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[No.93] 〝禁煙令〟撤回 「煙草は魔王によってもたらされた物ではなかった」

 煙草(たばこ)の製造・販売・所持・使用を全面的に禁じる〝禁煙令〟は、帝国軍当局により、今月1日付けで国内全土に発令されたものである。だが、施行(しっこう)後わずか一日で撤回され、廃令(はいれい)となった。


 先月下旬に伝えられた一報(いっぽう)は、人々に大きな衝撃を与えていた。


 軍当局の古文書調査により、「煙草は人魔大戦期に魔王が魔界から持ち込んだもの」ということが判明。健康に害を及ぼすことは知られていたが、その煙草による健康被害が、魔王による人類攻撃の一戦法(いちせんぽう)だったことが明らかにされたからである。


 依存による常用で身体を(むしば)ませよう、という狙いがあり、魔界から持ち込まれ、本来この世に存在していなかった植物とともに製造法などの知識が人類へ広められていたものだった。


「魔王亡きあとも、魔物同様、持ち込まれた煙草が、負の遺産となって人類に悪影響を及ぼし続けている」として、帝国軍は〝禁煙令〟の即時発令に踏み切ったのである。


 ……が、しかし、今月に入ると急遽(きゅうきょ)『早とちり』だったことを発表。


 軍当局によると、「参照した古文書よりもさらに年代の古い古文書から『煙草は人類が自らの手で作り出した嗜好品(しこうひん)だった』とする確たる記述を見つけた。これにより、魔王がもたらしたものとする説は誤りだった」と訂正。


 こうして〝禁煙令〟は即時発令後に即時廃令となったのである。


「我々の早合点(はやがてん)よって、国民の皆様に多大な混乱を招いてしまい、誠に申し訳なく思っている。煙草はこれからも嗜好品として(たしな)んでもらって構わない。ただし、健康を害することには変わりなく、服煙は適量を心がけるように」


 と、軍当局は謝罪文を公表し、注意喚起をするにとどまり、愛煙家たちはホッと胸をなでおろすに至ったのだった。

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