表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/170

[No.12] 駆け出し冒険者の少年少女 窃盗及び器物破損で逮捕

 こりをしているシルヴェスター氏(36)が森から自宅へ戻ると、屋内が荒らされていた。留守中に物取りが侵入したのだ。タンスの引き出しという引き出しが引き出され、クローゼットの扉も開け放たれている。タンスからは薬草が無くなり、クローゼットからは中折なかお帽子ぼうしが消えていた。そして犯人はまだ家の中にいるようだ……。


 シルヴェスター氏は物音が聞こえてくる部屋に向って静かにあゆみを進めた。ドタバタと荒らし回っている様子から一人ではない。複数犯のおそれがある。山賊さんぞくかもしれないが、このまま見す見す放って置くわけにはいかない。

 手斧ておのを握りしめ、思いきってドアを開けた。


「……子供?」


 室内にいたのは十代半ばの少年と少女だったのだ。少年は薬草を手にし、頭には中折れ帽子を被っている。少女は、木の実を保管しているつぼを高らかにかかげ上げて、今まさに叩き落さんとしていた。思わぬ犯人の姿に呆気あっけにとられていると、壺は少女の手から離れ、床で、ガシャン!、と割られてしまう。


「何をやってるんだ、お前ら!?」


 シルヴェスター氏はすぐさま取り押さえようとしたが、木の実を踏みつけ転んでしまった。少年少女は怒鳴り声で氏の存在に気づいたが、激しく転倒してもがく様を見て、すぐには逃げ出さず、散らばった木の実に混じっていたコバーン硬貨こうかを拾い上げる。


「やっぱりヘソクリは壺に入ってるのね」

「ちぇっ、5コバーンかよ。しけてんな」


 捨て台詞を吐いて窓から逃げて行ってしまった……。


 結局、その少年少女は隣村でも同様の盗みを働き、窓から出てきたところを不審に思った付近の住民が自警団に通達つうたつ、取り押さえられる流れとなった。

 身柄を拘束こうそくしている自警団の話によれば、ふたりとも《ギニングスター村》の出身で、年齢は14歳になったばかりらしい。


 盗みに入った理由を聞いてあきれてしまった。

 冒険者になってやろうと村を旅立ったはいいものの、剣も魔法もさっぱりなので、何をすることもできず、あっというまに軍資金ぐんしきんが底をつき、生活に困窮こんきゅうして人様の家に侵入、金目の物を盗んでいたのだという。

 ダンジョンに入らず民家に押し入ってたと知ったら、親御おやごさんもむせび泣くに違いない。


 自警団ではまだまだ余罪よざいがあるとして、二名を留置場りゅうちじょに監禁し、取り調べを続けている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