[No.87] 【読者の集い】あたしは元気ですよぉー(笑)
♀ アナベル 10万18歳(帝国全土があたしの家・大魔法使い冒険者)
やっほー、知る人ぞ知る小物賞金首・アナベルだよ!(笑)
捕まっちゃったと思ってる人がいるかもだから、あたしが無事ってことを報告しとこうと思って、しなくてもいい投書をまたしちゃいましたー(笑)
え? なんだか嬉しそう?
ふふっ。そりゃあ嬉しくもなりますって!
じつはここだけの話、おっぱいを拾ったの。
それもすんごく大きいの。
なにを言ってるんだって思ってる?
まあちょっとあたしの話を読んでくださいな。
あたしが如何にして、たわわなおっぱいを手に入れるにいたったのか。そして、密かに忍び寄っていたバウンティーハンターの魔の手から逃げることができたのか。
とくとご覧あれ!
π π π
《ブロチコネン町》でお尋ね者にされていることを知ったあたしは、新聞で苦言を訴えてたじゃない? 似顔絵が下手くそすぎるとか報酬金が低すぎるとかって。今更だけど、余計なことしちゃったよね。それまでは見向きもされなかったのにさ、ときどき「お前、賞金首だろ?」って、いかにもな人たちからお声がかかるようになっちゃったんだよ。
どういうわけかなと思って、お尋ね者情報を確認してみたら、報酬金が5万コバーンから15万コバーンに桁がひとつ増えちゃってて、ちょっとした小遣い程度になっちゃってるし、子供の落書きだった似顔絵も描き換えられてて、若干寄せてこられちゃってるの。おまけに、『死体引き渡し可』にもなっちゃってるしさ。
まだ「えぇー、違いますよー、あたしじゃないですって(笑)」って感じの笑誤魔作戦で押し通せてるけど、これはちょっとマズイなと思って、町から町に移動しながら、まさかのときに備えて魔道具なんかをいろいろ買い込んじゃったんだよね。
その爆買いが祟っちゃってさ、《サバーブ村》ってところに辿り着いたときには、財布の中身がなんと12コバーンぽっち。宿にも泊まれないし、ご飯だって買えない。日雇いのバイトをしようにも身バレが怖くなっちゃってて無理だし。これは詰まっちゃったかな……ってときに目に飛び込んできたのが『食事処』の看板。木造漆喰の二階建てで、屋根裏に飾り窓がついてる飲食店だよ。
で、あたしは閃いた。あの窓から侵入して屋根裏に間借りすれば、食べ物にも寝床にも困らないのでは?、ってね。
背に腹は代えられないから、すぐに実行したよ。って言っても、空を飛ぶために夜まで待ってからなんだけどさ。飛ぶとこを見られないためってこともあるけど、むしろ〝魔女の軟膏〟を塗ってるところを誰かに見られるのが絶対嫌なんだよね。わかるでしょ?、使ったことある人は……。ショーツを脱がなきゃいけないし、軟膏なのにムズ痒くもなるしでさ……。あたしまだあれ塗らないと飛べないんだぁ……。絶版魔道具で仕入れるのが大変だから消費も抑えておきたいんだけど……。
とまあ、ともかく、あたしは食事処への侵入に成功したわけ。
天井板の隙間から下を覗いてみると、屋根裏下はどうやら子供部屋。ベッドで寝ていたのは、ぽっちゃりした十代前半くらいの少年。ガーガーうるさいイビキをかいてて、都合がいいって思ったね。あたしもイビキがうるさいみたいだから、紛れちゃって丁度いい。
子供部屋に降りるのには、刀剣破壊短剣が役に立ったったんだ。名前がかっこよくて思わず衝動買いしちゃってたやつなんだけど、ノコギリみたいに凸凹してるギザ刃で、天井板を切るにはもってこいだったよ。衝動はいい仕事してくれるね。
そんなこんなで、あたしは食事処の家族が寝ている夜中に、一階にあった食料庫を探り当て、そこから食べ物を屋根裏に持ち帰るという潜伏生活に突入したの。――あっ。盗み食いしてたことになっちゃうけど、あとからきっちり返済するつもりで、取ったものはちゃんと全部書き留めてあるんだから。ツケってこと。そこのところはよろしく。
