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生誕半年記念祝賀会6

 美形っていうのは、何を着ても似合うものなんだなぁ。

 専属メイドの服は身慣れているけど、私専属従者の服は初めて見る。

 とはいえ、オルクスの専属従者のものとそこまで差はないけれども、胸のブローチが私の専属という事を表している。

 しかし、三人分の制服をよくもまあこんな短時間で用意できたものだよね。

 予備はもちろんあるだろうけど、あつらえたみたいにフィットしてるって事は、少なくとも短時間の間にお直ししたんだよね。

 たまに思うけど、この城の使用人のスキルレベルおかしくない?

 物理的な意味でも、なんかおかしい気がするんだよねぇ。

 ナムタルにその事を聞いても「魔王城に仕える資格があるのですから、出来て当然です」みたいに言われたし。

 魔族が基本的に実力主義なのは知っているけど、底が知れない。

 その頂点に立つオルクスが、一番底が知れないけどね。

 三人が加わったことにより、私とオルクスの周囲に控える人の配置が換わる。

 とはいえ、新人という事もあって三人は並びの端の方だけど。

 いままで専属護衛は居たのに専属従者がいなかったのは、私に必要なかったからなんだけど、なんで護衛じゃなくて従者なんだろう?

 オルクスは私に何か仕事をさせるつもりなのかな?

 確かに、これから勉強をするとはいえ、魔王の娘が仕事もせずにぐーたらしてたら、外聞がよくないよね。

 私を気に食わない人に付け入る隙を与えるかもしれないし。

 とはいえ仕事か。

 前世の知識も一般常識程度だし、対人スキルはほぼないから、何か役に立てる事があるのかしら?

 ん~、今後それも勉強していくのかな。

 この世界に生まれて半年とはいえ、精神年齢はもっと上なんだし、外見年齢を操作できるようになったら、余計に何もしないっていうのは良くないよね。

 正直お姫様の仕事なんてわからないけどね!


「ライラ、例えば魔国に魔晶石を提供して欲しいという二つの国があるとする」

「うん?」


 なんだいきなり。


「二つの国は明確な戦争こそ起こしていないものの、情勢的に仲がいいとは言えず、何かのきっかけがあればいつ戦争になってもおかしくはない」

「ふーん」

「さて、その二つの国に魔国は魔晶石を提供するか?」

「私ならしないね」


 即答した。


「なぜ?」

「一つ、片方だけに魔晶石を輸出すればそれをきっかけに戦争が始まるかもしれない」

「うむ」

「一つ、両国に魔晶石を輸出してもそれをきっかけに戦争をするかもしれない」

「うむ」

「一つ、戦争が起こった場合、両国が『魔晶石』を理由に魔国に損害賠償をしてくるかもしれない」

「……なぜそう思う?」

「魔晶石がなければ戦争など起きなかった。そんな暴論を言う可能性があるでしょ?」

「あちらから求められ、こちらが提供してやったのにそのようなバカげたことを言うと?」

「可能性はあると思うよ。戦争をして国としてどこに利益が出るかどうかだけど、一番簡単なのは『負けた方からぶんどる』でしょ? だけど、それだけで戦争被害を受けた場所がすぐに元に戻るわけじゃないよね。あと、国内で出るかもしれない指導者側へのうっ憤を反らす必要も出るかもしれない」

「そうだな」

「でも、そこで魔国が魔晶石を提供したから戦争が起きた。って言えば、国民は多少なりとも魔国を怨むよね」

「身勝手だな」

「身勝手でも自分の立場を守る為なら十分にする可能性はあると思う」

「それで?」

「戦争によって被害を受けた地域はすぐに直せないけど、魔法があれば話はまた変わって来るよね」

「うむ」

「人間の中で魔法を使える人はあんまりいないし、居たとしても報酬は高額になるよね。もちろん、その国がどれだけ魔法が使える人を確保しているかによるけど」

「うむ」

「戦争後に魔法を使える人がどれだけ残っているかは知らないけど、高いお金を払って魔法を使える人に戦地復興をさせるより、きっかけを作った魔国に責任を擦り付けて、格安で復興させた方がいいでしょ?」

