シーレ お調子者の、いたずら好きのリス
西の森。
その中の北のほうの木のうろの中で。
「くくく、これをこうして……よしっ!」
そこにいたのは、小さなリス。
彼の名前は、シーレ。
おっと。見た目も名前も可愛いからって油断してはいけませんよ?
見た目と中身が違うことなんて、よくあることでしょう?
「さて、パフはどんな顔をするんだろう? たっのしみ!」
そう、このリスは大のいたずら好き。そして彼はお調子者で、いつも森の動物達を困らせているのでした。
今回のターゲットは、臆病なクマ。
そのクマ——パフに、いたずらを仕掛けるつもりなのです。
作戦は、こうでした。
まずは、木のうろの中に、手を入れると手が捕まってしまう罠を仕掛けます。
そしてパフの元へ行き、彼にこう言うのです。
「ねえ、美味しい蜂蜜を見つけたよ」
実は、パフは蜂蜜には目がないのです。
どのくらい蜂蜜が好きかと言うと、臆病な彼でも蜂蜜のことになると、怖さを忘れてしまうくらい。きっとパフはこの話に飛びついてくるはずです。
しかしもちろん、蜂蜜があるなんて嘘。
罠を仕掛けたうろの中に蜂蜜があると嘘をつき、手を入れさせて、罠に捕まるパフを見てやろうと言う計画なのです。
「ふふふっ、完璧! よーうし、パフを呼びに行こうっと」
シーレはにやにや笑いながらうろを出ようとして……。
「ギャアーッ!」
その次の瞬間には、叫び声をあげていました。
彼の足をよく見てみると、そこには、彼自身が仕掛けた、罠が。
そう。シーレは、自分の罠に自分で引っかかってしまったのです!
「ちっくしょう! これじゃあ最初からやり直しじゃねえかよ!」
あらあら。
シーレは何があっても、まず一番にいたずらのことを考えるのですね。
まずは自分が罠から抜け出さないといけないのに……。
少し経った後。
罠から抜け出したシーレは、罠を仕掛け直して、今度は罠にかからないように気をつけながらうろを出ました。
すると、その時。
シーレから突然、オレンジ色のオーラが滲み出し、シーレの頭の上に、小さな逆さまのアーチを作りました。おわんの底が、ちょうどシーレの頭の上です。
「……ん? なんだ、これ?」
シーレは気付きませんでしたが、それは『お調子者の橙のアーチ』でした。
オレンジ色の逆さのアーチは光り輝きます。
まるで、シーレのお調子者でいたずら好きな性格を映したかのように。
ちなみに。
たまたま木のそばを通っていたパフが、得体の知れぬ声を驚いて叫び、その場から慌てて逃げ出したわけでしたが、その声の正体は自分の仕掛けた罠にかかってしまったシーレの叫び声だったようです。