[No.28] 知人に暴行を働き男逮捕 〝英雄の剣〟をめぐり、いざこざ
捕まったのは《ジャンカード市》在住の男、ノーラン氏(44)、自称武器収集家だ。
ノーラン氏は、古物商を営む知人の男性を自宅に招いていたところだった。《ボルグチッタ町》で開かれた蚤の市(フリーマーケット)にて入手した〝英雄の剣〟を自慢するためである。氏いわく、人魔大戦期に帝国軍人が使用していた価値のある骨董剣であるとして、本来は数十万コバーンはする代物を、一万コバーンという破格の値段で購入したのだという。
しかし、古物商の知人の見立ては違った。ノーラン氏は〝英雄の剣〟だと言い張るが、知人の目には、どう見たって最近作られた価値のない剣にしか見えないのだ。
刃こぼれなどはあるものの、大戦期の代物にしては状態が良い。剣の鍔には帝国軍の刻印であるワイバーンの姿がある。だが、大戦期時代の刻印とはデザインが異なり、現代仕様のものになっており、あまつさえ彫り方の荒さが目立つ。帝国軍が使っているものであるなら、もっとちゃんとしている。とどのつまり、現代仕様品のたんなる粗悪レプリカ品にしか見えないのである。それで武器として使用不可なら、一万コバーンの価値さえもないのだ。
本物だ偽物だという言い争いになり、最終的にノーラン氏が手を上げてしまったという経緯で、自警団を呼ばれ、現行犯逮捕に至った。その後、一級鑑定士による鑑定も行われたが、古物商の知人が正しかったことが証明されている。
〝英雄の剣〟は、ただのボロボロの剣でしかなかったのだ。
「おいらを捕まえるなら、あの鼻垂れボウズも捕まえやがれ!」
と、逆ギレしたノーラン氏は何やら無責任に喚き散らしているようである。
コレクターだからといって、すぐれた鑑識眼を持っているとは限らない。
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