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魔素病6

※<>内の言葉は日本語です。


「なるほど、流行病の原因が魔力、いえ魔素ですのね」


 翌日、私の話を聞いたリリス様たちが絶望的な表情を浮かべた。

 ですよねー。

 病原菌とかならまだ対策が取れるけど、大気中や飲食物に当たり前(・・・・)に存在している魔素を取り込まないなんて無理だもん。


「耐性をもつ血統も居ますが、それを広めるには何世代必要なのかもわかりませんわね」

「確かに魔法師は流行り病に罹患しても治りが早い気がしますね」

「貴族の症状が軽いというのも、魔法を扱える血筋を貴族が取り入れることが多い事を考えれば納得がいきますね」

「魔法を使える人が増えればその分流行病の被害者は減りますが、これまでも魔法師を増やそうと様々な努力はしてきましたが、人間で魔法を使える人はなかなか増えませんよね」

「人間の器官で魔力を操作する事が難しいんですよね。ボクも含めて魔法の扱いに長けている人の多くは先祖のどこかに魔族の血が混ざっていると言われています。純血の人間でも魔法を使える人は存在していますけど、突然変異とか言われてますよ」

「魔法は魔族の特権とも言われますものね」


 スタンス様の言葉にリリス様がどうしたものかと考えるようにため息を吐き出した。

 魔法を使う以外で魔素を常時放出する方法があればいいけど、ないよねえ。


「祈りでも魔力を使用するというのであれば、誰であっても常時魔力を放出することが出来るはずですのよ」

「でも祈りでどうやって魔力を使用しているかわからない以上どうしろと? 年がら年中神に祈らせるとでもいうんですか?」

「そんなバカな事は言いませんわ」

「自然治癒に無意識に魔力を使用するのが火事場の馬鹿力と考えればある意味納得がいきますね」

「けれども手軽に魔素を放出する手段が不毛地帯の石となると、入手は困難ですね」

「魔族ですら弱いものは消滅する可能性がありますからね。人間だとひとたまりもないと思います」

「その石以外で魔力を吸収するものってなにかありますかね?」


 ジンジャー様の言葉に全員が難しい顔をする。

 あったらとっくに、と言うのがここに居る全員の本音だろうけど、それを言う空気じゃないんだよね。


<『フルフル』みたいに魔晶石を作れればいいんですけどね>

<あれは妹姫(ヒロイン)のステータスが上がって魔法を使えるようになってから解放されるスキルで……いえ、可能かもしれませんわ>

<へ?>

<魔晶石をステータスが低い状態の妹姫(ヒロイン)が作れないのは、魔力も低いからですわ>

<そうなんですか?>

<それに加えて、魔法を使う指南役の攻略対象に魔晶石の作り方を教わる事でスキル解放されますので、つまり、塵も積もれば山となるのではありませんこと?>


 どういうことだってばよ?


<必要なのは魔石と、その魔石に魔力を流し込む方法ですわね。けれども普通の人間ではそれは放出する魔力量が少なすぎて魔石がそもそも魔力を受け付けないのですから、浸透率を高める魔道具が必要ですわ>


 リリス様、私にはリリス様の言っていることがよくわからないんだけど……。


<浸透率を高める魔道具の開発は……魔国に依頼するのが一番ですけれど、魔王陛下が簡単に頷くとは思えませんわね>


 そうだねぇ、魔道具開発大好きな魔族は大勢いるけど、そういった魔道具を新しく輸出するかとなると話は変わってくるのよね。


「人間の国でもっとも魔道具の開発が進んでいる国となると……アルジオ王国ですわね」

「そうですね。ですが、魔道具は魔晶石をエネルギーにするので人間の魔力は関係ないと思いますよ」

「魔力の浸透率を上げる魔道具を開発販売していただきたいのですわ」


 リリス様はそう言ってアルジオ王国からの留学生であるシルビア様を見る。


「使用目的をお伺いしてもよろしいでしょうか? 流石に無意味に作るほど我が国も暇人ばかりではございませんの」

「魔晶石の作成スキルを持たない、自然放出魔力の少ない人間でも魔晶石を作れるようにするためですわ」

「リリス様、仮にその魔道具が出来たとしても使用できるのは魔力放出(・・・・)が出来る人のみですよ。自然に放出される魔力で魔石を作れるほどにする魔道具など、道端の石ころを金塊に変えるようなものです」

「もちろん一人の自然放出魔力で作ろうとは思っておりませんわ。何百人もの人の自然放出魔力を長年溜め込めば如何でしょうか? 体内の魔素の放出方法さえ誘導できれば不可能ではないと思いますわ」


 ああ、それで塵も積もれば山となるなのね。

 でもそれってコスパクッソ悪くない?

