閑話 ネル=へミング その3
よろしくお願いします。
詳しい経緯はよくわからないのですが、トム様はリンドルという街の領主になられることが決まりました。
そこに私は、トム様の相談役としてご一緒させていただくことになりました。
何でも安心して前の世界の知識を使って話せるのはお前だけだ、と。
領主様が。
領主様の元で働く弟に中々会えなくなるのは少し寂しい気もしますが、それより大きな期待がありました。
なぜならあのトム様の元で働けるのですから。
トム様は私の授業中に色々前の世界の知識を教えて下さいました。中には私には全く理解できないものまで。
そんな豊富な知識のトム様が領主になる。私はどうしても期待せずにはいられませんでした。何かやってくれるのでは、と。
でも、それは一瞬で絶望に変わりました。
リンドルについたときのあの光景は、一生忘れはしないでしょう。
あの荒れ果てた街を。
なぜこんな場所を......
私はすっと口に出してしまいそうでしたが、すぐにつぐみました。
きっと触れてはならない何かがあるのでしょう。
しかし、トム様は決して諦めてはいませんでした。
あの方は持てる知識を使って、どんどん街を発展させていきました。
一年ほどたった今では、昔の姿を想像できないほどに。
わたしはトム様の仕事についていくのに必死で、とても忙しい日々を送っていました。でも、あの街に活気が戻っていく様子を見ると、凄くやりがいがあり、嬉しいことをさせて頂えているのだとつくづく思っておりました。
でもやっぱり、これだけのことを全て一人で考えてしまうトム様。本当に凄いお人です。
いつしか私はトム様を崇めていると言っても過言ではないようになっていました。
ある日、「北で戦争が起こった」と報せがきました。
これから仕事が大変になるなと私は思いながら、いつもの通りトム様の近くで仕事をしていたのですが。
そこにはいつもとは違い、顔が青く足が震えているトム様が。
あのトム様が怯えている。
私は気づきました。
私は今まで何をしていたのだ、と。
トム様も人間。怯えることもあるのです。何もかも全てできるわけがないじゃないですか。
それなのにいつも必ずトム様を心のどこかで頼り、何でもやってくれるとプレッシャーをかけていたのは、私ではないですか。
でも、今さら後悔しても遅いです。やれることをやらないと。
私は必死に励ましの言葉をかけました。私もとても焦っていましたので、うまくできたとは思えませんが。
私は失格ですね。いつも側にいるのに頼られない、いや、こちらがずっと頼りっぱなしになっているんですもの。
本当は補佐として頼られなければならないのに。
トム様。申し訳ありませんでした。あなたも一人の人間だということを理解できておりませんでした。
これから私は一層頑張っていきます。
ですから、私達を頼ってください。そして、
決して無理をなさらないでください。
あなたは人間なのですから。
ありがとうございました。
ひとまず今回で閑話は終わりにします。
これからは視点を戻して頑張っていきます。
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よろしくお願いします。




