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お茶会の陣5

 オルクス達の所に行くと、すぐさまオルクスが私の傍に来て腰に手を回し守るように抱き寄せる。


「何を話していた」

「うーん、思い出話?」


 『フルフル』に関する事なので嘘ではないが、正解でもない。

 とはいえ、乙女ゲームの事を話しているとはいえオルクスにリリス様との会話を全部教えるのもどうかと思う。


「アレがライラの言っていたヒロインだな?」

「そうなのよ。ちょっと……だいぶアレだけど」


 チラリと目を向ければ、リリス様に向かってギャンギャンと喚いているシオン様が居て、ヒロインとしてあの態度はいただけないとげんなりしてしまう。

 リリス様が色々動いているのがまったく関係していないとは言い切れないけれども、少なくとも正規(・・)妹姫(ヒロイン)の姿ではない。

 そうなると、妹姫(ヒロイン)の方もシナリオ外の事が起こっていると考えるのが妥当だよね。

 簡単に導くことが出来るのは彼女もやはり転生者で、自分の有利に動くように彼女なりに動いているという事だ。

 もっとも、継承権争いと言う点、少なくとも政治面においてはボロボロのようだけれども、つめの甘いお坊ちゃんの攻略や一部の人間にありもしない噂を流すことは成功してるようだ。

 彼女の功績と言うよりは、リリス様をよく思わない一派もしくは傀儡にしたい一派の手助けもありそうだけどね。


「そこの専属従者が出なければ処分させても良かったんだがな」

「うん、そうならなくてよかったわ」

「まあいいだろう。用事は終わったな、戻るぞ」

「はーい」


 そう言ってオルクスが私の腰に手を当てたまま進もうとした瞬間、背後から叫ぶように声をかけられた。


「待ってくださいよぉ! シオンはまだ帰っていいなんて言ってないですぅ」


 はぁ? なんでお前の許可が必要なんだよ。

 思わずそんな言葉を出しそうになって、咄嗟に淑女の笑みを張り付けてこらえる。

 ゆっくりと振り向けば、「怒ってるんだから」とでも言いたそうに頬を膨らませたシオン様が居て、その背後ではリリス様が額に手を当ててうつむいている。

 そうですよねぇ、こんな行動を魔王の娘にしちゃったらそんな反応になるよねぇ。


「申し訳ありません。私はリリス様に招待を受けてここに来ています。そのリリス様と本日のお茶会は終了と合意しましたので帰りますが、何か問題でも?」

「だぁかぁらぁ、貴女は帰ってもいいですけどぉ、そこの魔国の王様はぁシオンが相手をしてあげるからぁ、帰るとか失礼じゃないですかぁ」

「……父は本日私の付き添いできています。シオン様にお相手をさせてあげる(・・・・・・)義理は何一つありません」

「そんなの関係ないですぅ。シオンが相手をしてあげるって言ってるんですよぉ。むしろ喜ぶべきですよぉ」


 シオン様は自殺願望がある人なのか。

 ちらりとリリス様を見れば、小さく頷いてくれる。


「失礼ですが、ペオニアシ国の継承権も持っていないただの姫如きが、魔国の国王に対して随分失礼な物言いですね」

「はぁ?」

「周囲に甘やかされてご自分の立場をご理解なさっていないようですが、ペオニアシ国は魔国と比べれば格下。比べるのも烏滸がましいほどに格が違います」

「何言ってるんですかぁ? わけのわからない事言わないでくださいよぉ。こっちはこの国に滞在させてあげているんですよぉ」

「現実がわからないんですね。今この場でシオン様を無礼打ちにしても、ペオニアシ国は私共を責め立てることなど出来ません。だって、シオン様は魔王に無礼を働いているんですから」

「貴女みたいな訳の分からない人の言う事なんてぇ、信じるわけないじゃないですかぁ。魔王の娘とか言ってますけどぉ、シオンはそんな存在知りませんしぃ、色仕掛けで取り入ったんですかぁ?」