 いや目的自体は流行病の発症を防いだり症状の緩和だからコスパは度外視なのかな。


「リリス様、そもそも魔力放出を出来るようになるかが問題でしょう」

「そこは専門家を雇って教育をしていくしかありませんわね」

「血筋か余程の才能に恵まれないと魔力放出は難しいですよ。普通の人間に可能なんですか?」

「わたくし達は国を導く立場ではありますが、全て(・・)は救えませんわ」


 リリス様の言葉に全員の顔つきが変わった。

 おお、流石は国を背負う若者たちだなぁ。


「教育に関しても、魔道具に関しても見通しがつきませんね」

「覚悟の上ですわ」

「しかし魔力(魔素)を放出となると魔法に長けた人物による指導が必要ですね」

「そうはいってもそもそもの才能がゼロだったらどんなに教育したところで伸びしろはありませんよ」

「魔力はだれであっても保有しているのなら可能性はゼロとは限らないのではありませんか?」

「無意識にでも魔力を放出している人間なら可能でしょうけど、それも出来ない人間にはそもそも無茶ですよ。魔法とはそんな簡単に使用できる物じゃないんです。魔力放出なんて魔法の基礎なんですから、言ってしまえば魔法の基礎を教えるような物です。才能の無い人に魔法を教える事を魔法師は好みません」


 時間の無駄は魔法師にとってもっとも忌避したいことだと言うスタンス様に、皆がため息を吐き出す。

 原因と解決の糸口が見つかっても、そこに辿り着けるかは微妙なんだよね。

 前世でも治療薬の開発、動物実験、治験を繰り返してやっとそれが軌道に乗るのは何年もかかるんだもん。

 効果が出るのかが分かって、最終的な副作用がどうなるのか寿命はどうなるのかなんて、その薬や治療法を行った人が死ぬまで(・・・・)わからないからね。


「とりあえず、数か国で流行り病に付いて論文をまとめて正式に発表しましょう。魔王陛下の後押しがあるのであれば信頼度は増します」

「そうですわね、ここに集まっている方々の国での研究結果やデータ以外も集めた方がいいですわね。皆様の伝手で声をかけていただけるとありがたいですわ」


 リリス様のまとめで流行り病についてはひと段落したかな?

 でも本当にこの流行り病への対策は何年がかりになるんだろう。

 そんでもって、この流行り病による死者数が減少したら、リリス様の政策で人口過多になるんじゃない?

 あー、でも人間って出産も命がけだからな……。

 リリス様の政策はそういう所も考えての産みの親(・・・・)なのかもしれないな。

 人口のバランスをどうとるかについては難しそうだな。

 私に知識チートがあればアドバイス出来たのかもしれないけど、ないし。

 もしかしてリリス様の前世はそういう分野の有識者だったのかも?


「ともあれ、今まで名前の無かった流行り病は『魔素病』とでも名付けましょうか?」

「安直ですがわかりやすくていいと思いますわ」


 その後、異例ともいえる数の国が参加してのレポートが作成され、『魔素病』については原因が周知されたものの、解決の糸口並びに耐性を持つ人間がいる事については研究中ということで伏せられた。

 人間って自分より優れた部分があるってわかると、自分側が不利にあるほど有利な方を妬んだり僻むもんなぁ。

 それが個人の心の中だけで収まればいいけど、集団で爆発したら暴動ものよ。

 まあ、伏せたのは各国の首脳陣の苦肉の策かな。

スクールライフどこぉ?(;´Д`)

私は政治のお話を書きたいのとちゃうねん、女の子たちが仲良くキャッキャウフフしたり男女の恋愛書きたいねん。゜(゜´Д`゜)゜。

今度こそライラとリリスが正式にお友達に!?


あ、登場人物紹介を何気に更新しました!


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こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。

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― 新着の感想 ―
[一言] >>今度こそライラとリリスが正式にお友達に!? おお、両片思いでじれじれもだもだしていた二人がついに両思いになるのですか。 お互い思い合っているのに告げられないというのは王道的な展開ですが、…
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