漫才「猛暑」
漫才13作品目です。どうぞよろしくお願いいたします。
この作品は、YouTubeにも投稿しております。
アナウンサーと気象学者の会話
「田園調布で日本一の猛暑を記録したようですが」
「ついにこの日が来たか、そういった心境です」
「すると、先生はこれを予想されていたと?」
「もちろんです・・・うほん」
「・・・うそなんでしょ」
「すみません」
「田園調布、いままでは猛暑地域としては注目されていませんでしたよね」
「ええ。閑静な住宅街といったイメージですからね」
「今回の記録更新の要因は、解明されているのでしょうか」
「ええ。今年の夏が特に暑かったからなんですね」
「どこも暑かったですよ」
「確かにそうでしたが、それに加えて、ここがお屋敷の多い土地柄であるということが大きく関係してくるんですね」
「といいますと」
「エアコンをガンガン使ったので、室外機から熱が外に大量に放出されました。それが気温アップにつながったわけです」
「それも、どの地域でも同じなのでは?」
「問題はエアコンの数です。普通の地域ですと、一家に一、二台から、多くて三、四台といったところでしょ」
「でしょうね」
「田園調布のお屋敷は、家じゅうがエアコンだらけなんです。十台、二十台は当たり前」
「すごい」
「部屋数が多いうえに、廊下、トイレ、ふろ場、サウナ室にも暑いからといってエアコンをつけているんですね」
「なるほど」
「室外機から放出される熱が熱いということで、庭にもエアコンを設置しましてね、これが町中に広まりました。各お屋敷が、敷地内すべての場所を冷やしてしまったわけです」
「庭をエアコンで冷やすなんてことができるんですか?」
「巨大な特注品です。太陽も冷やせる代物です」
「うそですよね」
「すみません、言い過ぎました」
「市販のものよりもかなり強力なエアコンを用意したということですか」
「そうです、その特注品を何台も設置しました。それに、掛けることのお屋敷数になるわけですから」
「電気代が心配になりますが」
「これも田園調布ならではということになります」
「といいますと」
「快適さのためなら、多少の出費は惜しみませんからね」
「多少ですかねえ」
「なんといっても田園調布ですから。なかには自前の発電所を持っている家もありますしね」
「桁違いですね」
「おかげで敷地内は、どこに居ても快適なわけです」
「当然、外はとんでもない温度になりますね。快適さとは程遠くなると思いますが」
「みなさん移動は車ですから、町の人たちにとってはなんら問題ありません」
「なるほど」
「で、今回の猛暑の日本記録更新となったわけです」
「まだ暑さは続くとの予想がでていますが」
「へたをすると、記録が百度の大台に届くかもしれませんね」
「・・・」
「すみません。調子に乗り過ぎました」
読んでいただき、どうもありがとうございました。