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[No.52] 消失・行方不明になっていた男児を一ヶ月ぶりに保護!

 嵐が過ぎた翌日の、晴れやかな早朝だった。


 ライラさん(34)は毎朝、漁師の夫を《ピラジシュト港》まで見送ったあと、健康維持のため近くの海岸線をジョギングするのが日課である。この日は、前日走れなかったぶんまでカロリーを燃焼させてやろう、とはりきって走っていた。


「あれ? あの子、どうしたんだろう……?」


 小さな男の子が前方の浜辺を歩いていた。まだ五つか六つくらいの歳頃である。現在の波は穏やかだが、昨日までは荒れていたため、流木(りゅうぼく)などの漂流物も多い。そんな浜を朝の早い時間帯にもかかわらず、親の姿もなしに、覚束(おぼつか)ない足取りでふらふら歩いているのだ。


「どうしたの、ぼく? ひとりなの?」


「……ここはぼくがいた世界? ぼくは帰ってきたの?」


 男の子は目が(うつ)ろで、言っている内容もよくわからないものだった。

 ライラさんが名前を尋ねると、その子は『コリン』と名乗った。

 家の住所を()いて驚く。


「タシモカイド!?」


 《タシモカイド村》は内陸の村で、それも国境沿い。沿岸部のピラジシュト港とは、真逆も真逆。帝国の端と端という位置関係だ。小さな男の子がひとりで来れるとは到底考えられない。しかし、コリンくんは自分ひとりだけだと言う。


 ライラさんは、コリンくんを引き連れて自警団に相談しに行った。

 そして最終的に、約一ヶ月前、タシモカイド村で起こった『禁書読み上げによる男児消失事件』の当事者であることが判明したのである。


 自警団員のひとりがそのニュースを知っており、調査にあたっていた帝国軍へ通達。軍関係者らが訪れ、似顔絵と男の子の特徴が一致し、両親の名前も知っており、「黒い穴に吸い込まれた」という消失時の証言も、時空間魔法の禁書を読み上げてしまったルーシーちゃん(6)のものと状況が一致しているため、コリンくん(6)本人であると確認し、保護した。


 事件当初から捜査を行っているラシッド・ノア伍長(ごちょう)(22)によると、「とにかく無事だったことがなによりだ。コリンくんには記憶の混乱が多少見受けられるものの、健康状態に問題はない。消失期間中どこでなにをしていたか、などの詳しい聞き取りを進め、気持ちが落ち着くのを待ったのち、帝国軍が責任をもってタシモカイド村のご両親の元まで送り届ける」とのことである。


 ラシッド伍長の発言にあるとおり、無事な発見に至って、ご両親やルーシーちゃんもホッと胸をなでおろしていることだろう。早期再開が待たれる。


 なお、ルーシーちゃんは現在、タシモカイド村から帝都へ移住。『ダイヤモンド』の苗字(みょうじ)(さず)かり、ルーシー・ダイヤモンドと名を(あらた)め、帝国魔法科学校へ通学中である。

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[No.22] 禁書読み上げ 男児がこつぜんと消失

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