 その瞬間、シオン様の体が後方に思いっきり吹き飛んだ。

 うん、気絶したっぽいけどあれは死んでないな。私が気にかけているから一応手加減はしたのね。


「私の娘に対する侮辱、正式に抗議させてもらう」


 抗議と言う名のこの国(・・・)の死刑宣告じゃないことを祈るわ。


「妹が大変失礼いたしました。寛大なお心に感謝いたしますわ」

「リリス様、ご覧のように私の周囲はとっても過保護で過激なんです」

「そうですわね、よくわかりましたわ」


 しみじみと頷いたリリス様は大分疲れたように見える。

 そうだよねえ、魔王に無礼を働いて生きているだけで奇跡だけど、正式に抗議をするなんて宣言されちゃったら今後の事を考えて疲れちゃうよね。

 魔国から正式に姫君の態度について抗議されたと知られれば、少なくともシオン様の周囲の動きは変わるよね。

 なんといっても魔国を敵に回したらどうなるか、少し考えれば(・・・・・・)わかる事だもん。


「リリス様、高等学院ではぜひとも仲良くしてもらえると嬉しいです」

「それはこちらからお願いしたいぐらいですわ。どうぞよろしくお願いいたします」


 私とリリス様のやり取りを見て、オルクスがリリス様を見る。


「お前はまだまともなようだな」

「今後も精進いたしますわ」

「……先ほどライラと何を話していた」

「それは……」


 リリス様はチラリと私を見て、すぐに真っすぐにオルクスを見返した。


「乙女の秘密でございますわ」


 にっこりと淑女の微笑みを浮かべたリリス様。

 うん、正直オルクスに詰問されて自白しないだけで相当な胆力の持ち主だわ。


「……いいだろう」


 オルクスもそれ以上追及する事もなく、私の腰に回した手に力を入れるとそのまま月の宮の中庭を後にした。


 屋敷に帰ると着替えがてら幼女モードに戻る。

 お茶会自体は初めてというわけではないけれども、リリス様とは初対面という事もあって幾分緊張していたのは確かなんだよね。

 楽しかったし、有意義な時間でもあったけど、肝心な話が出来なかったな。

 しっかし、シオン様は本当によくもまあライバルであるリリス様が住んでいる月の宮に乗り込めたよね。

 魔国から客人が来ている、具体的には魔王とその娘が来ているっていうのは、王宮内で姿を目撃されているから、シオン様派の誰かがチクったのかもしれないけど、普通突撃してくる?

 あれだよね、自分にされたら絶対に許さないけど、自分がするのは許されると思ってるパターン。

 いくらこの国の国王に甘やかされているからってアレはないわ。

 むしろ、好感度爆上げアイテムを使われているかもしれないとはいえ、あのシオン様に攻略される攻略対象者たちって、まじでやばいんじゃ……。

 私って『フルフル』の中等学園内(・・・・・)で登場する攻略対象者は個人イベントしなかったもんなぁ、正直大まかなプロフィールはなんとなくわかるけど、詳しいかと言われたらさっぱりわからん。

 でも、中等学園で出会う攻略対象者の中で一番ステータスが高いリリス様の婚約者のジルドも、リリス様曰くお坊ちゃんだっていうから、他の攻略対象者ってまじで使えないんだな。

 まあ、前哨戦なんてチュートリアルみたいなものだし、登場する攻略対象者の能力はお察しなのかもしれないけどね。

 それでも努力次第で登場する攻略対象は終盤まで貴重な戦力になってくれる。

 リリス様はそう言う本気の実力者(・・・)はきちんと味方に引き入れてるよね。

 もらったお手紙の白紙だったものを眺めながら、順当にいけば継承争いはリリス様が勝つだろうとは思うけど、『フルフル』お得意の裏切りと逆転があるからなぁ。

 現実問題としてそう簡単に逆転なんて出来ないかもしれないけど、現実だからこそどうなるかわからない。

 リリス様はそれも考えて行動しているみたいだし、個人としては大丈夫だろうけど、ペオニアシ国は万が一シオン様が女王になったら……。


「傀儡国家か滅亡か」


 周囲がシオン様を手助けして導くと言えば聞こえはいいけど、要するに傀儡なんだよなぁ。

 今考えると、そもそも『フルフル』の妹姫陣営(ヒロインサイド)自体が味方につけた攻略対象の能力に、おんぶにだっこ状態だったよね。

 これはなかなか、のんびりイベントの覗き見を楽しむ状況がやってくるか不安だなぁ。

姉姫ことリリスとの顔合わせ&乱入者妹姫ことシオンとの顔合わせ(?)が終わりました!

次回からいよいよ高等学院開始!

ライラとリリスは今後も平然と日本語で話しますw


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こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。

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― 新着の感想 ―
[一言] ヒドインは辛うじて生き残ったけど、魔国からの正式抗議という(政治的な)致命傷を受けましたね。 国ごと滅んでもおかしくないことをしでかしたので、ヒドインに近付かなくなる者も増えそう。 一方で…
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