表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/170

[No.7] 魔物園からミノケンタウロス 脱走

 今月9日、《リパーフート市》にある魔物園まものえん〝リパーフート・モンスターパーク〟で、オスのミノケンタウロス一頭が園内から逃げ出し、辺りは一時騒然そうぜんとなった。


 事件が起きたのは、朝の開園時間前。

 魔物使いの職員が出勤してくると、飼育おりの扉が開いていることに気づき発覚。中に居るはずのミノケンタウロス一頭の姿が見えなくなっており、逃げ出したのだとさっした職員は慌てて園内を捜索した。


 すぐに屋外通路上を歩いている姿を確認するに至ったのだが、ミノケンタウロスは、牛面うしづらの鼻から洗い息を吐き出し、四本脚のひづめを打ち鳴らして、極度に興奮していた。上半身には拘束具こうそくぐが取り付けられているが、危険な状態である。


 その職員は、なだめようとこころみたが上手くいかなかった。普段、飼育を担当しているのは別な魔物であるため専門外。ゆえに扱い方をよく知らなかったのだ。対応に苦慮くりょしているうちに、ミノケンタウロスは突如として駆け出し、園外へと逃走してしまう。


「モォ~、びっくりしたわぁ。馬かと思ったらミノケンタウロスなんだもの!」


 牛のように興奮してインタビューに応じてくれたのは、魔物園近隣に暮らしている主婦・アニタさん(43)である。玄関のポストに新聞を取りに来た彼女は、パカラッパカラッと鳴り響いてきた蹄の音でふりかえった。すると、自分がいるほうへ猛然と迫ってきていたのは、なんと荒れ狂う雄のミノケンタウロスだったのである。


「驚いた拍子ひょうしに転んじゃって、足首をひねっちゃったわよぉ」


 ミノケンタウロスは、倒れ込んだアニタさんに危害を加えることなく、猛然と通過して行ったそうだ。彼女がその程度の軽症で済んだのは不幸中の幸いだったのだろう。そして、彼女以外に負傷が出なかったのも奇跡に近い。


 その後、一報を受けたハンターギルドの面々が路地の一角いっかくにミノケンタウロスを追い詰め、園職員が放った麻酔矢ますいやで眠りにつかせて捕獲成功。事態は収束を迎えた。


 ミノケンタウロス脱走の原因は、担当飼育員による鍵のかけ忘れと明らかになっている。


「この度は、近隣住民の皆様に多大なご迷惑・ご心配をおかけしてしまい、誠に申し訳ありませんでした。今後、このような不足の事態が発生することのないよう、職員の教育の徹底、危機管理の改善に努めてまいります」と、魔物園側は謝罪した。


 ミノケンタウロスの一般公開はしばらく中止される見込みだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