「それが魔国に対して言えると?」

「さあ? 戦争をするなんて馬鹿の考えは私にはわからないもん。必要以上の戦争をして利益を生み出そうと考える人は、何でもすると思うよ」

「なるほど」

「しかも、戦争に勝った直後なら興奮して『正常な判断』が出来ない可能性もあるしね」

「……では、魔晶石を渡さなかったからと文句を付けられたらどうする?」


 オルクスの言葉に首を傾げる。


「魔国の温情に縋らないといけないほどに困窮している国が、戦争をする体力は普通ないよね」

「ほう?」

「戦争をする体力があるのなら、その分自国の強化に力を注ぐべきでしょ。安易に魔国を頼って甘い汁をすすろうとする国は信用できないよ」

「なるほどな」


 オルクスは頷くと私の頭を撫でる。


「そう言うわけだ、外務大臣」

「かしこまりました」


 なにが!?

 いつの間にか近くに来ていた外務大臣が、オルクスに書類を差し出すとそれにサインをした。

 その後オルクスが手を振って外務大臣を下げさせる。

 まさかとは思うけど、今の話はたとえ話とか時間つぶしではなく、現実問題の外交の話!?

 いやいや、仮にそうだとしても子供の言う事で決定するなんてないよね?


「まぁ、こちらとしてはつぶし合おうが共倒れになろうが構わないし、現状魔晶石などの輸出先を増やして稼ぐ必要もない」

「そ、そう……」

「魔晶石などを輸出している国は、魔族が関わっている事に対しての温情措置のような物だからな」

「へえ?」

「一度いい思いをすれば、それが無くなる可能性は避けたいだろう?」

「そうね?」

「人間にとって、魔晶石はもちろん魔道具や魔国で生産している物はどれもレベルが違う」

「そうなんだ」

「始めは魔国以外に行った魔族に不自由ない暮らしをさせるための、個人的な物だったのだがな、そのせいでそれを奪おうとする愚か者が出た」

「ああ、なんか想像できる」

「魔族の保護を兼ねて、魔族を害さないことを条件に魔国からの輸出をするようになったんだ」

「なるほどねぇ。対象の国を滅ぼすとかじゃなくてよかったわ」

「いくつか滅んだな」

「あ、そうなんだ?」

「魔族を住まわせてやっている、などと世迷言を言う愚かな国には仕置きが必要だろう」


 お仕置きで滅ぼされるんだ。

 あれ?


「魔国が他国に対して輸出とか始めたのって、パパの代からなの?」

「そうだ」

「それまではどうしてたの?」

「先代の時代は今よりも人間の国がやかましかったらしくてな、関わる事すらなかったそうだ」

「そうなんだ」


 やかましいって何?


「魔族が魔国の外に出る事や定住する事はあったらしいが、先代はそういった者とやり取りはしていたものの、生活の面では興味なかったらしいな」

「ふーん」


 それで行くと、魔晶石とかを輸出して魔族の生活を保障しているオルクスは優しいのかな?

 オルクスの場合、退屈だからっていう理由で外交している可能性もあるから、何とも言えないけどね。

 他にもオルクスにいくつか質問をされて答えるという事をしている間に、生誕半年記念祝賀会は終わったようで、オルクスが私を抱き上げて会場を後にした。

 うーん、後半は質問に答えるっていうのを繰り返していただけだけど、何か意味があったのかな?

 今までだと私が退屈だと思うと余興が始まってたんだけど、今回はそれもほとんどなかったな。


「明日からは早速ライラの教育が始まるから、いつものようにのんびりとはいかなくなる」

「そうなんだ」

「基本的にマナーと各国の情勢、歴史などを学ぶことになる。読み書きは問題ないし、算術に関しても問題ないからな」


 確かに、読み書きはなぜかできるし、算術に関しては前世の知識があるから何とかなってるよね。

 それにしても明日からって、授業してくれる講師を見つけたのかなぁ?

 精霊族の族長には断られたし、オルクスが信頼できる講師ってあんまりいなさそうだよね。

生誕半年記念祝賀会がやっと終わりました٩(๑>∀<๑)۶

ペオニアシ国に行くまでにみっちりお勉強しますが、サクっとメイン舞台のペオニアシ国に行こうかなぁと思ってます。



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こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。

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