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[No.68] 国籍不明のグリフォン騎兵部隊 人魔大戦後初となる〝領空侵犯〟

 前日夕方、《フォルグレン(とりで)》に駐留する帝国軍の国境監視部隊が、緩衝地帯(かんしょうちたい)より飛来してくるグリフォン五体を確認。グリフォンには防具武装が(ほどこ)され、騎乗している人員がいることから、軍所属の一個飛行隊と推定(世界条約により、グリフォンの使役(しえき)は各国で軍隊のみが行える)。しかしこの日の飛行入国申請はなく、通行許可は降りていない。近づいてくる飛行隊には、識別用の国旗や軍旗が掲げられてさえいなかった。


 国境監視部隊の魔法科兵が、砦屋上から警告のための照明光球(こうきゅう)を打ち上げるも、反応は示さず、防空識別圏に侵入。領空を侵犯するおそれがあるとして、同砦に駐騎(ちゅうき)している帝国竜騎兵団・航空竜騎兵隊・第3飛行隊のワイバーン竜騎兵二個飛行隊がスクランブル出動した。


 空へ飛び上がったワイバーン部隊は、飛行隊長のイザベル・ワーナー少尉(18)指揮のもと、国籍不明グリフォン部隊への退去処置を実地。右翼と左翼の二手にわかれた並走飛行により、すみやかに空域から離脱するように(うなが)す。しかしグリフォン部隊は度重なる注意勧告にも応じることなく、砦を越え、帝国領空内に侵入した。


 これは人魔大戦以降初めての、人による本帝国領空内への侵犯行為となる。


「(イザベル少尉)規定では、越境(えっきょう)の時点で対象への〝警告火球〟を行うことになっているが、私の判断により、一触即発の事態を可能なかぎり避けるため、我々の部隊は、騎体(きたい)を左右に揺らしたり、照明光球を打ち上げたりする進路変更の指示に留めていた」


 だが、グリフォン部隊は、近隣の村まで一直線の進路をとっている。


 並走飛行を続けるイザベル少尉たちは難しい決断に迫られていた。


 そこでついにグリフォン部隊が動きを見せた。


 先頭を飛行していた隊長騎らしきグリフォンが、旋回機動(せんかいきどう)を描いたのである。残る四騎も追随(ついずい)して空域から離脱するかと思われたが、()(ひるがえ)したのはその一騎だけだった。そして離脱はしなかった。あろうことか、並走飛行していたワイバーン部隊の左翼一個飛行隊の後方へと回ったのだ。


「(イザベル少尉)空中騎兵戦闘において、相手の背後へ回り込むという行為は、攻撃行動の明確な意思表示とみなされる。よって私は、隊員ならびに近村住民の生命が危機的状況にあると判断し、騎乗ワイバーンによる警告火球を敢行(かんこう)した」


 右翼隊にいたイザベル少尉は、手綱(たづな)を引き、ワイバーンを減速降下させたのち、足で胴体を叩いて火球放射の合図を送った。開かれたワイバーンの口から一発の火球が斜め上方に向け放射される。火球はグリフォン一騎の脇を通過し、上空へと消えた。


 この警告火球により、国籍不明グリフォン騎兵一個飛行隊は、全騎、進路を変更。国境側へと戻っていき、イザベル少尉(ひき)いるワイバーン部隊が滞空警戒を続ける中、日が(ぼっ)しかけて暗くなった緩衝地帯の空へと(まぎ)れていった。


 今回の領空侵犯を受け、帝国軍総司令部が声明を発表している。


「近年、国籍不明部隊接近にともなう緊急出動が増加していたが、此度(こたび)は誠に遺憾(いかん)ながら、人魔大戦以降初の領空侵犯事件が起きてしまった。しかし、イザベル少尉の冷静沈着かつ勇敢な対応があり、国土空襲という最悪の事態を(まぬが)れることができた。我々はこれからも、帝国国民の生命と財産を守るため、身を()にし、防衛に尽力(じんりょく)していく」


 また、帝国軍は、国籍不明グリフォン部隊が帰投(きとう)していった方角は、今回も、隣接国である《セネショア共和国》だったことを明らかにしている。グリフォンは同共和国のシンボルマークとなっていることもあり、なにかしらの関与が疑われている。

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