タタトル茶の効果2
※<>内の言葉は日本語です。
甘ったるいって言うほどの甘さはタタトル茶ではないはずだから、本当に砂糖を入れまくった可能性があるな。
でも王城の、しかも仮にも太陽の宮に仕えているメイドが茶葉の量を間違えるなんていう、しかもそれを誤魔化すために砂糖を大量投入するなんてありえるの?
「ジンジャー様、そのお茶は誰が淹れましたの? 城仕えの者がそのようなお茶の味を損ねる物を出すなんて信じられませんわ」
「ああ、お茶はシオン様が淹れていましたよ。なんでも、「お姉様と違ってぇシオンは自分でできますぅ」とか言ってましたね」
「わたくしもお茶でしたら当然自分で淹れられますけれども、いえ、それよりもシオンが自分で淹れたのですか……」
「リリス様、つかぬ事を聞きますけど、シオン様が自分で何かをするなんて聞いたことは?」
「ありませんわ」
「やっぱりそうですよね」
私は二回しか会ったことがないからなんともいえないけど、あの性格のシオン様が自分の身の回りのことをやるとは思えないんだよね。
「お茶を淹れる手付きもおぼつかないし、蒸らす時間なんてこれっぽっちもないし、お湯を入れて茶こしを使ってカップになみなみと注ぐから、正直飲むときに困ったものですよ。それも一口で無理だと思える味でしたしね」
「それは……」
思わずリリス様と一緒に絶句してしまう。
淑女マナー付け焼刃の私でもそんな事はしないぞ?
茶葉をケチっただけかと思ったけど、もしかして成分を抽出しきる前にカップに注いだんじゃない?
タタトル茶は確かに好感度アップの効果は少量しか見込めない品物で、どちらかと言えば好感度を上げる目的よりも、下がり始めてしまった好感度を維持するのに使われることが多かったアイテムだ。
しかも前世のリアルマネーで300円の割には一気に六人の好感度を少量アップできるという事で、頻繁に購入されていたとも聞く。
でも、この世界の現実問題として、タタトル茶はある国の特産品の為その国と公的に輸出入の無いこの国では高級品のはず。
『フルフル』では交易国の一つだから手軽に入るっていう設定だったけどね。
ちなみにリリス様の治める北側の領地では個人的に交易をしている国だから、そこまで入手が困難な茶葉ではないらしい。
とはいえ平民が気軽に入手できる値段の物じゃないので、貴族が特別なお茶会に特別に振舞う品物として使用されている。
そんでもって、シオン様は今回お金をかけてタタトル茶の茶葉を入手したのはいいけれども、ちゃんとした工程を行わずにお茶を振舞ったせいで、折角のタタトル茶の効果がなかったわけだ。
しかも自分の好みなのかは知らないけど、勝手に砂糖を大量に入れたというわけね。
<てっきり初対面のお茶会は好印象までとはいかなくても好感触ぐらいにはなると思ったんですけどね>
<わたくしもそう思いましたけれども、タタトル茶は淹れる際に通常の茶葉よりもコツが必要ですの。シオンは知らなかったんですわね>
<コツですか?>
<ええ、元々甘い花の香りと味がするお茶ですので、砂糖などの甘さを増やすものは絶対に使用してはいけませんの>
<使用すると?>
<効果が無くなりますわ>
<あらま>
<そもそも、あの花の香りと味に効果があるのですもの、それを消すように甘さを増やせば意味はなくなりますわね>
リリス様の言葉に納得してしまった。
そこでノーマに視線を向けてその後にチラリとドルドア様ともう一人の攻略対象を見れば、ノーマは軽く頷いてスッと私達から離れて二人に声をかけに行ってくれる。
<あの方まで引き込みますの?>
<ちょっとお話して様子を見ようと思うんですよね。ほら、あの人ってアレじゃないですか>
<そうですわね、アレさえなければぜひとも引き入れたいのですが、いかんせんアレなので正直迷っておりますの>
<優秀ではありますよね>
<損得勘定も出来ますわね、とくにアレに関しては>
