表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
165/170

[No.165] 【読者の集い】いざ共闘へ!帝国軍がひた隠しにするD3特殊作戦群の全貌をここに告発する!

♀ オズワール 24歳(所在地不明・統一とういつ解放かいほう義勇軍ぎゆうぐん


 帝国軍の本拠地が置かれた《帝都ていと》では、日々、恐るべき実験が繰り返されています。


 防衛総司令部が管轄かんかつしている技術開発所。そこに〝D3ディー・スリー研究群けんきゅうぐん〟と呼ばれている公表されていない特殊作戦部隊が配属されています。D3とは、亜人あじん(デミヒューマン)をあらわす記号です。つまり、D3研究群とは、〝亜人研究群〟ということになります。名が示すとおり研究対象にしているのは、亜人種です。


 帝国軍は、近い将来、亜人種との全面戦争になることを想定しています。そこでD3研究群という研究機関を極秘裏に設け、亜人種個々における特性や能力を徹底的に調べ上げ、その弱点を探らせているのです。


 実行されているのは、想像を絶する人体実験。


 有効となる魔法の属性や効果的な物理兵器を調べるため、亜人たちが死に至るまで攻撃を加える。あらゆる毒物どくぶつ劇薬げきやく等の投与をおこなって耐久力を試験し、死に至るまで経過観察をする。病気やのろいを治す特効薬とっこうやくに使えないかと血液や臓器を抜き取り、ときには生きたまま解剖かいぼうする。帝国軍が言う『亜人種の殺処分さっしょぶん』の内実は、こういうことです。

  

 魔物の血が半分ざっているということだけで、亜人たちは罪もないのにただ一方的に捕らえられ、強制連行されたのち、魔物同様の扱いで、実験台の上に乗せられてしまっているのです。


 D3研究群が実施しているのはこれだけに留まりません。


 おぞましい繁殖はんしょく実験じっけんにも着手しています。


 どのような魔物からでも亜人は誕生するのか?


 それを調べるため、罪人ざいにんを使い、魔物との性交渉を無理いさせているのです。また、調査対象にしたい亜人種がどうしても捕らえられないときには、親となる魔物を捕まえてきて、罪人と交配こうはいさせるというようなことまでやっています。


 これらはもちろん雑交体ざっこうたい製造せいぞう防止法ぼうしほう(アンチキメラ法)に、明確に違反するものです。人間と魔物のわせ実験は、魔物同士の掛け合わせよりも、罪が重い。そうさだめた軍自体が、法律を反故ほごにしています。


 そして現在では、交配実験は次の段階に移行しています。


 亜人同士の血が混ざったら?

 亜人と魔物が混ざったら?

 亜人と純血統じゅんけっとうの人間が混ざったら?、どうなるか。


 生まれてくる子孫しそん継承けいしょうされていく特性の検証に移っています。


 このこころみは、すでに、世代をまたいでおこなわれています。想像以上に進行しています。きっと信じられないという方がほとんどでしょう。ですが、……


 帝国軍には、交配実験によって世の中に産み落とされた、亜人たちで組織される秘密部隊が存在しているのです。


 D3研究群から誕生した彼らは、新生児のときから〝D3ディー・スリー特殊とくしゅ作戦群さくせんぐん〟の所属となります。そして物心がつく前から英才教育という名の洗脳をほどこされます。まず叩き込まれるのが、自分たち亜人が、どれほど下等かとうまわしい存在か、ずかしい存在なのかということ。そして、純血統たる人間のために、皇帝こうてい陛下へいかのためにくすべく生まれてきたのだと、徹底的に教唆きょうさされ、忠誠ちゅうせいちかわされることになります。


 彼らは、性行為は任務のためにあるのだと教育されます。これは将来的に先の交配実験に使用することを見込んでのものです。また、亜人と人間の交配実験をねた、帝国兵の慰安いあん任務に動員されるためでもあります。このとき人間の親が誰であるのかを有耶無耶うやむやにしてしまう目的で、一度に不特定多数と交わることを強制されます。みな疑念など持たず身をささげます、なぜならば、任務だからです。実質的にはもう性奴隷でしかないのに……。


 万が一、任務にそむこうとする者があれば、その者は重大な軍規ぐんき違反いはんとなります。これは洗脳失敗の現れとされ、不良品の烙印らくいんが押されてしまい、名実ともにレイプと化した交配実験で激しくおかされたのち、実験台送りにされます。帝国軍式『亜人種の殺処分』と同じ末路が待ち構えているのです。


 彼らはまた、スパイ要員としての教育も施されます。帝国が敵対している隣国の《セネショア共和国》に送り込み、諜報ちょうほう工作こうさく活動をさせることが狙いです。亜人撲滅を掲げている帝国が、まさかその亜人によって組織された部隊など送り込んでくるはずがない。その裏をかき、もう何人ものスパイが投入されています。


 私たち統一解放義勇軍の共和国側の同胞どうほうすじから、亜人スパイが小事しょうじから大事だいじまでの様々な工作をくわだてているということが、明らかにされています。とりわけ、殺人や強姦ごうかんなどの凶悪犯罪を引き起こした亜人は、ほぼ全てが帝国側からの工作員だと特定されています。亜人種と人間のあいだに軋轢あつれきを生じさせ、共和国内で、亜人に対しての反発の声を高めることが狙った偽旗にせはた作戦さくせん。それが横行しているのです。


