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いざペオニアシ国へ3

 さて、ペオニアシ国に滞在するとはいえ魔王の仕事がなくなるわけではなく、用意された屋敷に転移魔法陣がある事からわかるように、オルクスはペオニアシ国に居ながら魔国の仕事もする。

 この城に直通の転移魔法陣は悪用されないように制限が施されている。

 制限は簡単、使用許可が出ているかどうか。

 許可が出ている魔族の魔力で包まれた物体は転移魔法陣で移動できるけど、そうじゃない物体は転移できない。

 しかも転移魔法陣を使用する際は、結構な量の魔力を消費するようにわざと設定してある。

 まあ、魔王城に勤めることが出来るレベルの魔族なら何も問題はないんだけどね。


「明日からペオニアシ国に行くって考えるとドキドキするけど」

「何か問題が?」

「ペオニアシ国が魔王を歓迎する舞踏会を開くって提案したのを、あっさり断ったから大丈夫かなぁって」

「大丈夫ですよ。その程度で機嫌を悪くする国はそもそも魔国の取引相手として不合格です」

「それはそうだけどさぁ、魔王が他国に滞在するって初めてなんでしょ?」

「はい。だからこそ舞踏会など断ったのです」

「ほーん?」


 ペオニアシ国としては、世界で初めて魔王が滞在する国として他国を牽制したいから舞踏会を開くつもりだったけど、オルクスはあくまでも私の付き添いの考えだからなぁ。

 一応建前上は取引先相手として相応しいか見定める、ってことになっているけど、オルクスはペオニアシ国に魔晶石や魔道具を『魔国として』輸出する気はないみたい。

 個人的な商売は禁止しないらしいけどね。

 私はオルクスが来ないのはシナリオブレイクにはなるけど、意味が無いのに魔国を離れる必要はないって言ったのに、私が心配だからついてくるそうだ。

 親バカだよなぁ。

 転移魔法陣があるから、仕事的には変わらないからって他の人も止めないしね。


「陛下はあくまでも姫様主体で、ご自分は見守るだけのおつもりなのですよ」

「何もなければでしょ?」


 私が恨めし気に言うとネルガルが無言で微笑んだ。

 何もないように専属従者や専属メイドを伴っての入学なんだけど、送迎に関しては専属護衛騎士が行う。

 なんというか、お姫様待遇だよね。いや、魔王の娘だからお姫様ではあるんだけど。

 この三年間で慣れたとはいえ、目立つんだよなぁ。


「姫様が大人しくしていれば問題はないかと存じます」

「私個人としては目立つつもりはないんだけどね」

「「「「「無理ですね」」」」」


 声を揃えて言われて思わず顔が引きつりそうになるものの、教育の賜物の淑女の微笑みを何とか維持する。


「姫様は陛下の娘という事もありますが、その愛らしさは言うまでもありません」

「いや、ペオニアシ国では屋敷の外では外見年齢操作する予定よ?」

「どちらの姫様であっても誰もが目を引かれることに変わりがありません」

「確かに銀髪銀目は珍しいけど」

「ご自覚がないのでしたら、わたしが全身全霊で愛を囁かせていただきます」

「まじでやめろください」


 色気大魔神のヴァンスにそんな事をされたとオルクスに知られたら、血の雨(物理)が降るわ。

 ただでさえ私が外見年齢操作を出来るようになってから、オルクスが『訓練』と称して私の専属護衛騎士や専属従者を叩きのめしているのに。

 いやぁ、オルクス強いよねぇ。

 ハンディを付けても圧勝とか、なんだろうあのチート。

 『フルフル』でのステータスは過小評価なんじゃないかな。

 もしくは本気を出していなかったかだよね。

 ネルガルの話だと、取引相手の不正が発覚した際に誠心誠意謝罪するのではなく、開き直った態度をされた時、オルクスが暇をしていた事もあって単身(・・)で乗り込んでその国を滅ぼしたそうだ。

