表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/170

[No.20] オーク討伐隊 ねぐらの洞窟で女性の遺体複数収容

 19日午後、オーク討伐とうばつ隊は、《ディストランテ山》の中腹にある洞窟どうくつ内で女性複数名の遺体を発見して収容、息があった一名を救出した。オークに連れさらわれていた被害者と見られる。


 ディストランテ山付近の村々では、女性が行方不明になる事案がたびたび生じていた。当初は各村内での不明者数が一人二人であったことや、他村間との情報交換不足によって原因特定が難しかった。付近の情報が伝わってくると、行方不明者が全員十代~二十代の若い女性であることから、不慮の事故ではなく、組織立った連れ去り犯行の線が強まる。


 警備を強化し、原因特定を急ぐ中、《ジレッヴィ村》で誘拐事件が発生。オーク三体が民家に押し入り、十代後半の少女が拉致らちされたのだ。村内の警戒にあたっていた自警団員二名がそれを発見して交戦を試みるも、太刀打たちうちができず、棍棒こんぼうによる反撃にあい、頭蓋骨陥没かんぼつや複雑骨折の重傷を負うことになった。


 この一件により、村々での行方不明事件はオークによるものと断定。各村内のハンター、ギルド派遣のハンター、訪れていた冒険者、自警団有志など(いずれも男性)による混成こんせい討伐隊が結成。オークが向った先のディストランテ山を捜索にあたっていた。


 そして19日明け方、ギルド派遣の熟練ハンターが、暗がりの山中をうろついていたオーク一体を視認。体長二メートルほどのオスの成体である。殺された鹿シカを引きずっていたことから、夜間に食料狩りに出かけ、ねぐらへ帰宅する途中であると判断。その場で交戦はせず、冷静に後を付け、崖下にあった洞窟に入って行くのを見定めた。


 混成討伐隊による一斉攻撃は、日が昇りきってから開始された。夜行性のオークが寝静まった時間帯を狙ったのだ。洞窟内に人質が居ることを考慮し、いぶしや焼き討ちは行わなず、潜入して討伐と奪還を行う難しい作戦である。しかし幸いだったのは、オークがねぐらにもちいる洞窟が、複雑化した迷路のようなつくりではないことだ。枝分かれの少ない単調な内部構造なので、戦力の分散を最小限にとどめることができた。


 読み通り、オークたちは眠りについていた。たいまつのあかりのなか各員が配置につき、魔法使いの発光魔法ののち、一挙にけしかける。装備はあらかじめ洞窟戦闘が念頭に置かれていた。大剣たいけん長槍ながやりの装備ではなく、大振りしても壁にはばまれないようなたけの短い武器での、心臓や喉元のどもとを狙った一撃必殺である。


 戦闘は終始有利に進んだ。おおかたのオークは眠っている間に致命傷を負い、息絶えた。第一波を逃れたものも混乱のうちにあり、それを多勢でもって一網打尽にするのは難しいことではなかった。混成討伐隊は中軽傷者を数名出したものの死傷は出さず。洞窟内にいたオークの成体と幼体、数十体を皆殺しにした。


 女性たちがとらわれていたのは、最奥部にある縦穴だった。入口は石板でふたをされて逃げ出せないようにされていた。穴の底に全裸で折り重なるように倒れており、ジレッヴィ村で攫われた十代後半の少女を除き、すでに全員が事切れていた。


 オークは蹂躙じゅうりんしていた女性が死亡すると、新たな女性を攫ってきていたものと思われる。遺体の損傷はどれもひどく、十代前半と見られる少女に至っては腹が内側から激しく裂けてしまっていた。唯一の生存者となったジレッヴィ村の少女は、あまりのショックで口がきけない状態だという。


「(自警団員)討伐には成功したものの凄惨せいさんな結末を迎えてしまった。原因の特定まで時間がかかってしまったことがやまれる。今後は周辺の村と連携をみつにする必要がある」


 これまでのオークによる女攫おんなさらいは、徒党ととうを組で村に押し掛け、何人もの女性を一度に攫って行くという手段だったため、特定するまでもなかった。しかしそれが今や変容してきているようである。人を攫う魔物はあまたあり、なかでも、陵辱りょうじょくや繁殖目的で女性が狙われるケースが後をたたない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