手紙で、リリス様の婚約者が不貞をなさっていると知り、居てもたってもいられずご帰国なさったのですわ。そして、愚かな婚約者はリリス様に婚約破棄をされ、正統なる後継者のリリス様の王配としてジンジャー様が名乗りを上げたのですわね!」


 ……あー、なるほど。

 いい所をかき集めてリリス様側の美談に仕上げるとそうなるのね。


「高等学院ではリリス様とジンジャー様は政略的な婚約で、その間には愛など存在しないという噂もありますけれど、実際は真逆の相思相愛の婚約者なんですのね!」


 うっとりと言うロザリナ様の声はよく通る。

 そもそも私達は注目されて、会話の内容にはさりげなく聞き耳を立てられている。

 何が言いたいかって?

 今まさに目の前で、ロザリナ様が噂の操作をしたんだよ。

 魔王の娘の目の前で自国と他国の要人が堂々とはっきり「リリス様とジンジャー様は相思相愛」と宣言した。

 これで二人の間には愛がない冷めた婚約者なんて言う人が居たら、世情を理解できない無能と名乗っているのと同じ扱いをされる。

 おっかしいなぁ、私はクラスメイトと恋バナしてただけなのに、噂操作に一役買ってしまった。


 昼食後、午後の授業と言う名のお茶会を終えての放課後。

 ロザリナ様が操作した噂はすでに貴族科中に広がっていた。

 何この速度……。


<ロザリナ様に借りを作ってしまいましたわ>

<そうなんですか?>

<わたくしとジンジャー様の仲についての噂は態度で徐々に払拭していく予定でしたのよ>

<ああ、そこをロザリナ様が強引に噂を変えちゃったんですね>

<同盟を結んでいない国でもありますし、ライラ様と親しくなるという目的以外にも我が国との関係についてなにか言われてきたのかもしれませんわ>

<大変ですね>


 お偉いさんって気苦労が絶えないよね。

 いやぁ、私はお偉いさんじゃなくてよかったわ。

 魔王の娘だけど跡継ぎでもなんでもないし、オルクスの態度を見ると政略とかに使う気なんかなさそうだもん。

 むしろ私を政略的にとか言い出した人が死ぬね。


<弱小国の悩みですわね>

<ペオニアシ国ってそこまで弱小ではないような>

<前国王のせいで国力がだいぶ弱くなっておりますもの、弱小国ですわ>

<あー、国土の約半分は貧困状態ですもんね>

<結局シオンが転生者か確定出来ませんでしたし、仮に本当に転生者だとしても最悪ですわ>


 リリス様、気苦労多そうだけど、ジンジャー様が居るから大丈夫なのか?


<高等学院に入ってから確保しようとしていた人材も思うように集まりませんし、どうしたらいいのやら>

<あらら、そうなんですか? でも有能な人は結構確保済みですよね?>

<高等学院から登場する方々は基本他国からの留学生か、留学から帰ってきた方々でしょう? 王室関係で出会うことが出来る方々は事前に確保済みですので、それ以外の方が難航しておりますの>

<冒険者とかもいましたよね?>

<山賊やら海賊もいますわね。海賊の方は既に確保済みで海運を任せていますが、山賊の方は軍部を使って駆除ずみですわ>

<駆除ですか>

<調べた結果、思った以上に腐っておりましたの>

<あー>


 義賊ならまだ救いはあったけど、まじもんの犯罪者集団だったのね。

 それは味方に引き入れない方がいいわ。

 いや、ある程度の能力とプライドがあればリリス様ならこっそり使いそうだから、それすらなかったのかぁ。

 山賊系の攻略対象は私はやってないからわかんないんだよね。

 プレイスタイル的にも山賊系のユニットは使わなかったし。

ジャンル恋愛さんが息をし始めました!


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こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。

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― 新着の感想 ―
[一言] これ、ヴァンスに死亡フラグ立ってないですか? お色気担当結構好きなんで、彼、大丈夫ですよね?!!(汗)
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