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[No.159] 【読者の集い】僕が主人公じゃないの!?と思ってるマレビト達へ

♂ ヒロト 16才(ネリマ出身・コウコウ生)


 ここに来て三ヶ月も過ぎたのに、何も起こらないじゃないか!

 ただ月日が経っていくだけで、何も進展しないんだよ!

 なにがどうなってんの!?

 もう我慢できない!

 誰か僕を助けてくれ!

 こんな狂った世界からはやく出してくれよ!


 ねえ、僕が主人公じゃないの!?


 だってこれはどう考えたって転生とか転移とかが、起こっちゃってる感じだよね。そうとしか考えられないよね。だったら僕が主人公ってことでいいんだよね!? なのに三ヶ月も事態が進展しないなんて、やばいよね!


 主人公補正された能力とかいつになったら開花するの? 剣なんてクソ重くて振れたもんじゃないし、魔法だって一向に使えるようにならないんだけどさぁ! 剣と魔法の世界で、ただの無力な人間のままなんだけど。え? おかしくない? おかしいよね? 誰か説明してよ! そういうキャラが出て来るんじゃないのかよ!


 ……いや、ちょっとそれっぽい人には一度ったんだよ。ナビゲーター役っぽい男? FFのチョコボみたいな走る鳥に乗った男で。たぶん年は僕より二三個上。それはいいんだけど、その人から言われたんだ「君はこの世界の住人じゃないよね」って感じに。


 ついにキター!って思ったよ。それで聞いたんだ、「僕はこれからどうすればいいの?」って。異世界転生とか転移とかしてきたからには、僕は、この狂ってる世界を救う救世主みたいな存在のはずで、これから仲間を集めて、冒険に出なければいけない。そういう筋書きのはずだろう? でも、その男は「たぶん違う」って言ってきたんだよ。


「君はただ単に迷い込んでしまっただけだ」って。


 はぁ?ってなるよね。じゃあ、どうやったら元の世界に帰れるのか聞いたんだよ。そしたら、


「わからない」って。


 また、はぁ?ってなるよね。


 動揺しちゃってると、その男が続けてきたよ。僕のような存在は〝マレビト〟と呼ばれていること、マレビトたちは来た方法も帰る方法も自分ではわからず、なぜか自分のことを救世主と思い込んでいる人物が多いこと、しかし実態は、何の変哲もないただの人間であること。――ということは、知っている、って。


 いやいやいや、そんなことを告げられたところで何の説明にもなっていない。だからとにかく、僕はこれからどうすればいいのか口酸っぱく聞いたんだよ。そしたら何て答えたと思う?


「オレに答えを求められても困るよ」と、その男は眉をひそめたよ。「君自身のことだからね。ただ、現状を受け入れて、この世界で生活を送るのほかにすべはないと思う」


 だってさ。


 ふざけるな!


 こんな狂ってる異世界で暮らしていけるわけないだろう! 


 最初はさ、ちょっとエロいラノベ的異世界に来ちゃったかなってワクワクもしたよ? だって、貞操観念が破綻しているような人が多かったから。でも普通にヤバかったんだよ。なんだっけ、ほら、『ベルセルク』とかいう漫画、知ってる? そっち系のダークすぎるヘビーな剣と魔法の世界だった……。


 うろついてる魔物がR指定級のガチなやつばかりで、リザードマンの卵を産まされたとか、オークにさらわれて犯し殺されたとかいう話が日常的。それりゃもう貞操がどうたら言ってる次元じゃないし、そこへ、能力補正もないネリマに住んでただけのごく普通のコウコウ生がブチ込まれてみなよ、漫画の一コマの外れで、魔物に殺されてる村人Aになるのも時間の問題だから。


 三ヶ月生き延びているのが奇跡。たぶんそれは言葉が通じているおかげなんだ。わけわかんないけど、人語って呼ばれているのはニホン語だし、精霊語っていうのもニホン語なまりのエイ語だしさ。それで、やりたくもない土方どかたの仕事にありつけて、どうにか食いつなげていけてる。


 でも、もう限界。耐えられない。ナリマスが恋しい。


 とにかく帰りたいんだって、その男の人には訴えたけど、困惑げに首を横に振られておしまいだった。せっかくナビゲーター役が出てきたと思ったら、どうしようもないと言われて立ち去られた絶望感がわかる? ソシャゲならチュートリアルで、この世界でふつうに暮らせ、って言われて、ゲーム自体が終わった感じだよ?


 ありえない。


 だから僕は今、この絶望感をわかってくれる人を、この新聞で探しているところなんだよ!


 すくなくとも、チョコボモドキに乗った男の人と出会ったおかげで、僕みたいにマレビトと呼ばれ、この世界に飛ばされて来ているような人が他にいるってことはわかった。これはつまり、その人達と接触しろ、ってことなんだと思う。そうじゃないと困る。


 このオカシな記事の内容を理解してくれた、そこのあなた!

 お願いだから大至急、僕と会ってください!

 僕が現在住んでいるのは、〝シージメスト町〟です!

 この異世界からおさらばする方法をいっしょに探しましょう!

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