ドルドアは魔国に避難したいらしい4【イラストあり】
オルクスに抱っこされたライラ(幼女)のイラストがあります。
よろしければご覧ください。
この魔王城だけでも、この小さな体では全体を歩き回ることは出来ない。
私やオルクスが住んでいる居住区、魔王の執務室、そしてプレゼントされた庭園とか他の中庭ぐらいかな。
魔力の関係で基本的にオルクスと一緒に居るからそうなっちゃうんだよね。
でも、オルクスって『フルフル』では魔術師タイプだったけど、戦闘ステータス的には武術系のレベルも高い。
この半年、オルクスが武術系の訓練しているのを見た事が無いけど、大丈夫なのかしら?
かといって、魔法を使っているのをそこまで見た事もないけどね。
私がオルクスともう一緒にお風呂も入らないし、一緒に寝ない、部屋も別にするって言った時、魔王城に特大の雷が連続して落ちた時ぐらい?
毎朝私に起こしてもらいましょうとかネルガルが言って、大嵐になっていた天気が持ち直したんだよ。
天候を操るとか、何そのチート。
「ともあれ、その子供が魔国に滞在する事に関しては認めよう。今後の予定は精霊族の族長と調整しろ。どうせ今日の祝賀会に参加するからな」
「そうさせて頂きます」
頷いたレヴァール国王に、オルクスは興味を無くしたように私の頭を撫で始める。
他国の王様にもうちょっと興味をもって接しよう?
というか、精霊族の族長って誰?
過去五回の祝賀会で色々な魔族を紹介されたけど、居た?
「まったく、あの出不精が今回は参加すると言って来たから何かと思えば、その子供が関係していそうだな」
「パパ、精霊族の族長さんってどんな人?」
「引きこもりだ」
「容姿的な意味で聞いたんだけど……」
「会えばわかる」
説明する気が無いんだね。
「まったく、エルフ族の族長も参加すると言うのに、揉めなければいいのだがな」
「え! 仲が悪いの!?」
エルフと精霊って仲がいいイメージなんだけど!?
「精霊族の族長がエルフ族の族長を嫌っている。まあ、あそこまでしつこく付きまとわれれば嫌にもなるだろうな」
エルフ族の族長が精霊族の族長に求愛行動でもしてんの? エルフ族の族長って超美人だけど、前にひ孫もいるとか言ってたよね?
どういう事かと首を傾げてオルクスを見るけど、これ以上は話すつもりはないらしい。
補足説明を求めてレヴァール国の親子を見る。
「付きまとっているというか、エルフ族の族長は熱心な精霊族信者でして……」
「それは、パパよりも優先されるべきことなのですか?」
「流石に魔王陛下の方が優先順位は高いと思います」
そうだよね、私の印象だとエルフ族の族長は落ち着いた女性っていうイメージだもん。
毎回持ってきてくれる、エルフの領地にある森で取れたっていう果物の贈りものは美味しいよね。
前世でも好きだったけど果物っていいよね。食事制限されてたから食べてもいいって言われる時は至福のひと時だった。
「今回のお祝いの品物はどんな果物かなぁ」
思わずぼそりと言うと、私の頭を撫でていたオルクスの手が止まった。
「魔狐より、果物の方がいいのか……そうか……」
「いやっ誰もそんな事は言ってないよ!?」
「しかし今、期待しているように言っていただろう」
「パパも果物は好きでしょ?」
「いや、そうでもない」
「朝食に果物しか食べないのに!?」
「基本的に私は食事が必要ないからな。しかし、ライラだけに食事をさせるなどと言う寂しい思いをさせるわけにはいかないだろう」
「私の為だったの!?」
「父親として娘に寂しい思いをさせないのは当然だ」
「もしかしなくても、私も実はご飯食べなくてもよかったりする?」
「そうだな。しかしライラは所持している記憶の影響で食事の習慣があるだろう?」
「うん」
「だから用意させている」
わぁ、至れり尽くせりの親バカぁ。
「ライラ姫の記憶ですか? 古代宝石精霊になるには確かに強い魔力を持った魂が必要ですが、記憶も残っているものなのですか?」
ドルドアが驚いたように質問をして来たけど、普通は記憶って消えちゃうの?