数日間は何事もなく生活できてたんだけどさ。
バレちゃったんだよね、子供部屋のぽっちゃり少年に。
明け方だったんだけど、持ち帰ってきたくんせい肉を食べてたら、「おい、それはボクの家の肉だぞ、勝手に食べるな!」って、いきなり声が聞こえてきて振り返ったら、少年が屋根裏にのぼって来ちゃってたの。
でもそこはさすがの、あたし。
慌てず動じずの機転でピンチを切り抜けたんだ。
「あたしは家に住み着いて幸運をもたらす妖精だよ。もし、キミがお父さんやお母さんに内緒で、あたしのために食べ物を運んできてくれるなら、この食事処を繁盛させてあげる」
それを聞いたぽっちゃり少年が、すぐに信用してくれて事なきを得たの。とんがり帽子にマント装束のあたしの古き良き魔法少女スタイルは、妖精の服装っぽいところがあるから、利用してみたら大成功。万が一のときには魔法を使って脅してでも、って最終手段もあったけど、少年がまだ純朴な心を持っているって見破って平和的におさめたあたしの知略なわけなんだなー。
奇跡的な日を迎えたは、それから数日後。
昼夜逆転生活になってたあたしは、その日、お昼ころに目が覚めた。
背伸びをしながら飾り窓から外を見下ろしてみたら、もうびっくり。
食事処前の小道を歩いてたんだ――いや、這いずってたの、おっぱいが二つ。
寝ぼけてるんじゃないかと思って目を何度も擦ったんだけど、どう見たっておっぱい。
ありえない、とか考えるよりも、とっ捕まえなきゃ!って、巨峰を求めるあたしの体は条件反射で動いてたね。リュックから即座に〝軟膏〟を取り出して、ショーツを脱ぎ捨てて、塗りたくって、窓開けて。おっぱいを入れるためにリュックも忘れずに背負ってから、飛翔!
真上からの急降下で一気に押さえ込もうと思ったんだけど、乳首が目の代わりにでもなってるみたいで、あたしが空を飛んでるにも関わらず、けどられちゃってさ、ゆるゆる動いていた二つのおっぱいが急に移動速度を上げたんだ。ふよよよっ、ふよよよっ、雑木林のほうに向かっていく。
逃げられるのが先か、仕留めるのが先か!
ふふーん♪
もちろん勝ったのは、あたしです。
茂みに入る直前で、間一髪、あたしの両足がむにゅっと踏みつけたの。そのときに白い液体を飛ばされたんだけど、おっぱいなら母乳だと思って慌てなかったし、楽勝だったよ。手に取ってまじまじ観察してみても、しっかりおっぱいをしてたから。
「大きい人のおっぱいって実は取り外し可能なの? 外すと動き回るの……?」
とか、一瞬真面目に考えてときだった。
食事処の玄関のほうから人の会話声が聞こえてきたんだ。
見てみるとさ、ぽっちゃり少年とその両親が玄関前に居て、そこに三人組の男たちが向かい合っているわけなんだよ。しかも三人組の男は全員、剣や盾を持って鎧まで着込んでいる完全武装状態。風貌というか、いかつい顔つきが冒険者というよりか、バウンティーハンターに見える。
あれってまさか……?
勘ぐるうちに、三人組の男がドヤドヤと屋内に入って行ったんだ。そのまま足音がドヤドヤと二階に上がって行って、それを目で追っていたら、あたしが今さっき開け放って飛び出てきていた屋根裏の窓から、男たちが顔を覗かせた。
「賞金首が居たぞ! あそこだ!」
指さされたのは、もちろんあたしでさ。その男の手に、脱ぎっぱにしてたショーツが握られてるのを見つけちゃったんだけど、あれはもう仕方ないな……って回収はあきらめて。リュックを開けるまもなく、大慌てでおっぱいをシャツの胸の中に突っ込んでたよ。そして木製ロッドに跨って飛び立ち、危機一髪のところで、最大の難から逃れるにいたったのでありましたとさ。
π π π
すごくない?
奇跡の二連発でしょ?
おっぱいを捕まえて、なおかつ、バウンティーハンターから逃げ延びる!