 ちなみに、現在もその国があった土地には人は住んでいない、というか住めない。

 未だに黒焦げの大地で草木一本生えていないそうだ。

 もちろん、魔法を使って土地の復活は出来るけど、魔国に所属している人がそんな事をする義理はないし、高い労力を使ってまでその土地を手に入れたいというところもない。

 もっともオルクスに滅ぼされた国は両手の指じゃ足りないから、世界共通認識としてオルクスは敵に回してはいけないっていうものがあるみたい。

 存在チートだもんなぁ。


「どちらにせよ、明日はペオニアシ国へ出立するのですし、本日は久しぶりにゆっくりお過ごしください」

「そうね」


 勉強するといった翌日から、休日なんてないスパルタだったもんね。

 食事もフルコースに変更になってカトラリーの扱い方をチェックされるし、休憩時のお茶の時間も仕草をチェックされる。

 気を抜くことが出来るのはバスタイムとその後のマッサージの時間のみ。

 窮屈な日々だったけど、お姫様やお嬢様ってこういう生活を送っているんだよね。

 素直に尊敬するわ。


「そういえば、姫様が提案した炭酸飲料ですが、素晴らしい売り上げですね。諸外国に製法を輸出しましたが、そちらも契約時に取り決めた売り上げの一部を魔国に渡すという部分で十分に収益を出せています」

「ちゃんとこっちに売り上げの一部を渡してくるよね。個人で作成して小売りした分に関しては不明なので、全ての売り上げの一部は渡せませんとか言ってくると思ってた」

「個人で作成し、無償(・・)での取引ならともかく、そこに金銭のやり取りが発生した場合、必ず(・・)記録して売り上げに加算すると契約していますよ」

「契約違反発覚時には違反した者を処分するって契約だもんね」


 もちろん、この世から処分するんだよ。

 他国へ製法を輸出し始めた直後は、いくつかの国とか個人が違反したんだけど、どこで調べてくるのかはわからないが即座に契約違反で処分された。

 みせしめとしては効果的だったらしくて、すっかり違反する人はいなくなったわぁ。

 自分の命は惜しいもんねぇ。

 正直、ほぼ病院生活だった前世の私の知識なんて大したものはない。

 知識チートで色々やっちゃうとか地味に憧れていたけど、世の中そんなうまくはいかないよね。

 炭酸の作り方に関しては、飲んだことが無いので憧れて作り方を検索したことがあるので何となく覚えてた。

 それでも魔王城の料理人と試行錯誤を繰り返して、最適な配合を作り出すぐらいに曖昧な知識。

 料理に関しても、私が食べても大丈夫な献立を検索してお手伝いさんに作ってもらうぐらいだったから、料理の経験もない。

 転生して色々な物を食べることが出来るようになったけど、記憶のせいかどうしても薄味で刺激物を避けるようになってるんだよね。

 前世でも飲んだことのないコーヒーは、転生してからも飲んだことは無い。

 あるのは知っているんだけど、どうしても刷り込みの苦手意識があるんだよね。

 ミルクだけを卒業してからは、紅茶も飲むけどメインはカフェイン控えめか、むしろカフェインレスのハーブティー。

 そのせいで魔王城の中庭の一角には広大なハーブ園が出来上がった。

 ここで知識チートがあればハーブをお茶以外にも使うんだろうけど、すまん、そんな知識はない!

 お手伝いさんからアロエは火傷にいいとか聞いた事があるけど、ハーブじゃないから植えてないしね。

 ハーブティーにもいろいろ効能があるとは思うけど、詳しくは知らない。

 看護師さんがおススメしてくれるのを通販で買ってただけだし。

 種類を覚えていただけ褒めて欲しい。

 ともあれ、今日は出立前日だから授業もないし、自由な一日だ。

 チャイティーを飲んでほっと息を吐き出すと、足元に居たリンがスリスリと身を寄せてくる。

 魔狐(まこ)は成長が遅いのか、約三年経ったけど外見に変化はない。

 私と一緒に魔法の訓練なんかをしているから、強くなっているとは思うけど、リンが戦っているのを見た事ないし、実力に関しては不明だよねぇ。

 まぁ、癒されるから何の問題もないけど。

 それにしても、ゆっくり過ごすと言われてもなにしよう。

 いや、ゆっくりだから何もしなくていいのかもしれないけど、約三年間勉強漬けだったせいで何もしないのは落ち着かない。

 だからといって勉強したいとも思わないし、淑女の嗜みなどをする気も起きない。


「よし、散歩しよう」


 だらだら寝るのも魅力的だけど、久しぶりにリンと遊びたい。

 思い立ったら即行動。

 すぐさま散歩の準備をして私専用の庭園に移動した。

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こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。

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[気になる点] 主人公に臣下はいっぱいいますが、友人と呼べる存在はいませんね。 今後姉姫と仲良くなるなら初めての友人枠になるのかな。 [一言] 個人的にはノーマには主人公か姉姫とくっついて欲しいなと思…
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