[No.12] 駆け出し冒険者の少年少女 窃盗及び器物破損で逮捕
木こりをしているシルヴェスター氏(36)が森から自宅へ戻ると、屋内が荒らされていた。留守中に物取りが侵入したのだ。タンスの引き出しという引き出しが引き出され、クローゼットの扉も開け放たれている。タンスからは薬草が無くなり、クローゼットからは中折れ帽子が消えていた。そして犯人はまだ家の中にいるようだ……。
シルヴェスター氏は物音が聞こえてくる部屋に向って静かに歩みを進めた。ドタバタと荒らし回っている様子から一人ではない。複数犯のおそれがある。山賊かもしれないが、このまま見す見す放って置くわけにはいかない。
手斧を握りしめ、思いきってドアを開けた。
「……子供?」
室内にいたのは十代半ばの少年と少女だったのだ。少年は薬草を手にし、頭には中折れ帽子を被っている。少女は、木の実を保管している壺を高らかにかかげ上げて、今まさに叩き落さんとしていた。思わぬ犯人の姿に呆気にとられていると、壺は少女の手から離れ、床で、ガシャン!、と割られてしまう。
「何をやってるんだ、お前ら!?」
シルヴェスター氏はすぐさま取り押さえようとしたが、木の実を踏みつけ転んでしまった。少年少女は怒鳴り声で氏の存在に気づいたが、激しく転倒してもがく様を見て、すぐには逃げ出さず、散らばった木の実に混じっていたコバーン硬貨を拾い上げる。
「やっぱりヘソクリは壺に入ってるのね」
「ちぇっ、5コバーンかよ。しけてんな」
捨て台詞を吐いて窓から逃げて行ってしまった……。
結局、その少年少女は隣村でも同様の盗みを働き、窓から出てきたところを不審に思った付近の住民が自警団に通達、取り押さえられる流れとなった。
身柄を拘束している自警団の話によれば、ふたりとも《ギニングスター村》の出身で、年齢は14歳になったばかりらしい。
盗みに入った理由を聞いて呆れてしまった。
冒険者になってやろうと村を旅立ったはいいものの、剣も魔法もさっぱりなので、何をすることもできず、あっというまに軍資金が底をつき、生活に困窮して人様の家に侵入、金目の物を盗んでいたのだという。
ダンジョンに入らず民家に押し入ってたと知ったら、親御さんも咽び泣くに違いない。
自警団ではまだまだ余罪があるとして、二名を留置場に監禁し、取り調べを続けている。