[No.7] 魔物園からミノケンタウロス 脱走
今月9日、《リパーフート市》にある魔物園〝リパーフート・モンスターパーク〟で、雄のミノケンタウロス一頭が園内から逃げ出し、辺りは一時騒然となった。
事件が起きたのは、朝の開園時間前。
魔物使いの職員が出勤してくると、飼育檻の扉が開いていることに気づき発覚。中に居るはずのミノケンタウロス一頭の姿が見えなくなっており、逃げ出したのだと察した職員は慌てて園内を捜索した。
すぐに屋外通路上を歩いている姿を確認するに至ったのだが、ミノケンタウロスは、牛面の鼻から洗い息を吐き出し、四本脚の蹄を打ち鳴らして、極度に興奮していた。上半身には拘束具が取り付けられているが、危険な状態である。
その職員は、なだめようと試みたが上手くいかなかった。普段、飼育を担当しているのは別な魔物であるため専門外。ゆえに扱い方をよく知らなかったのだ。対応に苦慮しているうちに、ミノケンタウロスは突如として駆け出し、園外へと逃走してしまう。
「モォ~、びっくりしたわぁ。馬かと思ったらミノケンタウロスなんだもの!」
牛のように興奮してインタビューに応じてくれたのは、魔物園近隣に暮らしている主婦・アニタさん(43)である。玄関のポストに新聞を取りに来た彼女は、パカラッパカラッと鳴り響いてきた蹄の音でふりかえった。すると、自分がいるほうへ猛然と迫ってきていたのは、なんと荒れ狂う雄のミノケンタウロスだったのである。
「驚いた拍子に転んじゃって、足首を捻っちゃったわよぉ」
ミノケンタウロスは、倒れ込んだアニタさんに危害を加えることなく、猛然と通過して行ったそうだ。彼女がその程度の軽症で済んだのは不幸中の幸いだったのだろう。そして、彼女以外に負傷が出なかったのも奇跡に近い。
その後、一報を受けたハンターギルドの面々が路地の一角にミノケンタウロスを追い詰め、園職員が放った麻酔矢で眠りにつかせて捕獲成功。事態は収束を迎えた。
ミノケンタウロス脱走の原因は、担当飼育員による鍵のかけ忘れと明らかになっている。
「この度は、近隣住民の皆様に多大なご迷惑・ご心配をおかけしてしまい、誠に申し訳ありませんでした。今後、このような不足の事態が発生することのないよう、職員の教育の徹底、危機管理の改善に努めてまいります」と、魔物園側は謝罪した。
ミノケンタウロスの一般公開はしばらく中止される見込みだ。