表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/170

[No.61] 不審者出没情報

 不審な若い男による子供に対しての()いかけ事案が発生した、との情報が寄せられましたので、以下に掲載し、注意喚起をおこないます。該当する者を見た、なにか情報をお持ちの方は、当該地域の自警団までお知らせください。


 自警団は見回りの強化などの対策に努める方針です。また、親御(おやご)さんは、子供を現場にはしばらく近づけないようにお願いします。


 情報を精査するに、海に潜む魔物が人間に化けている可能性が十分考えられます。くれぐれもご用心を。



          ◯



[発生日時]


 先月下旬頃の日中


[地域]


 ピラジシュト港


[現場詳細]


 漁村付近。海岸からほど近い、森の中の泉。


[不審者の特徴]


 外見は、人間の男。年層は、十代半ばから後半の少年。服装は、白いシャツ、黒いズボン。体型は痩せ型。髪の毛は、短髪黒色。瞳の色は、濃い茶色。身長160センチ~170センチ。


 女児の証言によると、肌の色は黄色味がかっており、顔立ちは平面的で、人間に見えるが普段目にする人たちとは雰囲気が異なり、奇妙な違和感を覚えた、とのこと。


[状況概要]


 漁村に暮らす女児(10)が水くみのため、ひとりで泉を訪れていた。(おけ)で水をすくっていたところ、後方から声をかけてきた者がいた。振り返ると、その不審者の男が、全身ずぶ濡れの状態で立っていた。「ここは一体どこなの?」と尋ねられたため、女児は現在地を告げ、いくつか言葉をかわした。すると男はとても驚き、頭を抱えてぶつぶつ独り言を(とな)えはじめた。


 全身がびしょ濡れのうえ、言動も怪しい。不審感を抱いた女児は、ひっそりとその場から離れようとした。だが、取り乱した様子の男に行く手を阻まれてしまった。


「ここはニホンでしょ!? トーキョーでしょ!? ネリマだよね!?」


 質問攻めにしてくる男は流暢(りゅうちょう)な人語を喋っていたが、よくわからない単語が多数混じってもいた。なかでも、『ニホン』という言葉を何度もくりかえした。女児は戸惑いつつも、一本二本三本……と棒状の物を数えるときに使う『ニホン』のことか?、と尋ね返せば、「違う!」と男は声を荒らげて激昂(げっこう)した。


 女児はいよいよ怖くなった。この人は、危ない人に違いない。いや、そもそも人間ではないかもしれないと思った。怖い顔で詰めよる男からは、(いそ)の匂いがプンプン漂ってくる。もしかしたら、海に棲んでいる魔物が人間に変身し、自分に問いかけ行為をおこなっているのかもしれない。答えられない場合に連れ去って食べられてしまうのかもしれない。


 質問に正解しなければと女児は必死になったが、ついには恐怖に()えかね、金切り声を上げて叫んでしまった。しかし、それが功を奏したようで。びっくりしたのか、男は慌てふためいたあと、森の中へ逃げるように駆けて行った。

¶関連記事¶

▼嵐のあとに

[No.52] 消失・行方不明になっていた男児を一ヶ月ぶりに保護!

[No.60] 海岸にシーサーペントの死骸打ち上がる

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