 帝国が領土と主張する《ドライエート山》を共和国が占拠せざるを得なくなったのも、スパイの工作活動が原因です。


 帝国軍は共和国内で暮らしているエルフを拉致らちしています。


 行き来する経路に使われていたのがドライエート山でした。食い止めるために進軍せざるを得なかったのです。そしてこの拉致作戦を担っているのが、D3特殊作戦群に所属する亜人部隊なのです。


 拉致の被害にうエルフは、共和国軍側の動きを探る狙いもあり、軍属ぐんぞくが多いです。拷問ごうもんをして情報を聞き出し、長寿ちょうじゅ秘訣ひけつを解明するための実験台にされ、容姿が端麗たんれいであることから毎晩のようにレイプが繰り返される。そうして生まれた〝ハーフエルフ〟が亜人部隊の隊員として組み込まれていく……。


 一旦、話を交配実験に戻します。


 亜人同士が世代をて掛け合わさった結果がどうなるのか、気になりませんか?


 私がお教えしましょう。 


 たとえば、頭につののある亜人と臀部でんぶ尻尾しっぽのある亜人が、子を産んだとします。その子どもには、両親の角と尻尾ががれますが、大きさはかなり目立たなくなります。このように、次世代には、外見的特徴が半減以下となって、純血統の人間に近づきます。しかし、腕力が強い、足が速い、臭覚に優れる、などの身体能力に関しては、低下はすれど、それでも人間離れしているほどに残るのです。


 数世代後ともなれば、見た目はほぼ人間であるのに、基礎能力値は人間のそれを大きく上回った存在――超人ちょうじんが誕生します。


 現に、存在しています。


 超人たちは、自分たちが混じりっけのない純血統の人間だと思っていることでしょう。なぜならば、彼らには親代わりとなる人間が与えられることになるからです。みずからの誕生経緯は伏せられたまま、ごくふつうの人間として育てられていき、最終的には、軍のエリートになることが約束されてもいます。


 みなさんには思い当たる人物が居るのではないでしょうか?


 並外なみはずれた身体能力を有し、若干18歳にして少尉しょういの階級に着き、帝国屈指の飛竜戦闘部隊に所属。ワイバーン部隊の飛行隊長に任命されている〝あのおかた〟が、その一人です。〝彼女〟の耳の形状をよくご覧になってみてください。帝国国民がきらっているエルフの名残をうかがうことが出来ることでしょう。


 亜人の子孫が純血統の人間として部隊に配属されている。本人は亜人の末裔まつえいであるにも関わらず、そうと知らず、亜人たちの撲滅に加担してしまっている。いいように利用されている。軍部の人間でも、この事実を知っているのは一握りでしかないはずです。


 最後に、私が何故このような秘匿ひとくされた内情に詳しいのかもお答えします。


 私の名はオズワール、元帝国兵です。


 所属していたのは、D3特殊作戦群。


 交配実験という名の強制性交により、名も知らぬ父と母、鬼人おにびと(鬼種族との混血児)と犬人いぬびと(魔犬種族との混血児)の間に生まれた亜人二世。


 かつてはエルフの拉致をおこなっていた実行部隊の一人。


 今は、私のような不良品の脱走兵で組織された、統一解放義勇軍の一員です。

 

 悲しみとにくしみの連鎖はもうおしまいにしましょう。


 これをもって、帝国軍打倒の共闘きょうとう表明といたします。

¶関連記事¶

▼エルフ・亜人

[No.64] 女児が〝エルフ〟制作の木彫り人形を所持 譲渡した男の行方を追う

[No.96] 【お悩み相談】どうして裸の女性をした魔物が多いの?

[No.122] オール・ユー・ニード・イズ・イマジン -人類存続の鍵をにぎる『亜人撲滅強化月間』が今年も始まる-

[No.164] 【読者の集い】打倒せよ!すべては帝国軍部とドワーフによる陰謀が元凶だ!

▼雑交体製造防止法(アンチキメラ法)

[No.111] 【読者の集い】見世物小屋は死んじまったのか?

[No.133] ぞくぞくとあぶり出されるアンチキメラ法の違反者

[No.146] 〝賞金首アナ〟と〝のぞき詩人マシュウ〟が、グルに

▼ドライエート山

[No.107] 帝軍 山岳地帯で共軍と鉢合わせ にらみ合いに突入す!

[No.130] 帝共両軍 一ヶ月たっても にらみ合い続く……

[No.132] 領山不法占拠事件に関する国民の意見

[No.162] 武力衝突発生! 帝国軍が奇襲され応戦!

▼あのお方

[No.10] 第100回帝国剣術武闘大会・男女混合の部 イザベル・ワーナー 女性として初の優勝

[No.25] 帝国航空竜騎兵団による航空祭 空を舞う飛竜に観衆熱狂

[No.68] 国籍不明のグリフォン騎兵部隊 人魔大戦後初となる〝領空侵犯〟

[No.92] サテュロスに狙われた美少年 演習から帰投中のイザベル少尉が救う!

[No.144] 発明王パーシー博士が衝撃の逮捕 女性新聞記者を惨殺、亜人開放戦線と結託、世紀の大発明は捏造品!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