3、テストプレイの後に童貞であることが発覚する
○オドバシアキバ・6階売り場・午後五時
カメラ、天井からゆっくり降りるように『恐竜ハンター・キャラバン T名人が来る!』の広告ナメ、T名人が司会者として携帯ゲーム機を操作する子供たちに何事かを教えているカット。指の体操をさせているカット。
カメラ、レジに殺到する客たち。レジで対応する頭に絆創膏を張った伊藤と、時々腹をさする安藤。ゲームソフトの並ぶ棚の前で子供たちの質問に答える腕に包帯を巻いた林原と琴橋
○夜の秋葉原上空・午後九時
上空からの秋葉原の眺め。
○オドバシアキバ・6階売り場・午後十時前
客が少なくなった店内に閉店前の「ほたるの光」の曲と場内アナウンス。
アナウンス「本日はオドバシカメラ秋葉原支店、通称『オドバシアキバ』にお越しいただき、まことにありがとうございます。まもなく閉店時間でございます。どなた様もお忘れ物のないようお帰りください。またのお越しをお待ちしております」
客が帰った後のゲーム売り場、伊藤と林原と琴橋の三人が集まる。何事かを雑談後に、
伊藤「それで『恐竜ハンター』の製品版がきたけど、“ツーオンツー”の対戦モードのテストプレイどうするよ」
林原「けっこう質問がきたけど俺たちがプレイしないと、子供たちに解説できないしね」
琴橋「これからテストプレイしなけりゃならんが、もう一人呼ばないと“ツーオンツー”は出来ないぞ。あといつものワイ談もなー」
林原、安藤を指差す。
カメラ、安藤に焦点、画面奥に三人組の構図。安藤、ゲーム特典の美少女フィギュア数体をディスプレイ内に配置している。
林原「彼はどうですか?」
伊藤「あいつはアクションゲームじゃなくて、ギャルゲーとか萌えゲー専門だろ」
琴橋「でもギャルゲーでもアクション要素のあるゲームもありますよ。例えば『クギュ×ソード』とか」
伊藤「まぁ、声をかけるだけ、かけてみるか」
伊藤、安藤に近づいて声をかける。琴橋たちも続く。
伊藤「安藤、俺たちはこれから居残って、『恐竜ハンター』のテストプレイをするんだが、メンツが足りないんだ。チームに入ってくれないか?」
安藤「ああ、いいとも」
琴橋「悪いな」
琴橋と林原と伊藤の三人、お互いの顔を見合わせてニヤリと笑いあう。
○オドバシアキバ正面玄関・午後十時
シャッターが閉まる玄関。
○オドバシアキバ・6階売り場・午後十一時
テストプレイのためのテーブルの上だけ照明がつき、他は真っ暗。
テーブルの上には缶ビールが四つ置かれている。
天井からカメラ、テーブルの中央に焦
点、四方から携帯ゲーム(PSP?)が画面内に入る。
テーブルを囲む男四人。
伊藤「おしッ。はじめるぞ」
伊藤、缶ビールを開けて、一口飲んでから、携帯ゲーム機を構える。
琴橋「ステージは『イリュ平原』で、ボスは『イクオリ・ザウルス』。ただしボスのいるエリアへのゲートを開けるには……」
林原「各プレイヤーが首から提げている『プナメダル』を二つ取る必要があり、ボクと安藤先輩が赤チーム」
安藤「じゃあ、ボクは伊藤さんと琴橋さんが操っている青チームのキャラを倒しに行けばいいんだね」
伊藤「ところが、倒しにいくにもレーダーには発見しない限り、敵チームのいる場所がわからないようになっているから、まずは味方同士が合流するところから始めなければならんとっ、あぶねー。あやうくブラキオザウルスに踏み潰されるところだった」
琴橋「(怒り)おい! 場所をバラすなよ」
林原「ブラキオザウルスってデカいし動きがトロいから平原ステージじゃ、よく目立つなー。安藤さん、そっちに琴橋さんが行ったよ」
琴橋「なにっ! 早くもマーキングされただとぉ!」
安藤「おっ、青マーク出た。弓出して発射」
琴橋「やられた! 伊藤、早く来い!」
伊藤「うわっ、こっちも林原にマーキングされてるよ」
琴橋「ち、ちょっとタイム!」
琴橋がゲーム機のスタートボタンを押すと、他の人のゲーム機の画面も止まりゲーム機の画面が『ポーズ中』で止まる。吹き出す林原。
林原「なんですか先輩? 勝負はこれからですよ」
琴橋、意味深げにウインクして伊藤と林原はうなずく。
安藤「(不審げに)?」
琴橋、さらりと表情を戻す。
琴橋「いや、素直に負けを認めよう。今回の勝負は、自分の居場所をバラした伊藤のオウンゴールみたいなもんだ」
伊藤「(ケンカ腰に)なんだよ? 俺のせいかよ? おまえだって林原にマーキングされただろ?」
琴橋と伊藤、にらみ合うが本心で怒っていないそぶり。
安藤「おいおい。ケンカはやめよう。勝負はまたの機会ってことで」
