牢獄
主人公最強ではないです。
全く同じ丸被りネタとかタイトルあったら申し訳ないです。確認してないので。
それ系列のテンプレってことで勘弁してください。後の展開で差をつけろ。
雷に打たれて死んだ。
それは誰かが意図的に起こしたものではなく、神の手違いでもない。
ただただ、街を歩いて、雷が落ちた。
そうして死んだ。それだけだった。
それが、『武田 竜也』という男の人生だった。
それでも、神様ってのは居るもので、数多の神の内の一柱が、俺を蘇らせてくれることになった。
蘇ることは出来るけど、地球のある世界で暮らすのは無理だと言われた。
別世界に転移させて貰えるらしい。
勿論、チート、特典といったようなものは無い。
誰にも責が無いのなら、俺が貰える道理はないものな。
ただ、死亡保障として、転移してから3日の間、死んだら即座に蘇れるようにしてくれるらしい。
別世界は、魔法が存在し、それを扱うのが当然な世界。
人間も動物も、生身で地球人を大量虐殺出来る可能性を秘めた世界。
肉体の作りは、蘇る時点で同じになるから、同じことが出来るようになるとは言え、俺はその世界では歩けるだけの赤子同然。
下手をすれば、生まれた時から魔法を使える存在も居るため、赤子以下らしい。
死亡保障は、ありがたい話だ。
少なくとも、ファンタジーの定番、ゴブリン相手にも勝てるか分からない。
スライムだって、国民的RPGのあれでは無く、どろどろの纏わりついて溶かしてくるヤツだろう。
それでも置き去りにせざるを得ない過去を悔やんで、新しい生活、人生を頑張ろうと、決意を胸に転移した俺を待ち受けていたのは──────
──────想像を絶するような地獄だった。
──竜神の塒。
自然そのものであり、それを調律する存在、『竜神』が住まう山の山頂は、すり鉢状に抉れた穴が開いており、それを成したであろう天変地異がいつも吹き荒れている。
土属性が生んだ土砂が、火属性により熱せられて溶岩を生み、それが風属性によって巻き上げられ、水属性が生んだ水により凄まじい水蒸気が爆発したように起こる。
狭くもあり広いもあるそこは、時間さえ歪み、放たれる以上に増幅される光が、一瞬にして闇が覆いつくす。
無数の自然に発生した魔法が、そこに留まっていられるのは、そこに浮かぶ不変の存在、竜神が引き寄せているからに他ならない。
何年かに一度、世界の属性バランスが安定して、竜神が調律属性が偏る時期でなければ、如何なる魔術師であっても、対応しきれない属性の魔法にその身を滅ぼされてしまうこの竜神の塒は、長らく続いた平和の反動で起こった負の魔力の暴走により、世界中で争いが起こったが故に最大級に荒れていた。
(負の魔力の暴走に侵されやすい理性の薄い動物から生まれると、繁殖力も高いが故に戦いが収まらんな……)
竜神『アズラオムティオス』は、荒れ狂う魔法の中心に浮かび、世界で生物が意図せず起こってしまった、大魔法を引き寄せて、処理していた。
彼は、自身の存在の維持にも、引き寄せた魔法の力を使っているため、普段はそれは息を吸うように行えることではあるが、今は流石に量が多いため、意識を割いて行わなければならない。
普段であれば、分身を生み出して、世界を巡る旅を趣味として生きているが、非常事態に備えて、余裕が無い今、非常に退屈な時間を過ごしていた。
(かといって知性のある生物が魔化してしまうと、私の楽しみが無くなってしまうか……)
ここ数万年で生まれて来た、猿から派生し、精霊や動物と結合したりなどした、人間という生命体の生活を覗くのが、最近の楽しみであったアズラオムティオスは、これまで見聞きしたことを思い返して、心を弾ませる。
そうして、また新たに意図せず発生した次元魔法を察知して、手元に引き寄せ────
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛き゛き゛き゛き゛き゛き゛き゛き゛き゛き゛き゛き゛き゛き゛き゛──────」
(何だ!?)
───小刻みに出現と消滅を繰り返す奇怪な人間に盛大に驚き、瞬きするより遥かに短い時間、魔法の制御を乱し、10cmばかり山頂の穴を深くした。
よく見れば、人間はここに吹き荒れる魔法によって、消滅し、何らかの力で再生しているようだった。
次元魔法は未だ発動中であるため、引き寄せた以上は手放すことは出来ない。
恐らく次元転移であるこれが収まるのは、経験で言えば1日はかかると竜神は考える。
吹き荒れる魔法を解き放つことはすぐには出来ない。
次元魔法も、手を加えれば、異常が起こりながらも生きている人間は、複数の次元に身体が泣き別れてしまうかもしれないのだ。
基本的に人間を好ましく思っている竜神は、ある種自分が引き連れてきてしまった人間に、申し訳なく思った。
この人間は、この世の終わりのような絶叫をあげ、絶望の表情で息絶え、蘇りを繰り返しているのだ。
小刻みに死を生を繰り返す哀れな人間の男を、竜神は仕事をしながら、落ち込んだ気分で見つめることしか出来なかった。
転移したであろう俺を待ち受けていたのは、地獄だった。
「あ゛ぁ゛ーーーーッッ!!?あ゛がぁ………ハッ、ハッ、ハァ、ハァ……!!!!!」
『死亡を確認、肉体の修復を開始します。残り効果時間は約71時間59分58秒』
数秒の僅かな時間、暗闇に閉じ込められた俺は、謎の声の後に、バチン、という音が聴こえた瞬間、再び光と共に身体がはじけ飛ぶような衝撃と激痛を与えられる。
「ぎっ!?あ゛が!!!あぁぁあああ!!!!………ハァッ!!ハァッ!!」
『死亡を確認、肉体の修復を開始します。残り効果時間は約71時間59分57秒』
バチン。
「あっ!?もうやめ───ぎ、あ゛ああああ!!!!??」
『死亡を確認、肉体の修復を開始します。残り効果時間は約71時間59分57秒』
激痛と共に、視界が一瞬赤くなったり、真っ白になったりしているが、はっきり分かっている事はそれと、この激痛が来るまでにインターバルがある事と、俺は気を狂わせることも出来ない事と、もう数十回、いや、数百や数千かもしれない回数、これを味わっているということ。
狂えないだけで、痛みで思考は妨害される。
考える間もなく、次の苦痛が来る。
「き゛────」
『死亡を確認、肉体の修復を開始します。残り効果時間は約71時間59分57秒』
「か゛────」
『死亡を確認、肉体の修復を開始します。残り効果時間は約71時間59分56秒』
「ぁ────」
『死亡を確認、肉体の修復を開始します。残り効果時間は約71時間59分54秒』
「もう、もう嫌だ───か゛ッ───」
『死亡を確認、肉体の修復を開始します。残り効果時間は約71時間59分51秒』
「く゛────」
『死亡を確認、肉体の修復を開始します。残り効果時間は約71時間59分43秒』
「か゛ひ゛さ゛ま゛!!し゛な゛せ゛べ───かッ───」
『死亡を確認、肉体の修復を開始します。残り効果時間は約71時間59分12秒』
苦痛は何度も繰り返す。
激痛の間隔、暗闇に囚われる数秒──5秒間と、激痛に苦しむ一瞬は、苦しむ度、徐々にその差を埋めて行っているような気がした。
それが恐ろしくて、何をすればいいのか、俺には分からなかった。
『死亡を確認、肉体の修復を開始します。残り効果時間は約71時間58分00秒』
生物は適応する。