「通常は古代宝石精霊になる際に魂のエネルギーを使用しきって、記憶も消えるがライラの場合は魂のエネルギーも魔力も多かったからな。前世の魂の記憶を引き継いでいる」
「それは、すごいですね」
「とはいえ、この肉体に宿っている記憶はともかく魂はライラ=ブランシュアのもの。前世とは別物だ」
「わ、わかりました」
つまり前世がなんであれ、今は自分の娘だから気軽に扱うなということね。
「それにしても古代宝石精霊になることが出来るほどの宝石とは、いったいどのような物だったのですか?」
「銀月長石だ」
「「はぁ!?」」
あ、声を揃えて驚くとか親子だね。
「とんでもなく稀少な宝石と言うよりも、存在しているのかすら疑問視されているあの銀月長石ですか?」
「そうだ」
「魔王陛下が所持なさっていたのですね」
「銀月長石レベルの稀少宝石、人間の間では幻と言われるような宝石は宝物庫にあるな」
オルクスの言葉に二人が茫然としている。
そう考えると、流石は世界最強の魔王だよね。
しかし、ずっと気になっているんだけど、ここは応接室でレヴァール国の親子は来賓なのに、お茶の一つも出ないってどういうこと?
この対応は魔王城で働く使用人の品質が悪いとか思われるのでは?
「しかし、母親の縁を辿って魔国にその子供が滞在するのはいいが、本当に他の国も面倒なことを言い出さないかが心配だな」
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
「そう思うのならそもそも魔国に来ようとしなければいいのだがな」
オルクスの冷たい物言いもどうかと思うけど、『フルフル』ではドルドアが魔国に滞在していたなんて話なかったしなぁ。
課金イベントとかにもなかったと思うんだよね。
私って結構な重課金者だったから、攻略した相手の課金イベントは逃してないはず。
流石に全員攻略したわけじゃないけど、オルクスとドルドアは通常攻略も、課金してのイベント攻略も網羅したもん。
特にオルクスお前! 折角上げた好感度はちょっと放置するとすぐに下がるし、特定のイベントこなさないと「つまらない女だな」とか言って裏切ったり、姿を消したりするし!
本当に大変だったんだからな! 味方に居ると存在そのものがチートだったけど!
「それでもまあ他国の者と違って、ライラの生誕記念祝賀会に出席しようとした行為は褒めてやってもいい」
確かに、魔族以外の人が参加するのって初めてだわ。
魔族の中でも参加しない偉い人っているしね。
そういう人はいきなり現れた私の事を認めていないと言うか、気に入らないんだろうな。
「では、私とライラは準備があるのでもう行く。お前達は今夜、この城に泊るのだったな?」
「その予定です」
「客室エリアには魔族の客も多数滞在する。問題は起こさないように」
オルクスはそういうと私を抱きかかえて応接室を出た。
「ライラ、下らない用事に付き合って喉が渇いただろう。着替えの前に昼食と飲み物を用意させよう」
「あ、うん」
飲み物に関してはさっき出しても良かったのでは?
「それにしても、魔国に滞在するようになったら、私とも関りが出てくるのかな?」
「なぜだ」
「え、だってレヴァール国の王子でしょ? このお城で催し物をする時に招待とかしないの?」
「今回はレヴァール国王の随伴だが、今後の催し物に参加するかどうかは、預かり元の精霊族の族長次第だな」
「そうなんだ」
「なんだ、あの子供に興味があるのか?」
「そりゃまあ、『フルフル』の攻略対象だし」
思いついたままに言うと、オルクスが珍しく眉間にしわを寄せ足を止めた。
よろしければ、感想やブックマーク、★の評価をお願いします。m(_ _)m
こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。




