栄えある舞台()4
※<>内の言葉は日本語です。
「そういえばご紹介がまだでしたわね。ライラ様、あそこで愉快なお芝居を披露している男性が現在のペオニアシ国王ですわ、青年の方はロマリス公爵子息のジルド様ですの」
「まあ、そうだったんですか。今まで紹介もなかったですし、いきなりお芝居を始めるから本当に驚きましたけど、国王自ら演じるなんて面白い国ですね」
「ふふふ、魔王の姫君であるライラ=ブランシュア様の前で緊張して勇み足を踏んだのかもしれませんわ」
「そうなんですか? てっきりまた私の事が分からずに好き勝手にしているのかと思いました」
「その件ですが、ロマリス公爵家に問い合わせたところちゃんと家人にライラ様の事を伝えたそうなんですの」
「まあ! それは不思議ですね、ジルド様は私の事を知りませんでしたよね?」
「わたくしも不思議ですわ。けれども、家族が集まるディナーの席で他の家族と一緒にライラ様に付いて話を聞いたとの事ですわ。ああ、そういえばその日はシオンがジルド様を夜のパーティーにお誘いしていましたわね。そちらで頭がいっぱいだったのかもしれませんわ」
「ディナーの後のパーティーですか?」
「他のシオンのお友達も参加なさったそうですわ」
「あらまあ! 未婚の男女が夜半になるような時間に一緒に居るなんて、もちろん保護者は居ましたよね?」
「それが、シオンが友情を深めるから邪魔をしないようにと人払いしたそうですわ」
リリス様の言葉に侮蔑の視線がシオン様達に向けられる。
「でも太陽の宮で行われたのなら当然ペオニアシ国王は承知の上ですよね?」
「そうだと思いますわ。自分の娘に有らぬ噂が広がるかもしれないのに許可を出すなんて、わたくしは信じられませんが、実際に起きた事ですのよ」
「まさかシオン様の婚約者も参加してたんですか?」
「そのようですわ」
「随分と寛容な人なんですね」
自分の婚約者が自分を含めた異性と婚前交渉をしているなんて噂を広める状況を作るとか、ないわー。
いくら女王になる可能性があったとしても、女王になるのが確定する前で結婚前に情事にふけるなんて噂が広まるとか、ないわー。
シオン様の婚約者があえてシオン様を失墜させようとしてるんならわかるけどね?
「お姉様ってばぁ、もしかして羨ましいんですかぁ?」
シオン様がにやっとした顔でそう言うと、ジルド様がニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべた。
「自分が相手にされないほど醜いからってぇ、可愛いシオンに嫉妬しちゃってるんですかぁ? でもぉ、お姉様じゃあ皆を満足なんてさせてあげられないですよぉ、だってぇ、お姉様みたいな醜悪な人にはぁ魅力なんてぇこれっぽっちもありませんからぁ」
「いやいやシオン様、リリスだって女の端くれですよ。崇高なる女神のシオン様の足元にも及びませんが、ああいう手合いを屈服させるのも一興かもしれません」
「やだぁ、ジルド様ってば天才ですねぇ。役立たずのお姉様でもぉ、それなら皆の役に立てますぅ」
「ああそれはいいな。最近軍部の連中が言う事を聞かなくなってきたところだ。血筋だけは立派な悪女が慰み者になると志願すれば、あいつらも喜んで改めて忠誠を誓うだろう」
うわ、自分の娘を慰み者にするってはっきりいったよこの愚王。
「おかしいですね、もしかしてお芝居はまだ続いているんですか?」
「ちょっとぉ、さっきからお芝居とかなんなんですかぁ? シオンがせっかく来てあげてるのにぃそう言う態度ってぇよくないですぅ。お姉様の取り巻きってぇ本当に性格が悪い人ばっかりで嫌になっちゃいますねぇ」
「もしかして、お芝居じゃないんですか?」
「当たり前じゃないですかぁ、シオンの事馬鹿にしてるんですかぁ? ひどいですぅ!」
「なんてこと! ではシオン様達はお芝居というサプライズでもないのに、勝手にお茶会に乱入して、私が許可をしていないのに大声でしゃべり始めたんですか?」
「シオンが話すのにどうしてあなたの許可が必要なんですかぁ?」
「逆にどうして許可が必要ないと思うんですか?」
「だってぇ、シオンはこの国の姫ですよぉ。一番偉いんですぅ、お父様だってそう言ってますしぃ」
「つまり、ペオニアシ国王やシオン様達はこの私よりも立場が上と、ペオニアシ国王が言ったんですか?」
