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フルー みんなうっとり、歌が上手なコマドリ

 西の森、ここで二番目に高い木の上で。

 高らかに美しい歌声を響かせる動物がいました。



「この〜♪ 北風に〜♪

 私の〜歌をの〜せて〜♪

 さあ〜♪ 歌いま〜しょう〜♪

 どこまでも響くように〜♪」



 これは即興の歌らしいのですが、そうとは思えないほどの完成度と美しさでした。



「さあ〜飛び立ちましょう〜♪

 北風と共に〜歌とと〜もに〜♪

 あの澄んだ青い空飛んだなら〜♪

 白い雲でお昼寝しま〜しょう〜♪」



 木がさわさわと揺れています。まるで、歌に身を委ねるように。

 北風が吹き渡ります。まるで、歌と共に踊るように。



「この〜♪ 北風に〜♪

 私の〜歌をの〜せて〜♪

 さあ〜♪ 歌いましょう〜♪

 コマドリの手作り歌〜♪」



 綺麗な余韻を響かせて、彼女の歌は終わりました。その歌を褒めるかのように風は吹き、木は揺れます。



「……ふふっ! 最後の『手作り歌』って歌詞、我ながらいい歌詞だわ。『即興歌』なんて言ったら、曲が台無しだものね?」



 コマドリ——フルーは自らの即興の歌をちょっとだけ褒めた後、「何か歌いたいわね。今度は即興じゃない歌」と呟きます。



「うーん……みんなはよく、フルーはコマドリ(Robin)だから『クックロビン(Cook Robin)』なんてどう? っていうけれど、よく考えてみて! あの曲は別名『コマドリのお葬式』よ⁈ そんな歌歌いたくないわよ、縁起でもない!」



 それに『クックロビン』って、オス(Cook)コマドリ(Robin)のことなのに、とフルーはぐちぐちと文句を言い続け、ぷんぷんとひとしきり怒った後、



「……それじゃ、これにしましょ! うん、ここにぴったり!」



 歌う曲を決めて一人納得し、歌い出しました。



「大きなくりの木のしたで

 あなたとわたし

 なかよくあそびましょ

 大きなくりの木のしたで」



 そう。

『大きな栗の木の下で』です。

 今、たまたまフルーが止まっていた木が、栗の木でした。それをフルーはちゃんと分かっていたのでこの曲を歌ったのです。

 自分の歌を歌ってもらえたのが嬉しいのか、木がばらばらと栗を落としました。



「あら、この栗はご褒美かしら? ありがとう! あとでみんなで頂くわ。

 ……でもこの曲、やっぱり短いわね。こんなじゃ歌い足りないわ!」



 そう言って、フルーはまた別の歌を歌い出しました。

 どこまでも純粋な気持ちで、美しい川のせせらぎや、あたりを吹き渡る風のように透き通るような声で、様々な歌を歌い上げます。

 森の歌、太陽の歌。恋の歌、そして即興の歌。



 ずっと歌っていると。

 不意に、フルーから青いオーラが滲み出し、小さな逆さまのアーチを作りました。



「……? これは、何かしら?」



 フルーは首を傾げ、またもや即興の歌を作って歌いました。



「不思議な♪ アーチが出来た♪

 真っ青な♪ 逆さまアーチ♪

 どうして♪ 出来たのかしら♪

 でも素敵ね♪ 綺麗な青ね♪」



 それは『純粋の青のアーチ』でした。

 そのアーチはフルーの純粋さを、そしてその透き通った声を、そのまま色にしてアーチにしたように見えました。

ちなみに。

彼女の美しい歌声を気に入っているのは実は動物達だけではないのですが、それはまた別のお話。

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