<シオン様側であの人が満足できるほどのアレを用意は出来ないと思いますし、引き込めはすると思いますよ?>
<アレに付いていける人がいるかが問題ですわ>
<否定はしないですけどね。個人イベントや個人エンディングでもアレですし>
そこまでリリス様と話してお互いに遠い目をしてしまう。
顔はいい、能力も申し分ないし性格も一点を除けば問題はない。
しかし、その一点が大問題な攻略対象。
「何か御用ですか、ライラ姫様」
「こんにちはドルドア様。なんだか久しぶりですね」
「そうですね。魔国ではライラ姫様の誕生記念祝賀会ぐらいでしか会えませんでしたしね」
「記念祝賀会……結局毎月しましたね」
「愛されている証拠ですよ。いやまあ、些か度が過ぎているとは思いますが」
「止めて欲しいって言うと室温が下がるんです」
「心中お察しします」
とはいえ、毎回全ての族長が来るわけじゃないから、族長的にも互いの親交を深める丁度いい会合代わりだったらしいんだけどね。
精霊族の族長は本当に引きこもり体質らしくて、半年に一回参加すればいい方で、その度にエルフ族の族長に付きまとわれては早々に退席してたな。
エルフ族の族長、黙っていれば、いや、精霊族の族長に関わらなければまさに貞淑な淑女っていう感じなのに、人って変わるものだよね。
魔族だけど。
「そちらの方は初めてお会いしますね。魔王の娘のライラ=ブランシュアです」
「お初にお目にかかります、アンブロス王国第三王子のスタンス=レジェック=アンブロスです」
このスタンス様こそ第一貴族科に所属する三人目の攻略対象。
人間の中では珍しく魔法の力が強い国の出身で、自身もたぐいまれなる魔力を持ち既に祖国では次期魔法省の長になることが決まっている存在。
そして、生粋の魔法マニア。
普段は冷静沈着クールキャラなのに、魔法に関することになるとぶつぶつ早口でまくし立てるという残念な性格。
ギャップ萌えと初期は暖かく迎え入れられるものの、恋愛イベントの全てがオタクモード全開という残念仕様で、能力は買うけど恋愛対象としてはちょっと、と人気上位に食い込めないキャラクターだった。
「二人もシオン様のお茶会に出席したんですよね。どうでした?」
「「あー」」
私の質問に二人は何とも言えない表情で声を漏らした。
「僕はああいうお茶会は遠慮したいですね。淑女のお茶会は戦場とは聞きますがあれは戦場と言うよりは独演会でしょうか」
「ボクも同意見です。ひたすら自分が如何に可哀想か、リリス様が悪人なのか、そしてそれに負けずに一生懸命がんばっている自分が如何に素晴らしいかをひたすら話していました」
「出されたお茶は飲みましたか?」
「ああ、あのまず……ではなく独特な味のお茶ですか。僕の口には合いませんでした」
「タタトル茶はボクの国でも特別な時に飲まれる物ですが、あそこまで台無しに出来るのは一種の才能ですね」
ドルドア様、精霊族の族長に徹底的に紳士教育を施されたのにまずいって言いかけたって事は、よっぽどまずかったのか。
いや、精霊族の食事は美味しさもそうだけど作り手の心も反映される料理だから、それに馴染んじゃったせいで下心満載のシオン様のお茶がまずく感じたのかも。
そんでもって、アンブロス王国でタタトル茶が飲まれているというのは初耳だけど?
<リリス様は知ってました?>
<いいえ、タタトル茶はアンブロス王国では採れない茶葉ですので知りませんでしたわ。けれども国交がないわけではないと聞きますから、交易品として取引されているのかもしれませんわね>
その言葉になるほど、と頷く。
ペオニアシ国の国交や交易のある国は確認済みだけど、その他の国まではそこまで調べてないもんな。
アンブロス王国は魔国との取引もないし、完全に確認の範囲外だったわ。
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