[No.123] 【読者の集い】ジェシー先生好きじゃあああ!
♂ メンゾ 24歳(ボルグチッタ町・読書家)
僕はJ・C・ストーンズ先生の隠れ大ファンです。デビュー作の『魔物合格』を読み、心臓に電撃魔法を打ち込まれたような衝撃を受けて以来、既刊本をすべて読み漁り、この新聞も先生の連載小説目当てで購読しています。
先日の、新聞童話『デュラハンちゃん』連載休止のお知らせは残念でした……。
でも、地の文をはぶいてセリフを多く取り入れるようになってきていたので、読書仲間と、そろそろ逃げ出すころなんじゃないかな、と話したりなんかして、心構えはできていました。先生の悪い方の特徴ですよね。前作の『メフィストくん』のときも、そうでしたから。これで、セリフ多様は作家逃亡を働く前兆説、は立証されたという感じです。
それはそうと……。
いつもの休載報告だけではなく、覆面作家である先生の素性を暴露してバウンティーハンターを使って連れ戻しにかかるとか、小説のようなことが書かれていて、それには驚かされましたね。どうせ脅しなんだろうな、なんて思って読み進めてみたら、本当にお尋ね者登録を済ませて情報公開していたので、ぶったまげました。
本名:ジェシー・オーサム
性別:♀
年齢:24才
という記述を見て、さらに大仰天。
本名がジェシー!? 女性作家!? しかも僕と同い年で、まだ若っ!?
エグ味が強い小説の内容や、いくぶん古風な文体、作家名の語感からてっきり、中年ほどで貫禄のついた男性作家さんとばかり想像していたので、手配似顔絵に描かれているドえらいべっぴんさんの顔が視界に飛び込んで来た時にはもう、心臓を火炎魔法でメラメラ焼かれるような衝撃でした。
なぜ素性を隠した覆面作家として執筆なさっていたのでしょう?
精霊から祝福を授けられたような美顔を宣伝材料に使われたくない、本に紡がれた文章の内容だけで評価されたい、というような信条なのでしょうか。たまに、小説の体裁をかろうじて保っているだけで、作者の容姿性でチヤホヤされているだけなのに、誰にでも書けるような内容を評価されていると本気で勘違いをしている冒険者作家さんなどが居ますが、そういうなんちゃってな連中と同じに扱われたくないということなのでしょう。いいえ、そうに違いありません!
内容勝負師たるジェシー先生の、そのスタイルに、惚れました!
僕はますますファンになってしまいましたよ!
好き!好き!大好き! 結ぼれるまでに愛してる!
お尋ね者情報で公開されていた先生の自由奔放そうな特徴も、作家らしく自堕落で破綻していて素晴らしいではないですか。
男性作家さんだと勘違いしていたときには、私生活ではオンナをとっかえひっかえしていそうだな、と思っていたのですが、女性作家さんということなので、オトコをとっかえひっかえしているということで、合ってますよね? 行きずりの男をつかまえて心中ごっこをしちゃうくらいですから、誰とでもいいということになりますよね?
新聞社がぜひともジェシー先生を連れ戻して欲しいということなので、いちファンとして、僕も一肌脱がせていただきます。この手紙を投函し終えたら、即、ジェシー先生の捜索に乗り出しますよ。
先生の書き置きには、『温泉に浸かりに行く』と残されていたそうですが、温泉地はいたるところに遍在してしまっているので、ズバリと当てて行かないと、バウンティーハンターや他のファンに先を越されてしまいそうですよねぇ……。
ここは帝国内有数の泉質を誇っている《ナルゥガッタ郷》と踏んで、向かってみることにします! 必ずワンチャンをものにして見せますよ!
吉報をお待ち下さい!
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