このメークドラマをぜひとも伝えておきたかったんだよね。
そうそう。あたしを救ってくれたおっぱいなんだけど。捕まえるときには逃げようとしてたけどさ、胸に突っ込んでおいて正解だったよ、あたしの胸にすっかり居着いちゃってるんだなー。なんか居心地がいいみたいで。
今は、もともとあるあたしのおっぱいの上に、捕まえたおっぱいが自分たちから重なってくっついてくれてる最高な状態。だから接着剤要らず。さいあくそれで貼りつけようと考えてたんだけど、必要ないみたい。
〝この子たち〟がどこから来てどこへ行こうとしてたとかは、あまり考えないようにしてるよ。頭痛くなりそうだし。動き回るおっぱいが居た、あたしがそれを捕まえて胸で飼うことになった、それでいいじゃん、貧乳で悩んでいたあたしへの精霊かなにかからの贈り物だ、って感じで済ませてる。
その後の逃亡生活は、っていうと、〝この子たち〟のおかげで順調だよ。「お前、賞金首だろ?」って疑われることがあってもさ、この大きな胸を張って、「あたしじゃないよ、張り紙に載ってるあの貧相な子とは格がぜんぜん違うじゃない?」って言うだけで、「……うむ」の一言だけ返されて終わっちゃうの。おっぱい様々ですよ。軍資金の調達にも役立ってもらっちゃってるしさ。
というわけで、
巨乳になったあたしは向かうところ敵なしになってるなので、ご心配なく!
○
以上が、昨日、弊社宛に送られてきた賞金首・アナ(アナベルを名乗っているが、使い分けている名前に共通している〝アナ〟とする)からの手文になります。
内容を精査するに、彼女は本紙を購読しておらず、投稿のみを行ってきているものと思われます。
あなたの投稿文に嘘八百が綴られてあることは、購読者の皆様に露呈していますよ。機会があればバックナンバーをご覧になってください。強悪運にも入手せしめてしまった二つの乳房に、れっきとした持ち主が存在していることも理解できるでしょう。奪い取った乳房に妙なことをさせているのであれば、ただちにやめてください。
この記事をどこかで見かけるようなことがあれば、どうかもう一度弊社宛に便りを寄越し、窃盗した乳房の返却に速やかに応じるよう願います。
再度更新されたハンターギルドによる〝お尋ね者情報〟(ウォンテッド・インフォメーション)を掲載いたします。罪人の一刻もはやい逮捕と、罪なき乳房の奪還にご協力ください。
[WANTED]
DEAD OR ALIVE
(生死問わず。ただし、盗難された乳房は無傷譲渡で)
報酬:3,255,100コバーン
罪名:建造物放火、過度な落書きによる迷惑行為、
住居不法侵入及び不法占拠、無銭飲食、
脅迫罪、強制わいせつ罪、乳房窃盗罪、など
名前:アナ(とする)
年齢:自称14~10万18歳(実年齢不明)
職業:自称冒険者
身体:150~155cmほど、赤髪のツインテール、レッドアイ、ソバカス顔
服装1:木製ロッド(杖)、とんがり帽子、赤マント、リュック
服装2:白シャツ、ブラウンベスト、黒スカート
性格:明るい、人懐っこい、いびきがうるさい、大バカ、破廉痴女
確認済みの所持品:
魔道具チョーク、魔女の軟膏、刀剣破壊短剣
備考:
本人は真性魔法使いの気でいるようだが、使用された魔法は、確認されている限り、すべて魔道具使用によるもの。ゼロ能力者である可能性が極めて高い。窃盗した乳房の癒着により、巨乳化している。上着類は変更のおそれあり。暗所での露出を見世物とする、いわゆる〝マッチ売り行為〟で逃走資金を稼いでいる可能性大。魔道具軟膏使用による飛行能力あり。この軟膏は、浮遊効果を付与させる道具との接触点、つまり、杖や箒を使うときには股間に塗られるもののため、草葉の陰に隠れるようにする挙動者を要警戒。いちご柄のショーツは証拠品として押収済み。下着を買い替えているか、即時逃走を想定し、常時穿いていないことも考えられる。
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