「そうですよぉ、偉そうな魔人でもぉこっちは滞在させてあげてる立場なんだからぁ、そっちがわきまえるべきだって言ってますぅ」
「まあ、そうなんですか」
「そもそもぉ、滞在させてあげてるのにぃ挨拶にこないとかぁふざけてますよねぇ。常識って言うものを知らないんですかぁ? 魔人ってぇ力ばっかりひけらかす馬鹿なんですかぁ?」
「それもペオニアシ国王がそう言ったんですか?」
「そうですよぉ。あとぉ、私がせっかく魔国から魔晶石を買ってあげるって言ったのにぃ、輸出を断るとかぁ何様って感じですぅ。シオンに使ってもらえるんだからぁ、無償で喜んで差し出すべきですよぉ」
その言葉にお茶会に参加している令嬢達が一斉にシオン様を睨みつけた。
今のこの場に居るのは魔国と取引の無い国の人か、ペオニアシ国の貴族令嬢だもんね。
取引の無い国の人は現在進行形で必死に魔国と交易の交渉をしている所ばかりだから、シオン様の発言は許せるものじゃない。
ペオニアシ国の令嬢もこの国が魔国と交易出来ないのはこの態度のせいだと思い込む。
「いやだわ、シオン様の身の程知らずの言葉はてっきり母親譲りなのかと思ってましたけど、父親の教育も悪いんですね。リリス様のお母様が優秀だったということがわかります」
あからさまに馬鹿にしたようにペオニアシ国王を見て笑う。
「ちゃんとした妃教育も成せなかった母親をもってお気の毒だと思っていましたけど、真っ当に子供の教育が出来ない父親と一緒に暮らしているなんて、シオン様もお気の毒ですね」
「なんだとっ! 大人しくしていれば小娘がつけあがっひっ」
ペオニアシ国王が喚いた瞬間お茶会の付き添いで来ていたノーマが、ペオニアシ国王の喉元にナイフを突きつけた。
おお、流石ノーマ。殺さないで牽制するあたり常識があるわ。
「姫様の前でみっともない悲鳴を上げては愛らしい耳を穢してしまいます。お前は姫様の目の届かないところでじっくり身の程を分からせる必要がありますね」
あ、ないわ。常識ないわ。
「そもそも、誰が姫様の前でその薄汚い口を開いていいと許可したのですか? 姫様はこの世界で最も尊きお方。その目でお姿を見ることが出来るだけでも一生分の幸運を使ってもあまりあると言うのに、まさか姫様の前で無礼を働くなど髪の毛一本存在する意味はありません」
いや、魔人にとって最も尊いっていう対象はオルクスなんじゃないかなって私は思うんだよ。
私の専属はそう思ってない人が多いけど。
「わ、わたしを誰だと思っている、こ、っくおうだぞ!」
「それがなにか? このような国、私共がその気になれば一晩で消滅してしまう程度の物です。今回は姫様が興味を持ってくださったから滞在してあげているのです。立場をわきまえなさい、愚物が」
「ちょっとぉメイド風情がお父様になにしてるんですかぁ? 主人が主人ならぁメイドも躾がなってないですねぇこれだからやばっきゃぁっ」
シオン様のドレスがザンッという音と共に左右に裂けた。
それはもう見事なまでに胸元からスカートのすそまで綺麗にぱっくりと。
慌てて裂けた布を寄せようとするシオン様だけど、その度にどんどん生地が散っていく。
「な、なんなのよぉ」
もう手繰り寄せる布も無くなったところでシオン様が泣きながら走り去っていき、ジルド様が慌ててそれを追いかけていった。
「ペオニアシ国王」
「ヒッ」
「あら、そんなに怯えないでください。でも、今回の件は私から父にちゃんとお話しさせてもらいますね」
今度こそ王位剥奪かな?
にっこりと言うとペオニアシ国王はその場で泡を吹き出して気絶してしまった。
<三文芝居の幕閉じにしてはなんというか……>
<役者が悪いのでしかたがありませんわ>
<これ、リリス様が女王就任の流れですか?>
<一応中継ぎで叔父様が仮即位すると思いますわ>
そこで私とリリス様が視線を合わせてため息を吐き出す。
<<RTAにしてもないですね(わ)>>
前哨戦はともかくとして、本格的に『フルフル』がスタートしてまだ一週間しか経ってないんだけどなぁ。
妹姫側が駄目すぎてRTAに(;´Д`)
ま、まだ姉姫陣営の人出せてないのに(´;ω;`)
しばらく妹姫陣営のざまぁ視点ですかねぇ?
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こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。




