とある異世界の新聞記事より抜粋

MONTH 2

[No.36] 【広告】君も、筋肉を磨かないか？

　マッスル離れが顕著(けんちょ)である。

　剣技(けんぎ)習得が先だ？　魔法を使えるからいい？

　なっちゃいない！

　鍛(きた)え抜かれた己(おのれ)の肉体こそ真の武器！　鉄壁の砦(とりで)となるのだ！

　剣士諸君(しょくん)、軟弱(なんじゃく)なモヤシ腕から出される剣撃(けんげき)と、山のように盛り上がった上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)から繰り出される剣劇とでは、一撃の重みは桁外(けたはず)れである。魔法使い諸君、魔法が封じられた状況を想定してみたまえ、君は大腿四頭筋(だいたいしとうきん)を震わせるだけのお荷物と化してしまう。

　剣・魔法とは無縁な生活？

　いやいや待たれよ！

　一般市民諸君が望まなくとも、災(わざわ)いは向こうからやってくる。壁で囲われた都市であっても、魔物は出るときには出るのだ。それに、人多きところには犯罪あり。道すがら財布をスられて泣き寝入りした覚えはないか？　バーで酔っぱらいに絡(から)まれて殴られた経験は？　痴漢や痴女に路地裏に連れ込まれ押し倒された屈辱(くつじょく)は？

　まさかの時のマッスル自己防衛！

　筋肉の鍛錬(たんれん)は、百利(ひゃくり)あって一害(いちがい)なし。人生の基本といっても過言ではない。ゼロ能力うんぬんは筋力には関係なく、万人が平等であるのだ。筋肉は決して嘘をつかない、筋肉は決して裏切らない。汗の数だけこたえてくれる。三段腹は六つに割れ、胸筋(きょうきん)が歓喜に打ち震える。おのが拳で悪を打ち砕く快感に目覚めよ。

　鋼(はがね)のボディこそ、この世のすべて！

　武道家師範・ブライアンブランドンアンドリューが、手取り足取り指導してしんぜよう！　

　来たれ！　集(つど)え！　求めよ！

　我が〝マッスル道場〟は《リパーフート市》に在り！

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