[No.33] 【読者の集い】学校も親もクソくらえ
♀ ブレンダ 14歳(ナーダム村・退学志望学生)
わたしはブレンダ。一応今は学生をしてて剣術学校に通ってる。……けどもう無理。嫌で嫌でしかたない。我慢できない。学校に行くのなんか辞めてやる。
わたしが住んでるのは《ナーダム村》で、村内に学校なんてない。だから通学してるのは二十キロも離れた町にある学校。毎朝日が昇る前に家を出て、何時間もかけて歩いて、午前の授業がいくつか終わった頃にようやく学校の門をくぐる。それだけでも嫌になっちゃう。でも心底嫌なのは別の理由。
通学路に魔物が出るから。
冒険者やハンターの人たちから見れば下級の部類なんだろうけど、剣を習いはじめて間もないわたしにとっては恐怖の存在でしかない。とりわけ女の体を狙ってくるやつら。わたしのように、学校に通うため遠方から通って来てる学生は多い。そういう子たちは一度や二度ならず、危ない目に遭っている。そして中にはもちろん、死んでしまう人も……。
一週間前には上級生の男の子が、殺人蜂のバケモノどもの襲撃に遭い、体中を穴だらけにされて助からなかった。今週はクラスメイトの女の子が、不運にも食人鬼に襲われ、犯されたうえに食われて死んだ。
自分の身にいつ災いが降り掛かってきてもおかしくない。
なのに親は学校に行けという。
「いつまで寝てるの! はやく剣を持って学校へ行きなさい!」
と、母さんはわたしをベッドから叩き起こして、クソ重い剣を握らせる。
ほんと嫌になる。そんなに娘の身を危険に晒させたいのか? わたしには兄弟が多い。その実、口減らしで魔物に食わせようと目論んでいるのかとも疑いたくなる。
父さんの主張はこうだ。
「お前もイザベル・ワーナー少尉のような勇ましい女になって、帝国国民の役に立ち、称賛されるような人間になれ」
馬鹿なんじゃないかと思う。
ふたりとも、事あるごとにイザベル少尉の名前を出してくる。母さんは、「ベルちゃんは女性活躍社会における鑑なのよ」と言う。まあ、そういう一面はあるのだろう。この前の剣術武闘大会を遠路遥々観戦しに行った父さんは、「少尉の躍進ぶりをお前にも見せたかった」なんて、ずっと言っている。父さんのほうは、他の男ども同様に、おっぱいポロリの虜になって頭がパーになっているだけだ。
わたしはイザベル少尉のようにならなくたっていい。「男に守ってもらう時代は終わったの。これからは女も剣くらい扱えなきゃダメ」と母は口をすっぱくして言うけれど、そんなのはどうでもいい。守ってもらった方が、ぜんぜん楽ができる。男なんか尻に敷いて顎であしらえばいいのに。
だいたい、剣を習いに行って魔物に取って食われるとか、本末転倒。ここは市壁に囲まれているような安全な集合都市ではないんだ。そこで暮らす彼らは学んだあとに実戦になるんだろうからいい、でもわたしは学ぶ前から実戦投入されているようなものだ。身の丈にあった暮らしを送ればいいのに、親は都市部の意見に毒され過ぎてる。
わたしはゼロ能力にもかかわらず魔道具すら「高価で買えない」という理由から持たせてもらってない。無事で済んでいるのが奇跡なのに、「すぐに強くなるから心配ない」と父は途方もなく呑気なものである。ただの村人の小娘に剣技上達など期待してくれるな。
バカ親の怖さは魔物をも凌駕する。
このまま通学し続けていたら、遅かれ早かれ、私は死ぬ。
冗談じゃない。まっぴらごめんだ。
この手紙をポストに投函したら、学校に行くふりをして、親に連れ戻されないようなどこか遠い街まで行ってしまおうと思う。魔物に犯されて殺されるくらいなら、水商売でもなんでもやって暮らしていたほうが、よほどマシだ。
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