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[No.88] 【読者の集い】軍事演習参加部隊に関する疑問 なぜ大型陸竜やサラマンダー?

 ♂ ヴィルヘルム 49歳(ゼルキィーン市・ただの竜騎兵団マニア)


 現在、帝国東部の国境付近に位置する《キンキャステン高原演習場》にて、帝国陸空軍による合同軍事演習が行われているが、私にはその参加部隊に対して疑問に思うことがある。


 結論からいうと、『防衛』を意図した部隊選考になっていないのだ。

 参加各種竜騎兵ドラグーン部隊が、守りよりも攻めに重きが置かれている。


 帝国陸軍の第6師団からは第11・第12・第13の3個竜騎(りゅうき)連隊が参加している。この部隊が使役(しえき)しているのは、リンドブルム、ヒュドラ、アンフェスバエナで、いずれも陸軍が使役する最大級の大型陸竜(りくりゅう)たちである。


 森の中にいても高木(こうぼく)から頭が抜け出るほどの身の(たけ)があり、動けば大地を揺るがすような巨体。吐き出される火球は絶大な火力を(ほこ)っている。しかし一方で、かなりの鈍足(どんそく)で機動力が無いに等しい。そのため、最前線への配備には向かず、後方に火砲台(かほうだい)として置き、目視外からの超長距離火力支援の役割が(にな)わされている。

 また、大型陸竜の火球(かきゅう)は強力かつ長射程ではあるが、球速(きゅうそく)にかけるため、対空火砲としては不向き。遠距離での対地攻撃向けなのだ。


 帝国軍ではグリフォン騎兵部隊(隣国のセネショア共和国軍所属)などによる空からの進軍を想定しているらしいが、機動力のある相手空軍力への即応(そくおう)対処が念頭と考えると、首を(かし)げざるを得ない。 


 帝国空軍からは第3飛行隊(ワイバーン部隊)と第5・第6飛行隊(どちらもサラマンダー部隊)が参加している。サラマンダー部隊が多いこの比重も妙だ。


 ワイバーンは空対空くうたいくうの航空騎兵戦闘に(すぐ)れる高機動飛竜(ひりゅう)なので、こちらは納得がいく。しかし、サラマンダーはどうなのか……。ワイバーンと違って、火球が吐けないのである。射程の短い火炎放射のみの攻撃法となる。そのうえ飛行速度も速いとは言えないため、空対空戦ドッグファイトでは断然不利になってしまう。


 サラマンダーが得意としているのは対地攻撃である。目的地まで飛んでいき、低空飛行または地上に降り立っての火炎放射で、地表一帯を広域に燃やし尽くすような『飛び石戦術』にてきしている。サラマンダーの火炎放射は〝ナパーム・フレイム〟と呼ばれ、独特な粘り気のある炎を吐くので、消えにくく燃え広がりやすい。殲滅力せんめつりょくはドラゴン随一ずいいちだ。


 このように、両軍とも『対空迎撃げいげき』が念頭というより『対地攻撃』向けの布陣なのである。


 もちろん、攻め込んでくる相手陸軍力への想定ともとらえられなくはない。だが、大型陸竜やサラマンダーでは過剰かじょう戦力となり得る。いや、どう考えても過剰なのだ。


 演習場のようなだだっ広い場所が戦場になればいいが、しかしまっさきに狙われるのは国境付近に位置する村や町であり、そこで戦うともなれば、上記戦力では守るべきはずのその地や民を、たちまちのうちに灰燼かいじんに変えかねない。敵に応戦し、被害を最小限にとどめる編成は、もっと他に考えられるはず。


 私には相手領土へ対する大打撃での『先制攻撃』を狙った部隊構成のように思われてならないのである。


 たとえば、大型陸竜による長距離火球での支援砲火後、ワイバーン部隊の護衛を受けたサラマンダー部隊で、敵地に乗り込んでいく。行われている演習で想定しているのは、そのような戦術にもとづく『侵攻』ではないのかと……。

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