林原「まあ、今日は病院で寝られたとはいえ、明日も早いですし」
四人とも携帯ゲーム機をしまいだす。
林原「琴橋先輩。一緒に帰りましょう」
琴橋、時計を見る。
琴橋「いや、俺は澪ちゃんのトコに行ってくる。ステージも終わったころだろうし」
伊藤「こんな時間にか?」
琴橋「おまえは澪ちゃんを知らないから言えるんだ。澪ちゃんと俺はお互い分かり合っているんだよ。おとといなんかパンスト履いたままのフトモモにローション落としてスマタさせてくれたんだぜ」
伊藤「おおっ! なんというマニアックなことを……、俺も亜麻音ちんに試そう」
琴橋「亜麻音って……。おまえ、もう付き合っているのかよ?」
伊藤「そうだよ。悪いか。マンションの部屋まで案内してくれてさ、セントバーナード犬までいたんだ。深夜の散歩相手だってさ。それで普通に正上位からはじめたと思ったら、彼女は『バックから突いて』って言うからさ、言われるまま突いたら、いつのまにか部屋に入ってきた犬が俺のケツを舐めてきたんだ!」
不安そうな安藤が伊藤に問う。
安藤「その犬はオスなのか?」
伊藤「安心しろ。メスだ」
四人、同時に笑いあう。
四人「あっははは」
伊藤「彼女をイカせたあとは、犬も犯したぜ……(寒い空気に気がついて)ああ、ウソウソ、嘘だって」
伊藤以外の三人、苦笑する。
琴橋「林原、おまえの体験談を聞かせてくれよ」
林原「そうですねぇ……、加奈さんとのクリスマスでのセックスは、宇宙を一つにしたかのような一体感があって……、ボクらはそう……本当にひとつに……」
伊藤「やめろ!」
伊藤、腕を振って、止めるしぐさ。琴橋も同意して、
琴橋「コスモス文庫じゃあるまいし。なんだよ、そのエロスもへったくれもない表現はよ。ここではボツだ」
伊藤「それにな、加奈ちゃんて、去年別れたっていうじゃないか。いつまでしみったれているんだ?」
しゅんとなる林原。
琴橋「安藤、出番だ。ここでおまえの名を一気に上げるチャンスだぞ」
琴橋に睨まれて、焦る安藤。
安藤「や、やめようよ。プライベートな事なんだし。そもそも、なんでエロ話する必要があるんだよ?」
伊藤「おまえこそ、なに言ってんだよ。オレたち男はだな、エロォスのためなら、例え火の中、水の中だろ」
琴橋「それに、ここには女はいない。男四人が集まればワイ談が始まるのが自然の流れだ」
林原「ボクみたいにボツをくらうのが怖いんですか先輩?」
三人の視線が集まる安藤、わかったというそぶり。
安藤「わ、わかったよ。ぼ、ボクの抱いた女は、こう、おっぱいがでかくてさ。抱いてやると『ひぎぃ!』なんて痛がるから、下を確かめるとお尻のほうに入れてっ(セリフかむ)いてさ」
林原「おっぱいが?」
安藤「でかかったよ」
琴橋、手を振る。
琴橋「違うチガウ。おっぱいの揉みごこちはどうだと聞いているんだ?」
安藤、一生懸命考える。
安藤「そ、それは……、砂を詰めた袋のような……カチカチで……」
安藤を見る三人、一瞬凍りついたかと思うと、琴橋は立ち上がり、突然笑い出す。
琴橋「クククククククッ、やった! なんという人生最良の日だ! 安藤!」
“ビシィ!”という効果音と共に琴橋が安藤を指差す。
琴橋「安藤! おまえは童貞だ!」
“ガーン!”という効果音と共に、びっくりする安藤、動揺する。満足そうに座りなおす琴橋。
安藤「ど、どど、童貞ちゃうわ!」
伊藤、安藤の肩を叩き彼の動揺を抑えたのち、胸から畳んだ紙幣を出し、酔いのさめた目で安藤に迫る。
伊藤「安藤、もう認めろ。おまえは童貞だ」
伊藤、立ち上がって紙幣を琴橋に渡してから自分のゲーム機とビール缶を取ってロッカー室へ向かう。ビールを飲みながらつぶやく。
伊藤「おまえには失望させられたよ」
林原は怒りながら紙幣をテーブルに叩きつけて立ち上がる。安藤を睨みながら、
林原「安藤先輩! なんで『地下にセックス奴隷ぐらい隠してあるさ』ぐらい、余裕で言ってくれなかったんですか!」
きびすを返して立ち去る。
安藤「……」
数秒固まった安藤、正気を取り戻して立ち上がる。
安藤「琴橋さん。ま、まさかボクのことで賭け事をしていましたね?」
真剣な安藤の表情と対照的な、にやけ顔の琴橋、テーブルを片付けながら、
琴橋「んー。お察しのとおりだ。ただし、俺が負けると(ポケットから二枚の硬貨を取り出し)これを二人に渡さなきゃならなかったんだ。条件はフィフティー、フィフティーだ」
安藤「クソッ!」
立ち去る安藤。
琴橋、彼の背中に向けて、
琴橋「おもしろかったぜ安藤。早く相手を探して童貞を卒業しろ!」
画面暗転。




