[No.162] 武力衝突発生! 帝国軍が奇襲され応戦!
三ヶ月に及んだにらみ合いの均衡が、ついに破られた。
帝国軍は、セネショア共和国軍による不法占拠が続いている我が国固有の領山《ドライエート山》で、昨日11日未明に小規模な戦闘が生じたと発表した。共軍の小隊が闇夜にまぎれて奇襲してきたことにより、帝軍がやむをえず応戦するかたちとなって偶発的な交戦状態に突入、その後まもなく敵勢力を撃退して事態を沈静化させたとのことである。
この戦闘により、最前線での警戒任務にあたっていた帝国陸軍・第38山岳師団(通称:サンパチ師団)の兵士数名が負傷。さらに、追加派遣されていた竜騎兵部隊の使役竜〝ラプトル〟二頭が、野営獣舎内で寝込みを襲われて惨殺された。
また、帝国軍は、襲撃してきた共軍の小隊を指揮していたと見られる〝エルフ〟の女兵士一名を捕虜にしたことを明らかにしている。
現地指揮補佐のラシッド・ノア伍長(22)。
「今回の夜襲は、われわれ帝国軍が所有する使役戦力を削ぐことを念頭にしたゲリラ作戦だったと思われる。野営獣舎においてラプトル二頭を殺傷後、歩哨に立っていたサンパチ師団の隊員らに発見されことで、一方的に、攻撃を仕掛けてきたと報告を受けている」
ゲリラ作戦に参加していたと見られる敵戦力は、7名ほどの分隊規模の歩兵。人間の男性によって構成されていたが、そこに一名だけエルフの女兵士が参加していた。交戦により、共軍の人間兵士三名を殺害。女エルフ兵を捕縛した。残る兵員は共軍陣営へ逃げ帰ったとしている。
捕えた女エルフ兵の武具には共和国軍における下士官階級の刻印が施されてたことから、急襲部隊を指揮していた人物と考えられている。女エルフ兵が負傷していることもあり、帝国陸軍は、彼女を前線から後方の基地へ移送したのち、詳しい聞き取りをおこなっていく予定だ。
「人魔対戦以降初となる武力衝突が起こり、わが軍から損害が出る結果となってしまったことは、誠に遺憾である。しかし、われわれは、これ以上の武力行使は望まない。対立が激化しないよう、話し合いでの解決に務めていく」
こうした中、帝国軍部内からは、今回の遊撃事件は、人人戦争を誘発させるための揺さぶりだったのではないかという声もあがっている。膠着状態に業を煮やし、共軍上層部に暗躍しているエルフが企てた、両軍を衝突させるきっかけを作るための工作作戦。そういった見方もできる以上、報復行動には慎重にならざるを得ないのである。
今後、帝国内で活動している親エルフ派の勢力が、両国間の対立を煽る動きに出てくる恐れがあるとして、帝国軍では、誤った偽の情報に踊らされることのないよう、国民に細心の注意を払って欲しいと強く求めている。
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